田中慎弥の「完全犯罪の恋」(講談社文庫:2022年11月15日第1刷発行)を読みました。
「すごい小説を読んでしまった。
私はこの先も、何度も自分の血を辿るように
この作品を読み返すと思う」
――紗倉まな
「人は恋すると、罪を犯す。
運命でも必然でもなく、独りよがりの果てに。
その罪を明かさないのが、何よりの罰」
ーー中江有里
芥川賞受賞後ますます飛躍する田中慎弥が、過去と現在、下関と東京を往還しながら描く、初の恋愛小説。
「私の顔、見覚えありませんか」
突然現れたのは、初めて恋仲になった女性の娘だった。
芥川賞を受賞し上京したものの、変わらず華やかさのない生活を送る四十男である「田中」。編集者と待ち合わせていた新宿で、女子大生とおぼしき若い女性から声を掛けられる。「教えてください。どうして母と別れたんですか」下関の高校で、自分ほど読書をする人間はいないと思っていた。その自意識をあっさり打ち破った才女・真木山緑に、田中は恋をした。ドストエフスキー、川端康成、三島由紀夫……。本の話を重ねながら進んでいく関係に夢中になった田中だったが……。
田中慎弥:
1972年山口県生まれ。山口県立下関中央工業高校卒業。05年、「冷たい水の羊」で第37回新潮新人賞受賞。08年、「蛹」で第34回川端康成文学賞受賞。同年、「蛹」を収録した作品集「切れた鎖」で第21回三島由紀夫賞受賞。12年、「共喰い」で第146回(平成23年度下半期)芥川龍之介賞受賞。同作は13年9月、映画化された。19年、「ひよこ太陽」で第47回泉鏡花文学賞受賞。他の著書に、「燃える家」「宰相A」「地を這うものの記録」などがある。
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