中井亜佐子の「エドワード・サイード ある批評家の残響」(書肆侃侃房:2024年1月26日第1刷発行)を読みました。
久しぶりにスリリングな論考に出会うことができました。
著者の幅広い知識には、頭が下がります。
サイードにとって、批評とは何だったのか?
文学や音楽のみならず歴史や現実の政治など、分野をこえて論じた批評家、エドワード・サイード。ガザ危機が激化する今、パレスチナ問題についても果敢に発言した彼の思考の軌跡をたどりつつ、現代社会における批評の意義を問う。
もくじ
引用の注記について
序章 批評家を批評する
テクストは世界のなかにある
エドワード・サイードを語る
批評とは何か
批評家の残響を聴く
第一章 ある批評家の残響
声を装うテクスト
批評の限界?
コンラッドを聴く
近代の不協和音
友だちにはなれない
第二章 理論は旅する
フレンチ・セオリー
「はじまり」にフーコーもいた
オリエンタリズムの空間
廃墟の批評理論
第三章 文化と社会
批評家と共同体
旅するレイモンド・ウィリアムズ
意図をとりもどす
批評意識は理論に抗う
アカデミアからパレスチナへ
終章 人文学に<新しさ>は可能か
永遠に新しくあれ
言葉への愛
追記――希望は棄てない
謝辞
エドワード・W・サイード:
1935年、エルサレム生まれ。幼少期をカイロで過ごす。ハーヴァード大学で博士号を取得。その後、コロンビア大学で比較文学を教えつつ、パレスチナ解放運動にかかわる。主著「オリエンタリズム」は、人文学の学問領域の再編をうながす画期的な著作。2003年、ニューヨークで逝去、2023年に没後20年を迎えた。
中井亜佐子:
1966年生まれ。一橋大学大学院言語社会研究科教授。専門は英文学。オクスフォード大学博士課程修了(D.Phil.)。著書に「日常の読書学――ジョセフ・コンラッド『闇の奥』を読む」(子鳥遊書房、2023年)、「<わたしたち>の到来――英語圏モダニズムにおける歴史叙述とマニフェスト」(月曜社、2020年)、「ポストコロニアル文学を読む」(研究社、2007年)など。翻訳に、ウェンディ・ブラウン「いかにして民主主義は新自由主義の見えざる攻撃」(みすず書房、2017年)など。