島田雅彦の「古典新訳 好色一代男」(河出文庫:2023年11月20日初版発行)を読みました。河出文庫・古典新訳コレクションのなかの一冊です。
同じ古典新訳コレクションのなかの、川上弘美の「伊勢物語」を読みました。
井原西鶴の「好色一代男」は、読みたいと思っていましたが、読んでいません。
本書は好色に生きた主人公世之介の一代記である。内容は大きく二分され、前半は世之介の幼少期から、諸国の好色遍歴を経て親の莫大な財産を譲り受けて大尽になるまでの青年期を描き、後半は大尽世之介を通して描かれた、三都を中心とする古今の遊女列伝となっている。
「一代男」とは、当人一代だけで終わり跡継のない男のことを言う。すなわち「好色一代男」との書名は、「跡継ぎののことなど考えず、色恋に道だけに我が身一生を全て捧げた男の一代記」との意味である。(「解題」水谷隆之より)
生涯でたわむれた女性は3742人、
男性は725人。
世之介の生涯とは?
井原西鶴による江戸のベストセラーが、
島田雅彦の新訳で甦る。
70歳にして女を口説き、60歳に至るまで色事にかまけた推事にかまけたおした伝説の色好み・世之介の生涯を描いた「好色一代男」。破天荒な男たちによるお遊び満載の珍道中は爆笑必至!井原西鶴が生み出した江戸の浮世草子の名作が、島田雅彦の現代語訳によって鮮やかに息を吹き返す。解題=水谷隆之
富岡多恵子の「西鶴の感情」で「好色一代男」について触れていました。
西鶴の「好色一代男」は、「源氏物語」を意識して書かれた一人の男の「成長物語」だと、富岡は言います。世之介7歳の時から書き始められ、遊びが過ぎて勘当され、父親の死で家に連れ戻され、母親から現在のお金で約450億円もの遺産を譲られたのが34歳で、35歳からは「粋人」としてその金を使って、60歳で女護島へ渡っていきます。勘当されている間も世之介は、褌の乾く間もないほどに腰のかがむまで色の道はやめまいと励んだそうです。連れ戻されてからも、使い切れないほどの遺産が入り「この金で、気に入った女はすべて身請け、名高い女郎はひとり残らず買わずにおかない」と神にかけて誓ったというから、すごいものです。
しかし末路は哀れです。還暦を迎えると耳も遠くなり、足も弱り、みっともない格好になってきます。信心したこともなく、死んだら鬼に食われるまでだと思ってきたので、成るようにしかなるまいと、残った金子を山の奥深いところに埋めてしまいます。同好の友7人と誘い合って、「好色丸」と名付けた小さな舟で女護島へ渡って、女のつかみ取りをやろうと伊豆の国から出て行って、結局は行方知れずになります。
島田雅彦:
1961年東京都生まれ。83年「優しいサヨクのための嬉遊曲」でデビュー。84年「夢遊王国のための音楽」で野間文芸新人賞、92年「彼岸先生」で泉鏡花文学賞、2006年「退廃姉妹」で伊藤整文学賞、2008年「カオスの娘」で芸術選奨文部科学大臣賞、2016年「虚人の星」で毎日出版文化賞、2020年「君が異端だった頃」で読売文学賞をそれぞれ受賞。近著に「パンとサーカス」、「小説作法XYZ作家になるための秘伝」、「時々、慈父になる。」など。
過去の関連記事:
これから読む(だろう)本
「小説作法ABC」
著者:島田雅彦
発行:2009年3月25日
発行所:株式会社新潮社
「小説作法XYZ 作家になるための秘伝」
著者:島田雅彦
発行:2022年5月25日
発行所:株式会社新潮社
「島田雅彦芥川賞落選作全集 上」
河出文庫
2013年6月20日初版発行
「島田雅彦芥川賞落選作全集 下」
河出文庫
2013年6月20日初版発行