ジャ・ジャンクー監督の2002年の作品「青の稲妻」を、TUTAYAで借りてDVDで観ました。今年の初め頃、やはりTUTAYAで借りて一度観ているんですが、ブログには書けませんでした。書けなかった理由は、たぶん、この映画はストーリーというストーリーがなかった、と思われたからだったかもしれません。いや、恥ずかしいことに、書くことに恐れをなしたからに相違ありません。
ジャ・ジャンクー監督の作品は思っていた以上に少なく、以下の7本です。僕はそのうちの4本を観たことになります。「一瞬の夢」と「プラットホーム」、探し続けているのですが、なぜかTUTAYAにないんですよね。
「一瞬の夢」(1997年)
「プラットホーム」(2000年)
「青の稲妻」(2002年)
「世界」(2004年)
「長江哀歌」(2006年)
「四川のうた」(2008年)
「海上伝奇」(2010年)
1960年前後のフランス映画の“怒れる若者たち”を描いた作品、例えばゴダールの「勝手にしやがれ」が思い浮かびます。ゴダールの作品は、ヌーヴェルヴァーグの基本3要素(即興演出、同時録音、ロケ撮影中心)とはっきりとしない物語の運び、だと言われています。そう言われてみると、まさにジャ・ジャンクー監督の「青の稲妻」は、それにあてはまります。
舞台は中国山西省、大同と呼ばれる地方都市。雑然とした街には、失業中の若者があふれています。定職もなく毎日ブラブラしている19歳のシャオジイとビンビン。原題は「任逍遙」、荘子の言葉だという。「なにものにもとらわれずに生きる」ということらしいが、映画のなかでは「やりたいことをやる」という感じで使われています。まさに「勝手にしやがれ」といえます。がしかし、シャオジイとビンビンは、金もないのでやりたいようにはやれません。
シャオジイは、ダンサーのチャオチャオに恋するが、彼女はヤクザの女で、実際に売られているという「モンゴル王酒」のキャンペーンガールです。彼女に付きまとったことから、ヤクザに痛めつけられます。ビンビンは、仕事を首になったことを母親には言えません。高校生の恋人とデートを重ねるが、もう受験が近いから会わないことにしようと言われても表情を変えません。進展することを自ら放棄しています。
ビンビンは軍隊に志願しますが、肝炎で落ちてしまいます。シャオジイはヤクザに仕返しをしようとしますが、オリンピック開催の決定の歓喜にかき消されてしまいます。そんな2人がラスト、なんとなく銀行強盗を起こします。爆弾を胸に抱えて「銀行強盗だ、金を出せ」と練習した通りにやってみると、警備員に簡単に取り押さえられ、あっさりと捕まってしまいます。「ボニー&クライド」ほどにはカッコよくありません。
常に煙草をくゆらす若者たち。無表情で、なにからなにまでダサくて野暮ったい。社会の閉塞感が漂うなかで、若者は出口が見当たりません。テレビでは、中国のWTO加盟、海南島での米軍機と中国機の接触事故、2008年オリンピックの北京開催決定など、若者の暮らす街とは同じ中国とは思えないほど、まったく違った中国が映し出されます。
以下、とりあえずシネマトゥデイより引用しておきます。
チェック:WTO加盟やオリンピック開催決定など、それまでにないほど社会情勢が急変した2001年の中国。変貌著しい中国社会から取り残されたような地方都市に生きる2組のカップルを通し、社会の激変を実感できない若者たちの葛藤、閉塞感をリアルに描く。監督は、『一瞬の夢』『プラットフォーム』などで世界が注目する中国の俊英ジャ・ジャンクー。刹那的に生きる主人公たちの心情を象徴するかのような、台湾の人気歌手リッチー・レンによる主題歌が深い余韻を残す。
ストーリー:中国の地方都市、大同。19歳のシャオジイ(ウー・チョン)は、年上のダンサーに恋をする。彼の親友ビンビン(チャオ・ウェイウェイ)は、恋人との距離を縮められずにいた。彼らは未来に期待しながらも、出口のない現実に苛立ちを募らせていく。
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