泉屋博古館分館で「住友グループ秘蔵名画展―花―」を観てきました。春になれば美術館も常道に添って「花」かと、やや軽い気持ちで観に行ったのですが、いや、驚きました。これだけ充実した「花」を、これだけ纏まって観たのは初めての体験です。それが洋画あり、日本画ありで、こんなにも魅力的な展覧会になるものか、陳腐な言い方ですが、素晴らしいの一言です。ほとんど知っている画家たちですが、美術館が違うと、全く違う画家の作品を観ているようです。
たとえは、チラシにもなっている岡鹿之助の「捧げもの」、背後にトーチランプのようなものがあり、その前にビロードのような花たちが立ち並んでいます。岡鹿之助と言えば、ブリヂストン美術館でいつも展示してあるのは「雪の発電所」(1956)です。2008年にブリヂストン美術館で「岡鹿之助展」を観ましたが、ほとんどが風景画で、花をテーマにしたのは「献花」(1964)、一点のみだったように記憶しています。
その時、「岡鹿之助の描く雪景色はまったく寒さを感じません。雪が綿のようにふわりと描かれています。花を描いた作品も、やわらかいフェルト生地で作られた「アップリケ」のように見えます」と書きました。「献花」と共通していますが、「捧げもの」というソフトな肌触りの「花」の傑作もあるんですね。
「住友グループ秘蔵名画展―花―」
泉屋博古館は、住友家の蒐集した美術作品の保存、研究、展示を目的とする美術館として昭和35年に京都に開設され、さらに平成14年には、六本木に泉屋博古館分館を設置し、東西において美術館活動を行ってまいりました。また住友グループの文化的象徴、文化発信の場としての面でも大きな役割を担ってまいりました。本展覧会は、その住友グループ各社が所蔵する名画、それらは、普段、公開される機会が稀な作品ですが、洋画における静物画―花―、日本画の花鳥画をモティーフとした視点から作品を選択し、構成されたもので、企業によるメセナの一形態といえましょう。出品される画家は、洋画家としては、明治・大正期の巨匠、黒田清輝、明治・大正・昭和戦前期の巨匠、和田英作、昭和戦後期に梅原・安井時代を築いた梅原龍三郎、安井曾太郎、知り際の叙情画家、岡鹿之助ら、日本画家としては、新古典主義の安田靫彦、前田青邨、青龍社創設の風雲児、川端龍子、鬼才と呼ぶのがふさわしい速水御舟、戦後の日本画壇をリードした理知的な杉山寧らが挙げられます。拝見することの少ない作品ゆえに「秘密の花園」を垣間見るような展観と申せましょうか。皆さまのご静鑑をお待ちしております。
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