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宮下規久朗の「知っておきたい 世界の名画」を読んだ!

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とんとん・にっき-miya


宮下規久朗の「知っておきたい 世界の名画」(角川文庫:平成24年1月25日初版発行)を読みました。本の帯には「名画50でわかる鑑賞のツボと見方 だから傑作なのか!」 とあります。本のカバー裏には以下のようにあります。


14世紀イタリアのジョットから現代のウォーホルまで、西洋絵画の巨匠が描いた屈指の名作50を厳選し、いま注目の美術史家がその見どころをわかりやすく解説。日本人にはなじみの薄い「羊飼いの礼拝」などキリスト教にかかわる主題やかたちの意味、画家の技法上の特徴など、背景の歴史や文化とともに「名画の理由」を読み解く。この50作品さえ知っていれば、西洋美術鑑賞のための知識とツボがよくわかる、とっておきの入門書。


厳選された50点、日本ではなじみのない画家であっても、美術史上きわめて重要な巨匠(オールド・マスター)ばかりであり、最低限これだけは知っておきたいという名画中の名画ばかりである、と、「はじめに」で宮下は述べています。そして面白いのは、作品にそれぞれ★をつけてその重要性を示しているので、なんともはや分かり易い。


★★★ 死ぬまでに一度は観るべき人類究極の至宝  5作品

★★   わざわざ見に行く価値のある西洋美術の最高傑作 20作品

★ 見ることができれば幸福な最重要名画  25作品


目次を見ると、大きくⅢ章に分かれています。

Ⅰ 巨匠の時代のはじまり  ゴシックからルネサンスへ  17作品

Ⅱ 西洋絵画の栄光と頂点  バロックとロココ        16作品

Ⅲ 近代絵画の多彩な展開 モダニズムの時代       17作品


お恥ずかしい話ですが、まず始めに目次を見て、ついつい自分が観たことのある作品をチェックしたりしていました。確かに観たといえるのは20作品、たぶんもしかして観ているのではないかと思われるのはあと5作品です。その5作品は、ルーブル美術館やウフィッツィ美術館、プラド美術館、そして日本での展覧会で、もしかして観ていたのではないかということで、はっきりしないのが自分でももどかしい。


この本で取り上げられている50作品のうち約半分は(もしかしたら)僕が観たことのある作品、ということになります。これが多いのか、少ないのかは、ここでは別にしておきます。取り上げられている作品は、そのほとんどすべてが海外の美術館や教会にあるものです。しかも、辺鄙なところにある教会の天井画などは、なかなか観るのは困難です。従って50作品「全点踏破」は、やはり僕には無理だと思います。


そんなことはどうでもいいのですが、「世界の名画」を開くと、まず目に入るのがファン・アイクの「ゲントの祭壇画」全図です。昨年5月に行ったオランダ・ベルギー・ルクセンブルグ旅行の時に、ベルギーのシント・バーフ大聖堂へ立ち寄り、「ゲントの祭壇画」を観ることができました。「この作品は、複数のパネルを連結して観音開きに開け閉めできる多翼祭壇画である。16世紀には“キリスト教世界でもっとも美しい作品”と評され、この作品を見にきたドイツの大画家デューラーは“あまりにも美しい”と称賛した」と、宮下は書いています。


ルーベンスの「十字架降下」もやはり昨年の旅行の際に、アントウェルペン大聖堂で観ることができました。逆に、プラド美術館でムリーリョの「無原罪の御宿り」は偶然見つけて観ることができましたが、散々美術館のなかを駆け回って探したヒエロニムス・ボスの「快楽の園」は見つかりませんでした。ヴァチカン宮殿は2度行き、ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の天井画「アダムの創造」や「最後の審判」は2度観ていますが、同じヴァチカン宮殿のラファエッロ「アテネの学堂」とこの本で取り上げられた「聖ペテロの解放」は残念ながら観ていません。


「世界の名画」のなかで、僕がまったく知らなかったという作品は2、3ありましたが、ほとんどはよく知られた作品ばかりです。書かれたものを見ると、その内容はだいたい知っていました。しかし、これを書いて見ろと言われると、こう的確に、こう簡潔には書けません。脱帽です。順序よく読んでもよし、拾い読みしてもよし、まさに「世界の名画」のお薦めの入門書です。惜しむらくは、画像がカラーであればなお素晴らしいものになったと思われますが、文庫本という体裁ではこの辺が限度なのでしょうか。


宮下規久朗略歴:

1963年生。美術史家。神戸大学大学院人文学研究科准教授。東京大学文学部卒業、同大学院修了。著書に、「カラヴァッジョ」名古屋大学出版会(サントリー学芸賞受賞)、「食べる西洋美術史」「ウォーホルの芸術」光文社新書、「カラヴァッジョへの旅」角川選書、「刺青とヌードの美術史」NHKブックス、「不朽の名画を読み解く」ナツメ社、「裏側からみた美術史」日経プレミアシリーズ、「フェルメールの光とラ・トゥールの焰」小学館101ビジュアル新書ほか多数。


過去の関連記事:

宮下規久朗の「フェルメールの光とラ・トゥールの焰」を読んだ!
宮下規久朗の「カラヴァッジョ巡礼」を読んだ!
宮下規久朗の「刺青とヌードの美術史 江戸から近代へ」を読む!

とんとん・にっき-seiyo2 「西洋美術を知りたい」

2012年3月27日第1刷発行

監修者:池上英洋
発行所:株式会社学研パブリッシング

発売元:株式会社学研マーケティング

定価:580円




とんとん・にっき-seiyo1 「ブルータス2012年5月1日号」

株式会社マガジンハウス

特別定価:630円


















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