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須飼秀和・画「私だけのふるさと 作家たちの原風景」を読んだ!

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とんとん・にっき-sugai

「私だけのふるさと 作家たちの原風景」(2013年3月27日第1刷発行、編者:毎日新聞夕刊編集部、画:須飼秀和、岩波書店)を読みました。この本に収められた40篇の文章と挿絵は、もとは毎日新聞夕刊の連載企画「帰りたい 私だけのふるさと」(2012年4月~2012年6月、全205回)に掲載されたものです。2010年12月のこと、銀座のギャラリーゴトウでの東京での初めての個展「須飼秀和個展」で、僕は初めて懐かしいような、ほのぼのとした須飼くんの絵に接しました。


大きな桜の木を描いた表紙の絵、いいですね。須飼くんらしい絵です。連載開始から3年目の春、東日本大震災が起こり、父親が被災した知人が故郷の惨状を見て、それでも「春の来ない冬はない」という言葉を噛み締め、耐え忍ぶ決意をされたという話を聞いて、須飼くんは樹齢1000年を超える大きな山ザクラである岡山の醍醐桜を思い浮かべたという。「あとがき」には、以下のようにあります。


・・・まだ冬の色が残る中、凛と立ち尽くし可憐な花をまとった醍醐桜は、まさに「春の来ない冬はない」という言葉を体現していると思いました。本書の表紙とした絵は、震災によってふるさとの土地が深く傷つけられ、それでも力強く生きている被災者の方々のために、画家として少しでも何かしたいという気持ちで桜に会いに行き、描いたものです。(須飼秀和氏による本書「あとがき」より)


もちろん、40人の作家の文章も、短い文章の中にそれぞれの育った海や山、畑や、町の情景が滲み出ていて、なんとも言えず素晴らしい。あの作家が、こんな風に育ったのかと驚くことも多々ありました。ほとんどの人がその土地で育ったことで作家としての今がある、と語っています。その一人一人の作家にやさしく寄り添っているのが、須飼くんの郷愁の満ち溢れた絵です。


作家の語られた想い出に雰囲気の似た情景を探すため、下書きを描く前の情報収集に時間をかけることが多かったと、須飼くんは言います。須飼くんの絵は、雪国あり、森あり、山あり、川あり、畑あり、海あり、都会あり、祭あり、古里のさまざまな情景が描かれています。綺麗な絵の例として、下の2作品を載せておきます。



本のカバー裏には、以下のようにあります。

多彩な顔ぶれの作家40名が、自らの故郷への想いや、幼少時代のエピソード、その土地が書き手としての自分に与えた影響などを語った回想集。故郷を描く言葉は、消えることのない風景の鮮明な活写であると同時に、彼方に漂う儚い幻想のようでもある。須飼秀和によるカラー挿絵が、回想の余韻を深める。


須飼秀和:略歴
1977年8月,兵庫県明石市生まれ.画家.98年にバイクで西日本を回り,出会った人々の温かさや風景に触れ,郷愁をテーマに絵を描くようになる.2004年3月,京都造形芸術大学芸術学部 美術・工芸学科洋画コース卒業.同年12月,初個展をギャラリー島田で開催.〈主な作品〉「郷愁の風景」(スケッチ連載(全8回),神戸新聞明石版,04年8月),「やわらかな情景」(絵・文,神戸新聞夕刊,毎月第1土曜日掲載,06年4月~08年3月),『長崎南蛮文化のまちを歩こう』(表紙・挿絵,岩波ジュニア新書,06年11月),「帰りたい私だけのふるさと」(挿絵,毎日新聞夕刊,毎週木曜日掲載,08年4月~12年6月)〈主な個展〉「やわらかな情景」(06年8月,ギャラリー島田),「いつか見た蒼い空」(09年7月,明石市立文化博物館)


目次
穂村弘(北海道札幌市)
馳星周(北海道浦河町)
室井佑月(青森県八戸市)
佐高信(山形県酒田市)
西木正明(秋田県西木村(現・仙北市))
古川日出男(福島県郡山市)
阿刀田高(新潟県長岡市)
井波律子(富山県高岡市)
本谷有希子(石川県松任市(現・白山市))
薄井ゆうじ(茨城県土浦市)
道尾秀介(東京都北区)
海堂尊(千葉県千葉市)
角田光代(神奈川県横浜市)
柳美里(神奈川県横浜市)
夢枕獏(神奈川県小田原市)
林真理子(山梨県山梨市)
梓林太郎(長野県上郷村(現・飯田市))
池井戸潤(岐阜県八百津町)
堀江敏幸(岐阜県多治見市)
中村文則(愛知県東海市)
宮沢章夫(静岡県掛川市)
黒川創(京都府京都市)
池内紀(兵庫県姫路市)
辻原登(和歌山県印南町)
岩井志麻子(岡山県和気町)
田渕久美子(島根県益田市)
津原泰水(広島県広島市)
船戸与一(山口県下関市)
瀬戸内寂聴(徳島県徳島市)
鴻上尚史(愛媛県新居浜市)
山本一力(高知県高知市)
有川浩(高知県高知市)
北方謙三(佐賀県唐津市佐志)
安部龍太郎(福岡県黒木町(現・八女市))
内田麟太郎(福岡県大牟田市)
吉田修一(長崎県長崎市)
小山薫堂(熊本県天草市)
河野裕子(熊本県御船町)
楊  逸(中国・ハルビン市)
西加奈子(エジプト・カイロ市)
あとがき


過去の関連記事:
ギャラリーゴトウで「須飼秀和個展」を観た!


とんとん・にっき-sugai 「いつか見た蒼い空」

画・須飼秀和

発行日:2009年8月5日

発行者:長谷川一英

発行所:株式会社シーズ・プランニング

発売:株式会社星雲社

制作:有限会社シースペース






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