江國香織の「川のある街」(朝日新聞出版:2024年2月28日第1刷発行)を読みました。
はかなく移りゆく
濃密な生の営み。
人生の三つの〈時間〉を
川の流れる三つの〈場所〉から描く、
生きとし生けるものを
温かく包みこむ慈愛の物語。
* * *
ひとが暮らすところには、いつも川が流れている。
両親の離婚によって母親の実家近くに暮らしはじめた望子。そのマンションの部屋からは郊外を流れる大きな川が見える。父親との面会、新しくできた友達。望子の目に映る景色と彼女の成長を活写した
「川のある街」。
河口近くの市街地を根城とするカラスたち、結婚相手の家族に会うため北陸の地方都市にやってきた麻美、出産を控える三人の妊婦……。閑散とした街に住まうひとびとの地縁と鳥たちの生態を同じ地平で描く
「川のある街 Ⅱ」。
四十年以上も前に運河の張りめぐらされたヨーロッパの街に移住した芙美子。認知症が進行するなか鮮やかに思い出されるのは、今は亡き愛する希子との生活だ。水の都を舞台に、薄れ、霞み、消えゆく記憶のありようをとらえた
「川のある街 Ⅲ」。
〈場所〉と〈時間〉と〈生〉を描いた三編を収録。
この作品を、古川日出男は絶賛しています。
朝日新聞:2024年2月23日
文芸時評:作家 古川日出男
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