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府中市美術館で「かわいい江戸絵画」(後期)を観た!

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府中市美術館で「かわいい江戸絵画」(後期)を観てきました。府中の森公園の桜並木も、目にも鮮やかな新緑に変わっていました。季節の移り変わりは早い。特に桜の季節をまたいだ春は駆け足で変化します。


江戸時代後半、およそ18世紀半ばから19世紀前半にかけて、「かわいい絵」は爆発的な隆盛をみせる。円山応挙や長沢蘆雪、伊藤若冲、曾我簫白、さらには池大雅や与謝蕪村ら文人画家たちも交えて個性を競った。日本絵画の絢爛の時代にも重なっている。(「かわいい絵」の時代―江戸時代の後半)


今回、目についたのは「東東洋」という画家、「姓・氏が東で、名・通称が洋だが、慣例では東東洋と呼ばれている」と画家解説にあるが、ちょっとややこしい名前であることに変わりはありません。仙台の画家で、当時活躍していた円山応挙の影響を強く受け、「画風は、柔らかな線をいかした親しみやすいもので、特に鹿の絵で知られている」とあります。ここでは「月夜山鹿図」や「荘子夢蝶図」を載せましたが、前・後期で8点もの作品が取り上げられています。近年、仙台市博物館で展覧会が開催された時に、「ほのぼの絵画」という見事なキャッチフレーズで評されたという。彼はどんなものを描いても、「ほのぼの」「かわいい」感覚に変えてしまう画家であると、と図録では述べています。


博多の聖福寺で住持をつとめた仙厓が、その退任後の晩年に描かれたのが、今日たくさん知られている奔放な絵です。子供が好きだったと伝えられる仙厓ですが、子供の無垢なかわいらしさをストレートに表現したものの多い。絵の多くは禅の教えを普及するために描かれたものですが、極めて簡単で単純な線だけでみせる描写は、一瞬にして見る者を釘付けにします。ここでは、布袋が弥勒の出現を待ちくたびれた様子を描いた「あくび布袋図」を取り上げました。


また、追加作品として、伊藤若冲の「河豚と変えるの相撲図」(江戸時代中期)がありました。フグとカエルの相撲、あまりにマンガチックで、笑っちゃいます。が、しかし、これはあり得ないよ。ウサギやカエルの相撲を描いた絵はありますが、果たしてフグって、どうやって立つの?カエルがフグをだっこしているようにも見えますが、まあ、その辺がマンガチックなのでしょう。


展覧会の構成は、以下の通りです。


1.幕開け―「かわいい絵」はいつから始まった?

2.感情のさまざま―なぜ、かわいいのか?

 かわいそう/健気なもの/慈しみ/おかしさ/小さなもの、

 ぽつねんとしたもの /純真、無垢/微妙な領域

3.かわいい形―「かわいい」には原理がある?

 幾何学・省略・くりかえし/子供の形/つたなさの魅惑

 /素朴をめぐる目/絵本
4.花開く「かわいい江戸絵画」―かわいい絵の時代

 虎の悩ましさ/応挙の子犬、国芳の猫/かわいい名画選



1.幕開け―「かわいい絵」はいつから始まった?


2.感情のさまざま―なぜ、かわいいのか?




3.かわいい形―「かわいい」には原理がある?



4.花開く「かわいい江戸絵画」―かわいい絵の時代





「かわいい江戸絵画」

日本絵画史上、「かわいらしさ」が作品の重要なポイントとして打ち出されるようになったのは、およそ江戸時代のことではないでしょうか。円山応挙は、地面を転がるように駆け回る子犬たちの絵を確立し、歌川国芳は、愛らしくもややこしい猫の魅力を引き出しました。禅僧仙厓は、難解な禅の教えを、思わずほほ笑んでしまうような子供や動物の姿に託しています。また、かわいらしい題材を描いたものだけではなく、たとえば、文人画の山水や人物にも、見る者の心を和やかにしてくれるものがあります。はかないもの、頼りないものへの共感や愛惜が、あえて素朴に描かれた線や形そのものに対して湧き上がるのかもしれません。はかないものや可憐なものに寄せる思いや慈しむ気持ち、あるいはユーモラスに感じることなど、私たちが「かわいい」という言葉で表すことのできる感情は、実にさまざまです。江戸時代の人々は、そんな豊かな心の動きを絵に表し、絵を通じて楽しみました。また、「かわいい絵」が盛んに楽しまれた背景の一つには、かわいいものを「それらしく」表現する方法が確立されたことがあるでしょう。幼い子供や子犬は、時代を問わず「かわいいもの」だったはずですが、古代や中世の絵に、私たちの目から見て、かわいらしいと思えるようなものは、あまり見当たりません。つまり、「かわいいもの」と「絵としての表現」は別だと考えればよさそうです。現代人を魅了してやまない子供や子犬の絵を描いた応挙や長沢蘆雪。「写生」の画家と言われる彼らですが、ただカメラで撮影するように対象を写しただけで、かわいいと感じる絵ができ上がるでしょうか。彼らは、かわいいものを「かわいい形」として描く術を模索し、確立したのだと言えるでしょう。かえりみれば、造形が立派かどうか、精神の高邁さといった観点から語られてきた美術の歴史の上で、「かわいい」という言葉が使われることは殆どなかったように見受けられます。このたびの展覧会では、近年ちまたで注目を浴びているこの言葉をあえてキーワードとして、これまで見落とされてきた江戸絵画の魅力の根幹に迫ります。

「府中市美術館」ホームページ


とんとん・にっき-fu1 「かわいい江戸絵画」
展覧会企画担当:
金子信久/音ゆみ子

編集:府中市美術館

発行日:平成25年3月9日

発行:府中市美術館








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