ヒコロヒーの「きれはし」(Pヴァイン:2021年9月4日初版発行、2021年12月6日三刷発行)を読みました。
国民的地元のツレ、
ヒコロヒー
初のエッセイ
ある女芸人の人生の「きれはし」
本書はどこの馬の骨かわからない女が一端のふりをしてたらたらと文字を連ねているだけのものである。娯楽性もなければ有益性もなく、あなたの人生の時間を割いて眺めるにふさわしいかは知る由もない。さしてドラマティックではない人生録や、派手ではない経歴をこれ見よがしに語り連ねることは厚かましく思えて引け目がある。ただ本当になんでもない事柄をなんでもなく連ねているだけのものであり、それをあなたが好くか好かないかはあなたの物語である。・・・どうでもいい女のさまざまな瞬間を、雑に切れ端に書き留めていっているだけのようなものであるが、それを覘いていくだけの時間を過ごそうというひとつ他愛ない腹をくくってみてから読み進めて行っていただきたい。読み終わる頃に、あなたの中にも、どうだっていいや、という枠が生まれたとしても、責任は取らないし、謝るつもりも毛頭ないのである。(「はじめに」より)
望みを捨てられぬまま、狭霧ばかりが立ちこめる道を自分で編んだ靴で歩むしかないという状況など、ほとんど拷問のようなものである。その拷問に耐え抜いてでもお笑いが好きなら「芸人」を続けろなんて、私以外の人間は言ってはいけない。このつらさは私にしか、そしてそれぞれの芸人にしか分からない。嫌いになれたら楽なのに、なんて思うわりに、、本当は嫌いになんてなりたくないときちんと分かっている。これが愛なのか執着なのか、そんなことも本当のところは分からない。(「チェックリスト」より)
ヒコロヒー:
1989年生まれ、愛媛県出身。近畿大学の落語研究会に所属し、学園祭で松竹芸能にスカウトされ、松竹芸能大阪養成所を経て、2011年デビュー。世界観や台詞で魅せるコントを中心に活動するピン芸人。
趣味は映画鑑賞、絵画鑑賞、読書、酒、煙草、麻雀、イラストなど。
テレビ朝日「キョコロヒー」、文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」、インターネットラジオGERA「ストロベリーワンピース」他出演。
主な執筆活動は、かがみよかがみ「ヒコロジカルステーション」(朝日新聞社)、水道橋博士のメルマ旬報「ヒコロヒーの詩的で私的な無教養講座」(BOOKSTAND)、BRUTUS「直観的社会論」(マガジンハウス)など。
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