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山種美術館で「百花繚乱―花言葉・花図鑑―」(後期)を観た!

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山種美術館で「百花繚乱―花言葉・花図鑑―」(後期)を観てきました。今回の展覧会では、「物語でたどる人と花」、「ユートピアとしての草花と鳥 」、「四季折々の花」という3つの切り口から花を描いた作品を厳選したという。ポスターやチラシになっているのは、四幅対で大画面に四季を描いたもの、荒木十畝の「四季花鳥」です。これはまさに「百花繚乱」そのもの、それがユートピア「楽園」のイメージにも重なっています。荒木十畝は中国絵画に学んだものに装飾性を加味して、「四季花鳥」に至ったという。


今回注目した作品は、前期にも出ていましたが、昭和58年に描かれた西田俊英の「華鬘」です。華鬘は仏堂内の梁や長押に懸けて堂内を飾る装身具です。華鬘といえば、中尊寺金色院にある「金銅迦陵頻伽文華鬘」です。中尊寺には金色堂所用と伝えられる華鬘が6面現存しています。そのなかでも「金銅迦陵頻伽文華鬘」がもっとも出来栄えが優れていると言われています。


迦陵頻伽とは、ヒマラヤ山中にいる想像上の鳥の名で、まだ殻にあるときに美しい声で鳴くともいい、極楽浄土にすみ、比類なき美声で鳴く想像上の鳥で、浄土曼陀羅の絵では上半身は美女、下半身は鳥の姿で描かれているという。僕は迦陵頻伽を知ったのは、車屋長吉の直木賞受賞作「赤目四十八瀧心中未遂」を、荒戸源次郎が寺島しのぶ主演で映画化したものを観たときでした。寺島しのぶが女優開眼したと言われる作品で、寺島しのぶの背中には迦陵頻伽の刺青が彫られていた、というわけです。


西田俊英は「幾百の花と共に・・・黄色に燃え上がる炎を、華鬘陀羅の世界に表してみたかった」と述べている通り、この世のものではない「ユートピアとしての草花と鳥」を「華鬘」で見事に描き切ったといえます。この作品、たしか以前の「百花繚乱 桜・牡丹・菊・椿」にも出されていたようですが、僕の記憶から抜け落ちていたようです。以下、西田俊英の略歴をのせておきます。


西田俊英は、1953年三重県伊勢市生まれ。1977年武蔵野美術大学日本画科卒業。そして1983年3月華鬘」で山種美術館賞展優秀賞を30歳の若さで受賞します。翌年、東京セントラル美術館日本画大賞展にてインドの牛を描いた「聖牛」で大賞を受賞します。 その後はホームページを参照するとして、現在、日本美術院同人、評議員。武蔵野美術大学日本画学科教授。広島市立大学名誉教授。師としては、奥村土牛、塩出英雄が挙げられています。

「日本画家・西田俊英」公式ホームページ


もう一つ、挙げておきましょう。牧進の「寒庭聖雪」、四曲一双の作品です。牧進の作品は、前期に「明り障子」だ出ていましたが、やはり障子の向こうに水仙が見えるというものです。水仙の足元には雀がいます。「寒庭聖雪」は構図に驚かされます。なにしろ上の3/4はなにも描かれず、たぶん雪景色なのでしょう。下1/4に赤い実を付けた高さ10cmくらいの葉が雪を被っています。なんの葉なのか、僕には分かりません。そしてその足元には雀が・・・。昨年開催された「福田平八郎展」に出されていたようですが、残念ながら僕は観ていません。


展覧会の構成は、以下の通りです。


第1章 人と花

第2章 花のユートピア

第3章 四季折々の花


悠々たるガンジス川のほとり、幾百の花と共に一体の屍が荼毘にふされていた。無言の人々が見つめていた黄色に燃え上がる炎を、私は華鬘陀羅の世界に表してみたかった。

「今日の日本画―第7回山種美術鑑賞展―」図録、山種美術館、1983年



第1章 人と花

第2章 花のユートピア



第3章 四季折々の花






「百花繚乱―花言葉・花図鑑―」

鳥が謳い、花々が色とりどりに咲き誇る春は、私たちの五感を楽しませてくれます。当館では、この季節にあわせ花の絵画で美術館を満開にする特別展「百花繚乱―花言葉・花図鑑―」を開催いたします。日本における季節の草花への関心と、それを造形化しようとする意識は古くから知られています。人は花の美しさを讃え、時には自ら育てる喜びをも享受し、時代ごとに様々な花の表現を生み出してきました。四季をめぐる日本の風土の中で、花は季節を示す重要な要素です。とりわけ物語絵や風俗画には、春夏秋冬の草花を愛でる人物や、日々の生活の営みとともに描かれる豊かな花の表現がみられます。一方、花鳥画や草花図には、本来異なる季節に咲く花々を一つの画面や対の画面に同時に描く趣向の作品が少なくありません。四季花鳥図あるいは四季草花図として、日本の自然の風景や植物を織り込みながら、季節の草花や鳥を一つの情景として捉える様式が形成されたのです。こうした花鳥画や草花図の伝統は、中国から伝来し、掛軸から巻子、屏風まで様々なかたちで表現されてきました。屏風に種々の草花を自然景として配した江戸琳派の鈴木其一《四季花鳥図》(前期展示)、池田孤邨《四季草花図》(個人蔵・後期展示)、中国絵画に学んだ花鳥画に装飾性を加味した荒木十畝による大画面の4幅対《四季花鳥》は、ユートピア(楽園)のイメージとも重なります。さらに、明治以降になると、速水御舟《名樹散椿》【重要文化財】や山口蓬春《梅雨晴》のように、近世の花鳥画や草花図に内在する美意識を踏襲しながらも、斬新な構図や色彩など近代的な感覚を取り入れた新たな花の表現が模索されました。本展では、「物語でたどる人と花」、「ユートピアとしての草花と鳥 」、「四季折々の花」という3つの切り口から花を描いた作品を厳選し、花言葉や花の特徴、花を題材とした和歌や画家の言葉とともに、その魅力をご紹介します。満開に咲き誇る花の表現を通じて、美術はもちろんのこと文学や園芸の視点からも作品を読み解きながら絵画をお楽しみいただける展覧会です。


「山種美術館」ホームページ

とんとん・にっき-yama1 「百花繚乱―花言葉・花図鑑―」

小冊子(図録)

2013(平成25)年4月6日発行

監修:

山下裕二(山種美術館顧問・明治学院大学教授)
編集・執筆:

山種美術館学芸部(高橋美奈子/三戸信恵/塙萌衣)
発行:

山種美術館




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