吉本ばななの「下町サイキック」(河出書房新社2024年7月30日初版発行、2024年9月10日2刷発行)を読みました。
8月初めに購入した本、なかなか読めなくて、やっと読みました。
「友おじさん、どうして人は色とか
お金とかに目がくらむの?」
「人はいつだって、今の人生をとにかく
変えたいと思っているからだよ。」
目に見えないものが見える中学生のキヨカと、
近所に住む友おじさんの、
ささやかだけれど大切な連帯。
暮らしの哲学が詰まった最新長編!
近所のみんなと作る餃子、日々のそうじ、
お母さんと夕食を食べながらするおしゃべり、
道端で出会った名犬――。
まだいたい、この世界に。
今はもうなくなりつつある、私の知っていた下町ルール。とても独特で、しかもよく機能していたあの人生観。あれを今のうちに記録しておこうと思ったのです。良いことばかりではありませんでした。人間の生々しさに満ちた時代の、おどろおどろしいものを内包したルールです。だからこそ当時に下町は、この世からはみ出してしまった行き場のない人たちをなんとなく、薄ぼんやり、誰もむりせずに包み込んでいたのですね。
でも、あのとんでもないながらも人間力だけでなんとかしていた時代をちょっとだけ書いておきつつ、主人公のキヨカちゃんの内面のデリケートさ、生きて生きがたいほど強いサイキック能力が、「好きな人や日常で会う人の人数の多さで散らされてかなり普通に、病まずに生きていける、むしろ周りの人にとって長所となっているくらいだ」というのもまたテーマです。大人が痩せがまんしてでもちゃんと大人だと、子どももちゃんと子どもでいられるのです。(「あとがきと謝辞」より)
新しいものが何も入ってなかったらもう引退したほうがいいな、と思っていましたが、少しだけまた新しい方向に踏み出せたなと思いつつ、ちょっと時代にとって早すぎたやも。(「あとがきと謝辞」より)
吉本ばなな:
1964年東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年「キッチン」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。88年「ムーンライト・シャドウ」で泉鏡花文学賞、89年「キッチン」「うたかた/サンクチュアリ」で芸術選奨文部科学大臣賞新人賞、同年「TUGUMI」で山本周五郎賞、95年「アムリタ」で紫式部文学賞、2000年「不倫と南米」でドゥマゴ文学賞、22年「ミトンとふびん」で谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版され海外での受賞も多数。近著に「はーばーらいと」など。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。
朝日新聞:2024年8月14日
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