エマニュエル・トッド、マルクス・ガブリエル、フランシス・フクヤマの「人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来」(朝日新聞出版:2024年2月28日第1刷発行)を読みました。
ウクライナで、パレスチナで命が失われ、世界大戦はすぐそこにある。ビッグデータを餌に進化するAIは専制者と結びついて自由社会を脅かし、人間の価値や自律性すら侵食しかねない。テクノロジーが進むほど破壊的で不確実になる未来──世界最高の知性が全方位から見通す。
制御不能の暴力と、人間を凌駕し始めたテクノロジー。「暴走列車」に乗った人類の終着点はどこにあるのか?全世界で頻発する戦争により、歴史は“暗い過去”へと逆戻りしつつある。一方で、データを餌に肥え続けるAIは、飛躍的な進歩を遂げ、「ビッグテック」という新たな権力者と結託し、自由社会を脅かしている。人類中心で紡がれてきた「歴史」は、次のフェーズへ移行する―。それでもなお、われわれはまだ「歴史のかじ取り」ができるのだろうか?世界最高の知性が、人類の行き着く先を大胆に予測する。
ウクライナ侵攻をはじめとした戦争や紛争で世界の行く末が見えにくくなっているなか、エマニュエル・トッド氏(フランスの人類学者/歴史学者)は「戦争とは、結局のところ、現実を確かめる究極の試金石だ」と強調し、「驚くべきことにロシアが世界から好かれている」と指摘。「自らを自由民主主義の価値観の旗手だと考える西側諸国は完全に時代遅れだ」「アメリカのさらなる悪化に備えなければならない」と説いています。
フランシス・フクヤマ氏(アメリカの政治学者)は、ウクライナ侵攻について「欧州全体の政治的な秩序に対する紛争だ」と読み解きます。目にするのは「多極的な世界」だとし、世界は「直面する課題ごとに異なる同盟関係が形成されていく」とします。
マルクス・ガブリエル氏(ドイツの哲学者)は、「資本主義や近代性は、普遍的な道徳的価値と社会経済システムを一致させることを約束しています。うまくいかなければ、信じられなくなり信頼性を失う」としたうえで、「これが今、不平等によって自由民主主義に起きている。資本主義は、もはや解放につながらない」と説明しています。
目次
1 戦争、ニヒリズム、耐えがたい不平等を超えて(エマニュエル・トッド 現代世界は「ローマ帝国」の崩壊後に似ている;フランシス・フクヤマ 「歴史の終わり」から35年後 デモクラシーの現在地)
2 「テクノロジー」は、世界をいかに変革するか?(スティーブ・ロー 技術という「暴走列車」の終着駅はどこか?;メレディス・ウィテカー×安宅和人×手塚眞 鼎談 進化し続けるAIは、人類の「福音」か「黙示録」か)
3 支配者はだれか?私たちはどう生きるか?(マルクス・ガブリエル 戦争とテクノロジーの彼岸 「人間性」の哲学;岩間陽子×中島隆博 対談)
トッド,エマニュエル[トッド,エマニュエル] [Todd,Emmanuel]
歴史家、文化人類学者、人口学者。1951年フランス生まれ。家族制度や識字率、出生率に基づき現代政治や社会を分析し、ソ連崩壊、米国の金融危機、アラブの春、英国EU離脱などを予言
ガブリエル,マルクス[ガブリエル,マルクス] [Gabriel,Markus]
哲学者。1980年ドイツ生まれ。古代から現代にいたる西洋哲学の緻密な読解から「新しい実在論」を提唱し、注目を集めた。「哲学界のロックスター」の異名を持ち、伝統あるボン大学において史上最年少の29歳で正教授に就任した
フクヤマ,フランシス[フクヤマ,フランシス] [Fukuyama,Francis]
政治学者。1952年アメリカ生まれ。1989年に発売した論文「歴史の終わり?」で、西側諸国の自由民主主義が、人間のイデオロギー的進化の終着点なのではないかとの見方を示した