草森紳一の「随筆 本が崩れる」(中公文庫:2018年11月25日初版発行)を読みました。
これはすごい本である。すごいとしか言いようがない。
2LDKのマンションを埋める数万冊の蔵書が雪崩となってくずれてきた。ドアが開かず、風呂場に閉じこめられ――。これは読書の快楽への罰なのか。本好き、積ん読派に恐怖と共感の嵐をまきおこす表題作に、著者の愛する野球と喫煙についての随筆を加えた作品集。単行本未収録原稿を含む随筆五篇を増補。解説・平山周吉
本は、なぜ増えるのか。買うからである。処分しないからである。したがって、置き場所がなくなる。後で後悔すると知りつつ、それでも雑誌は棄てる。大半は役に立たぬと知りつつ、単行本を残してしまう。役に立たぬという保証はないからだ。仕事をするかぎり、この未練はついてまわり、ひたすら本は増えていく。(本文より)
草森紳一:
1938年、北海道生まれ。慶應義塾大学中国文学科卒業。雑誌編集者を経て、文筆家に。写真、マンガ、広告、デザイン、建築、美術、幕末、李賀など多岐にわたるジャンルで博覧強記の書き手として知られた。73年、「江戸のデザイン」で毎日出版文化賞受賞。2008年3月、大量の蔵書を遺し逝去。著書に「ナンセンスの練習」「円の冒険」「絶対の宣伝 ナチス・プロパガンダ」(全四巻)「歳三の写真」「荷風の永代橋」など多数。未完の原稿が多く遺され、没後も著作の刊行が続いており、本書は没後十九冊目となる。