ここ数年、東京国立博物館の「博物館に初もうで」に行く習慣になっています。そこに展示されているので気に入っているものがあります。はまってしまった、といった感じです。どのようにでも動くという「自在金物」です。今年は「巳年」つまり蛇、昨年は「辰年」つまり龍です。毎年、素晴らしい「自在金物」が、東京国立博物館に出ていました。
自在金物にばかり話がいきましたが、清水三年坂美術館は幕末、明治の金工、七宝、蒔絵、薩摩焼を常設展示する日本で初めての美術館です。明治の金工、七宝、蒔絵というと、三の丸尚蔵館で観た「花ひらく個性、作家の時代―大正・昭和初期の美術工芸」を思い出します。図録が見当たらないので、詳しいことは言えませんが、帝室技芸員による、たしか金工、七宝、蒔絵で、素晴らしいものが出ていた記憶があります。そうそう、泉屋博古館でも同様のものを観ましたね。
さて今回のテーマは「鍛鉄(たんてつ)の美 鐙(あぶみ)、鐔(つば)、自在置物」です。鍛鉄とは、固くて延展性に乏しい鉄を金槌でうちながら成形していくこと、いわば鉄を叩いて鍛えること、を意味するようです。いわゆる「鍛冶屋」の仕事ですが、「和鍛冶」ではなく「洋鍛冶」を指すようです。建築の仕事では「アイアンワーク」と言ったりします。鐙は馬具の一種です。鐔は刀の鐔です。甲冑師の流れをくむ人たちによって、その技術は伝えられてきました。
「鍛鉄の美―鐙、鐔、自在金物」
金属の中でも、硬くて延展性に乏しい鉄を熱して金槌でうちながら成形していく技は主に甲冑師達によって高められてきた。今回の展示の中心となる山田宗美、父である宗光、そして弟子の宗世達も石川県大聖寺の明珍派の甲冑師の流れをくむ、明治・大正期に活躍した鎚起の名工達である。また本物の動物達と同じように関節や羽根が動く自在置物もまた明珍派の甲冑師達によって作り出された作品である。今まで殆ど世界中で展示されることがなかったこれらの作品に加え、加賀の甲冑師達が造った象嵌鐙や美しい鉄の彫刻作品である鉄鐔の世界をご紹介する。