国立新美術館で「貴婦人と一角獣展」を観てきました。たしかに「百聞は一見にしかず」です。これらの前に立つと、その大きさに圧倒されます。素晴らしいタピスリーです。細部に至るまで計算し尽くされ、見事というほかありません。1500年頃つくられたというが、これほどまでのものをつくった「中世」とは何だったんだろう、と思わずにはいられません。
「タピスリー」とは、壁掛けなど室内装飾用の織物。羊毛や絹の横糸で絵柄を表すつづれ織り(ゴブラン織り)の技法。タペストリー。と、解説にあります。
日本も龍村織物 が緞帳を織ったりもしていますが、やはり布という感じが強く、どうもそれとは違った執念や根気が必要のようです。昨年トルコで、絨毯を織っている工場を見学しましたが、日本人の感性とは違っているように思えてなりません。また、青森県立美術館や松濤美術館でシャガールのタピスリー を観て圧倒されましたが、それとも大きく異なるようです。
このタピスリーが展示してあるクリュニー中世美術館は、天井高さはあまり高くないように見えます。国立新美術館は天井高さもあり、「貴婦人と一角獣」を展示するのに、まったくぴったりな空間、よく考えられた展示スペースでした。
フランス国立クリュニー中世美術館の至宝「貴婦人と一角獣」は、西暦1500年頃の制作とされる6面の連作タピスリーです。千花文様(ミル・フルール、複雑な花や植物が一面にあしらわれた模様)が目に鮮やかな大作のうち5面は、「触覚」「味覚」「嗅覚」「聴覚」「視覚」と人間の五感を表していますが、残る1面「我が唯一の望み」が何を意味するかについては、“愛”“知性”“結婚”など諸説あり、いまだ謎に包まれています。
ウィキペディアには、以下のようにあります。
タペストリーの中に描かれた旗や、ユニコーンや獅子が身に着けている盾には、フランス王シャルル7世の宮廷の有力者だったジャン・ル・ヴィスト(Jean Le Viste)の紋章(三つの三日月)があり、彼がこのタペストリーを作らせた人物ではないかと見られている。ジャン・ル・ヴィストがリヨン出身であり、獅子の「lion」はリヨン「Lyon」から、一角獣は、足が速いためフランス語で「viste」(すばやい)とル・ヴィスト(Le Viste)の一致によるものと言われている。
「貴婦人と一角獣」六連作
触覚:
背筋を伸ばし堂々と立つ貴婦人が、右手で旗竿を持ちながら、左手で一角獣の角に軽く触れています。
味覚:
貴婦人は侍女の捧げる器から右手でお菓子を取り、左手にとまるオウムに与えています。
嗅覚:
侍女が支える皿から花を選びながら、花冠を編む貴婦人。その背後で、猿が花の香りをかいでいます。
聴覚:
侍女がふいごを操作し、貴婦人はパイプオルガンを演奏しています。オルガンの音に耳を傾ける一角獣と獅子。
視覚:
草地に腰を下ろす貴婦人の膝に、一角獣が前脚をのせ、憩っています。一角獣は、鏡に映る自らの姿に見入っています。
我が唯一の望み:
青い大きな天幕の前で、宝石を手にする貴婦人。侍女が捧げ持つ小箱から、宝石を選んで身につけるところでしょうか。それとは逆に、身につけていた宝石を外し、箱に戻すところかもしれません。
「貴婦人と一角獣」部分
大画面シアター
その他の展示
「貴婦人と一角獣展」
フランス国立クリュニー中世美術館の至宝《貴婦人と一角獣》は、西暦1500年頃の制作とされる6面の連作タピスリーです。19世紀の作家プロスペル・メリメやジョルジュ・サンドが言及したことで、一躍有名になりました。千花文様(ミルフルール)が目にも鮮やかな大作のうち5面は、「触覚」「味覚」「嗅覚」「聴覚」「視覚」と人間の五感を表わしていますが、残る1面「我が唯一の望み」が何を意味するかについては、“愛”“知性”“結婚”など諸説あり、いまだ謎に包まれています。本作がフランス国外に貸し出されたのは過去にただ一度だけ、1974年のことで、アメリカのメトロポリタン美術館でした。 本展は、この中世ヨーロッパ美術の最高傑作の誉れ高い《貴婦人と一角獣》連作の6面すべてを日本で初めて公開するもので、タピスリーに描かれた貴婦人や動 植物などのモティーフを、関連する彫刻、装身具、ステンドグラスなどで読みといていきます。クリュニー中世美術館の珠玉のコレクションから厳選された約40点を通して、中世ヨーロッパに花開いた華麗で典雅な美の世界を紹介します。