BRUTUS「西洋美術総まとめ。」(マガジンハウス:2012年5月1日号)を読んでみました。最初はブログに載せるつもりはまったくなかったのですが、読んでみるとこれがなかなか面白い。「西洋美術」について歴史的にも内容的にも要領よく上手くまとめてあり、よく書かれています。そしてやはりこういう雑誌の常で、初心者向けに見やすく読みやすく、また画像がきれいです。「人気画家・山口晃と一緒に振り返る、美術の歴史3000年。」として、「古代ギリシャから20世紀、名作154点総覧。セザンヌの足跡を辿ってプロヴァンスへ。」とあり、「さあ、参りましょう!」と表紙に書かれていたりもします。編集・執筆は、武蔵野美術大学・女子美術大学・東京藝術大学などで非常勤講師も務める美術ジャーナリストの藤原えりみ。そして今回の特集の目玉、案内人としてアーティスト山口晃が参加しています。
「あなたは今、大きな美術館の入口に立っています。人々は絵を描き、彫刻を作ってきました。それはなぜなのかな、と考えています。神話や聖書の物語を人々に説明するためもあったでしょう。王様や英雄や聖人を讃え、その姿をいつまでも留めておきたい気持ちがありました。世界はこういうふうに見ることもできる、あるいは単純化・複雑化することができると考えた人の作り出したものもあります。地球上の(時にはこの世ではない場所の)ある瞬間を切り取って集めたものが美術の歴史です。それをまとめることは、“世界って、歴史ってこんなでした”を知ること。・・・さあ、この大いなる遺産を見ていきましょう」と、始めに書かれています。
まず始めは「古代ギリシャ・ローマ」です。「輝かしい肉体讃歌。ヨーロッパ文明の一翼を担う、理想的プロポーションの追求と裸体の造形」とあります。なぜか「見た目が10割」と書かれています。以下、全15章、長い歴史が過ぎ去り「第一次世界大戦後の美術。」にまで至ります。「世界大戦をくぐり抜けて大きく変貌した世界。芸術家たちもまた否応なくその変化と対峙していた」とあります。「テーマで見る西洋美術」として2つ、「静物画」「風景画」と「幻想とエロス」が分かり易く書かれています。また山口晃画伯による「特別講義」が6つ、挟み込まれています。「フェルメールって、もしかして・・・ヘタ?」というのもあり、これも面白い。全体的に各章ごとの「キャプション」が面白くて見事に作品を言い当てています。
山口晃は、セザンヌが最晩年に使っていたレ・ローヴのアトリエを訪れます。そしてその印象を以下のように語っています。「まったく予想していなかったのですが・・・入ったとたん胸に迫る感動がありました。たぶん、作品からだけではわからない、セザンヌという人間に対する共感のようなものだったと思います」と。レ・ローヴのアトリエから徒歩10分ほどの場所に、セザンヌがサント=ヴィクトワール山を9点描いた丘があります。ここも訪れた山口は、「アトリエの余韻からかここでセザンヌが・・・と少しウルウルしていた」とも語っています。しかし、サント=ヴィクトワール山は「意外にのっぺりしている」とも。実際は山というより巨大な絶壁に近い、という。
特集:西洋美術総まとめ。目次
1 古代ギリシャ・ローマ。
2 中世の美術。
3 ルネサンスからマニエリスム。
4 北方ルネサンス
5 17世紀イタリアとスペインの美術。
6 17世紀オランダの美術。
*テーマで見る西洋美術1 「静物画」「風景画」
7 17~18世紀フランスの美術。
8 フランス革命期の美術。
9 新古典主義とロマン主義。
10 アカデミスムとレアリスム。
11 印象派からポスト印象派。
*テーマで見る西洋美術2 「幻想とエロス」
12 フォーヴィスムとキュビスム。
13 抽象主義の誕生。
14 ダダイスムとシュルレアリスム。
15 第一次世界大戦後の美術。
「セザンヌがいたからみんながいる。僕も」
山口晃 旅する画家への画家の旅
特集 西洋美術総まとめ。
セザンヌがいたからみんながいる。僕も。
山口晃 旅する画家への画家の旅
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