五島美術館は、平成22年(2010)秋~平成24年(2012)秋頃の約2年間、改修工事のため休館となっていました。休館に入る最後の展覧会は「国宝源氏物語絵巻」展でした。五島美術館は僕が住んでいるところと同じ世田谷区内にありますが、同じ区内でもちょっと離れていることや、展示内容が僕の観たいものが少ないこともあり、思っていたほどには観に行ってないというのが実際のところです。改修工事後も、「源氏物語絵巻」「紫式部絵巻」「書跡」等々、所蔵品展が続いたため、足が遠のいていました。
その改修工事が終わった後から、展示室に入るところに仏像が置かれるようになったようです。「愛染明王座像」(重要文化財)です。五島美術館が所蔵しているもので、手が6本、頭の上にまた頭があり、髪の毛が逆立っています。かつては鶴岡八幡宮境内の愛染堂の本尊で、江戸時代まで運慶作とされていたそうです。と、ここまで書いて、思い出しました。鎌倉国宝館でこの「愛染明王座像」を観ていました。鎌倉に観に行ったのは、2011年11月23日、勤労感謝の日でした。なるほど、五島美術館が改修工事を行っていたため、鎌倉へ出されていた、というわけです。
さて、今回の五島美術館、「館蔵 近代の日本画展」というタイトルです。これは是非とも観ておかなくちゃと思い、5月29日のこと、観に行ってきました。案内葉書には、以下のようにあります。
五島美術館が所蔵する近代日本画コレクションから、橋本雅邦、横山大観、川合玉堂、下村観山、小林古径、安田靫彦、前田青邨、小茂田青樹など、明治から昭和にかけての近代日本を代表する日本画家の作品約40点を選び展観します。宇野雪村コレクションの文房具も同時公開。
購入した図録(小冊子)「五島美術館コレクション 近代の日本画」を見ると、平成14年(2002)4月1日発行、となっているので、あるいは10年ほど前に「五島美術館コレクション 近代の日本画」展が開催されていたのかも知れません。この図録(小冊子)は、「五島美術館コレクション」シリーズと題して、所蔵品のなかから名品を選び、分野種類別毎にまとめた図録集のようです。本棚を探したら、「五島美術館コレクション 茶道具」(平成10年12月5日初版発行)が出てきました。2010年6月から8月にかけて開催された「開館50周年記念名品展Ⅲ 陶芸の美―日本・中国・朝鮮」の時に購入したもののようです。
今回の「出品目録」を見ると、「近代の日本画」には46点が出されています。他に彫刻「愛染明王座像」、近代陶芸として、金重陶陽、加守田章二、河井寛次郎の作品が、また宇野雪村コレクションの炭・硯、印材、文房清供が約50点出されていました。
案内葉書にあげられた画家の名前を見ただけでも分かる通り、明治から昭和にかけての日本画の大家ばかりが勢揃いです。近代絵画の先駆者・狩野芳崖の、鋭く切り立つ崖に囲まれた渓谷と、力強くそびえる松樹を描いた「烟巒溪漲の図」から展覧会は始まります。今回の目玉は、川合玉堂の「焚火」でしょう。狩野派の筆法と四条派の写実を融合した、玉堂30歳の時の傑作。3人の人物の個性と存在感を描き分け、墨の濃淡を駆使して空間を演出している、と小冊子に書かれています。屏風は1点のみ。橋本関雪の六曲一双「藤に馬」、金地屏風の平面化した空間に、3頭の馬の親子の堂々とした存在感を描き出す。優れた写実力による、曲がりくねった枝や藤の花の質感も見事、と小冊子にあります。
やはり圧巻は、横山大観です。一般展示室に3点、特別室に7点が展示されていました。ほとんどが富士山を描いた作品です。「耀八紘」は縦118.8cm横178.0cm、かなり巨大な軸で、普通の家の1間の床の間には入りきれない作品です。この軸を飾るには、少なくても1間半か、あるいは2間以上の床の間が必要です。
近代の日本画
近代の日本画―横山大観
「近代の日本画」
図録(小冊子)
平成14年(2002)4月1日発行
編纂:五島美術館学芸部
編集:渡川直樹
発行:財団法人五島美術館
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