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日建設計・山梨グループのBIMがわかる展示会

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日建設計・山梨知彦グループの建築展「山梨グループ/NIKKEN SEKKEIの設計手法」が、外苑前のオリエアート・ギャラリーで8月20日から始まったので、さっそく行ってきました。会期は9月7日まで、僕が行ったのは8月30日のちょうどお昼頃でした。僕が観ているときに、オーナーと思われる人が事務所から顔を出しましたが、すぐに引っ込み、会場には僕一人でした。大規模設計事務所内の特定グループが社外の会場で展覧会を開催するというのは極めて珍しいことです。建築ジャーナリストの淵上正幸氏のコーディネートにより、日建設計の山梨知彦とデジタルデザイン室(角田大輔・竹内聡・酒井康央・中曽万里恵)による、「山梨グループ/NIKKEN SEKKEI の設計手法」というタイトルの展覧会です。


大規模設計事務所の展覧会ということでは、埼玉県立近代美術館で開催された「都市を創る建築への挑戦」展を観ました。その時にブログに、以下のように書きました。


「都市を創る建築への挑戦」展ですが、その頭に「設計組織のデザインと技術」とついています。「こうして街はつくられる」、これは大規模な建築を指しているようですが、誰がつくっているのか?、大規模な設計組織がつくっているのですが、今までその組織については、一般の人たちにはあまり知られていませんでした。丹下健三や黒川記章、そして安藤忠雄など、スター的な建築家は名前は知られていても、実際どんな仕事をしているのかは一般にはほとんど知られていません。大規模設計組織についてはなおさらです。施工会社の設計部についても同様です。

そこに取り上げられた「15の設計組織」とは、大規模組織的な設計事務所とゼネコンの設計部です。監修者として15社を選んだのは建築評論家の馬場璋造さんです。「都市はほとんど建築でできていて、その主要な部分をデザインしてきたのが設計組織なのに、存在があまり知られていない」と話しています。設計事務所は「山下設計」「安井建築設計事務所」「日建設計」「三菱地所設計」「日本設計」「松田平田設計」「久米設計」「佐藤総合計画」「石本建築事務所」の9組織、ゼネコン設計部は「清水建設」「竹中工務店設計部」「戸田建設設計統括部」「大成建設」「大林組」「KAJIMA DESIGN」の6組織です。


ゼネコン設計部は別にして、日経アーキテクチュアで毎年ランキングを発表していますが、日建設計は大規模組織的な設計事務所の中でも、仕事の量も一級建築士の数も、長年ダントツを走っています。日建設計の発足は、1900年(明治33年)住友本店臨時建築部設立時となっています。竹越健造が明治45年東大を卒業、住友本店臨時建築部に迎えられます。いわゆる「住友営繕」と言われていましたが、細かい話は飛ばして、1950年(昭和25年) 日建設計工務株式会社設立し、1970年(昭和45年) 株式会社日建設計に商号変更、現在に至ります。僕が日建を知ったのは、社名がまだ日建設計工務の時代でした。大阪に薬袋光明さん、東京に林昌二さん、一方は百十四銀行、もう一方は三愛ドリームセンター、パレスサイドビルと、お互い競い合っていたようです。この2人が日建を現在のような組織にした貢献者だと言えるでしょう。


時代は流れ、大きく変わりました。「山梨グループのBIMがわかる展示会」の話です。展覧会には、4つの建築が出ていました。僕は4つ全部知っていましたが、このブログで取り上げたのは2つだけでした。その4つとは、竣工順に「神保町シアタービル」(2007年6月)、「木材会館」(2009年5月)、「ホキ美術館」(2010年11月)、そして「ソニーシティ大崎」です。この4つの建築は規模も用途もまったく異なる建築です。が、しかし、同じ日建の山梨知彦グループにより設計されたものです。


それぞれの建築の特徴は「神保町」は、鉄板を使った変形した構造、計画時の日影計画、「木材会館」は、木材を使った立面の印象的な構成、「ホキ美術館」は、ザハ・ハディドばりの宙に浮いた形態操作、「ソニー」は、大規模オフィスビルのエネルギー・コンシャスの問題、新外装システム「バイオスキン」です。展示会は、建築の王道、模型を使った展示、とはいえ、完成模型ではなく、アイデアを得るためのプロセス模型が中心です。壁にはやはり完成した建築作品の画像が中心のパネル展示でした。いわば「日建らしくない作品」ばかりでした。とはいえ、山梨も2007年以前は、「乃村工藝社本社ビル」(2007年12月)で斜め柱を使う以前ということになりますが、いわゆる「日建らしい作品」ばかりをつくっていたようです。


日建には「吉野繁」というもう一方のスター建築家がいます。「東京スカイツリー」や「渋谷ヒカリエ」などを担当しています。往年の薬袋さんと林さんのように、組織をリードする建築家になりますかどうか?


タイトルが「山梨グループのBIMがわかる展示会」となっていますが、BIMとは何か? ウィキペディアには以下のようにあります。BIM(ビルディングインフォメーションモデル)は、そのライフサイクルにおいて建物データを生成および管理するための行程である。典型的には、3次元のリアルタイムでダイナミックなビルディングモデリングソフトウェアを使用して建物設計および建設の生産性を向上させる。この行程ではビルディングインフォメーションモデル(BIM)を作成し、そこには建物形状、空間関係、地理情報、建物部材の数量や特性が含まれる。こうして書かれると、昔からやってきたことばかりの、なんの変哲もない手法ばかりです。だだコンピューター全盛時代なので、コンピューターを使った計画・設計過程のシュミレーションにはおおいにメリットを発揮します。


会場には「展示概要」として、山梨知彦たち連名の文章がありました。

僕らの設計プロセスは、次の3つのステップとその相互のフィードバックから成り立っている。まず状況の「リサーチ」があり、次にチームによるブレストと議論による「分析」があり、それらをBIMやコンピューショナルな手法で「統合」していくというものだ。とはいえ実際の設計においては、3つの境界はあいまいで密接不可分な関係にある。実世界をそのまま捉えようとする「リサーチ」自体が観察者の分析的思考を内包した実体とは別ものであり、そのリサーチを通した「分析」は、解釈の再構築という意味で統合的であり、さらにはリサーチ、分析、統合は相互にフィードバックされる関係にあるため、三者の境界はますますあいまいにならざるを得ない。それでいながら、巨視的に見れば、3つのステップというストラクチャは確かに存在している。




日刊建設通信新聞社公式記事ブログ2012/08/22

日建設計・山梨グループのBIMがわかる展示会
日建設計の山梨グループの活動、実績を紹介する展覧会が、東京都港区のオリエアート・ギャラリーで始まった=写真。模型や写真展示のほか、展示にかかわる作業をログとして記録するなど、展示会そのものに設計活動を反映させている。20日に開いたオープニングレクチャーで山梨知彦氏は「展示は、来場者が設計室の一員と感じるようにつくった」と、ポイントを説明した。組織設計事務所に所属する建築家の展覧会は珍しい。コーディネーターを務める建築ジャーナリストの淵上正幸氏は「建築家としての実力を考えると、組織事務所に所属していようが、アトリエ派であろうが関係ない」と、第3回ヤング・アーキテクツ・プラザとして、山梨氏を選んだ理由を述べた。山梨氏は、ホキ美術館や木材会館、ソニーシティ大崎などの代表的プロジェクトに、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やアルゴリズミックデザイン、NC加工などコンピューターを使った技術を取り込んでいる。「大量生産というもっとも効率性が高いといわれていたものが、コンピューターの普及によって揺らぎ始めている。良い建築をつくるためには、一品生産の良さを取り戻すことが必要」として、IT(情報技術)を使った技術革新、新しい社会の創出に意欲をみせる。会期は9月7日まで。日刊建設通信新聞社も後援している。






参考:

近作「木材会館、ホキ美術館、ソニーシティ大崎」で考えたこと


過去の関連記事:

「ホキ美術館」を観た―建築編
神保町シアタービル!


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