イチョウの並木が見事に色付いた12月始め、山種美術館で「生誕100年 高山辰雄・奥田元宋―文展から日展へ―」を観てきました。僕にとって山種美術館は日本画入門の「定点」観測地点のようなものです。高山辰雄と奥田元宋という一風変わった取り合わせで、当初はちょっと戸惑いましたが、共に生誕100年ということ、共に長生きして活躍したということで、なるほどと思いました。
僕が始めて高山辰雄の作品を知ったのは、窪島誠一郎の「私の『母子像』」に乗っていた高山の「冬」富山県立近代美術館蔵(1974年)という作品が最初でした。高山辰雄のまとまった展覧会は、練馬の「遺作展」と角川本社の「生誕100年記念展」で観ることができました。
窪島誠一郎の「私の『母子像』」を読んだ!
練馬区立美術館で「高山辰雄遺作展 人間の風景」を観る!
角川本社ビルで「高山辰雄生誕100年記念特別展」を観た!
奥田元宋は僕は全く知らない画家でしたが、数年前、長野の「水野美術館」で始めて出会いました。その時観たのは「秋渓淙々」、平成12年(2000)の作品で、なんと今回山種で観た奥田の「奥入瀬(秋)」とほとんど同じ画題の作品です。真っ赤に色付いた紅葉を背景に急勾配の清流が流れる、といった趣向です。「元宋の赤」といわれる朱の表現を心象風景に象徴的に表す、と水野美術館の解説にありました。なんと高山辰雄の作品も、「牡丹(石壺に)」「里」「宵」「朝凪の濱」の4点が載っていました。
山種美術館と水野美術館、場所は都会と地方ですが、創設者は共に初代の事業家で、共に日本画のコレクションを専門にしている美術館です。下の引用文の「水野コレクション」を「山種コレクション」に読みかえても、なんら不都合を感じないから驚きます。
「水野コレクションは、東京美術学校を開校したフェノロサと岡倉天心に共鳴した当時の大御所・橋本雅邦や、そのもとで育った横山大観・下山観山・菱田春草ら近代日本画を形成した巨匠たちの作品を、系統立てて集めており、約400点を収蔵しています。その他、杉山寧・奥田元宋・加山又造・高山辰雄など戦後に活躍した作家たちや、上村松園・鏑木清方・伊東深水ら美人画も充実しており、幅広い魅力を持った日本画の世界を堪能することが出来ます」。(「水野美術館名品集」より)
第2章と第3章は、主として山種美術館野所蔵品で構成されています。所蔵品だけでこれだけの展覧会が開催されるのですから、もう驚きというほかありません。東山魁夷の作品は、「春静」「年暮る」「緑潤う」「秋彩」の4点がセットで出ていました。
第1章 高山辰雄と奥田元宋
第2章 文展から日展へ
第3章 日展の画家と山種美術館(「蛍」は第2章)
「生誕100年 高山辰雄・奥田元宋―文展から日展へ―」
「命あるものの、何をしたいのかを、絵の 上に探している」と語り、人間の内面的実像を追い、深い画境を切り開いた髙山辰雄(1912-2007)。一方、「半心半眼」で「対象をありのまま描写するのではなく、心でとらえた姿を描く」ことに一生をささげ、鮮やかな色彩による静謐な風景を数多く描いた奥田元宋(1912-2003)。山種美術館ではこのたび、この二人の巨匠が共に生誕100年を迎えることを記念して展覧会を開催いたします。1912(明治45)年6月という時を同じくして生まれた髙山と奥田。日展(日本美術展覧会)において互いによきライバルとして切磋琢磨し、90歳を超えてなお新たな日本画の在り方を探求し続けました。戦後は日本画壇にとって常に日本画の存在意義を問い直し、模索を課せられた時代といえます。その中で彼らが生み出した作品は、現代の我々にも深い思惟をもたらしてくれるでしょう。本展では、家族の在り方から人間の本質に迫ろうとした《聖家族》(三番町小川美術館蔵)をはじめ哲学的なテーマに取り組んだ髙山の作品、「元宋の赤」と称される赤色を用い、70歳を過ぎて挑んだ《奥入瀬(秋)》(山種美術館蔵)を中心とした奥田の作品をご覧いただきます。そして二人の活動の場であった日展における同時代の画家たちの作品、およびその前身の文展(文部省美術展覧会)・帝展(帝国美術院展覧会)などの出展作品もあわせて展示いたします。本展を通して、二人の芸術の軌跡をたどると同時に、その時代の日本画の新たな試みや変遷を振り返ります。
山種美術館創立45周年記念特別展
「ザ・ベスト・オブ・山種コレクション」
図録
監修:
山下裕二(山種美術館顧問・明治学院大学教授)
編集:
山種美術館学芸部
山崎妙子/高橋美奈子/三戸信恵/櫛淵豊子
発行:
山種美術館
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