海野聡の「森と木と建築の日本史」(岩波新書:2022年4月20日第1刷発行)を読みました。
発行と同時に購入し、半分ぐらい読んであったもの、残りをやっと読み終わりました。
伐り出す。運ぶ。使う。育てる。祈る.。――
建築史家がとらえた木と人の人の関係史
「森と木と建築の日本史」
衣食住から信仰に至るまで、日本の歴史とは、木とともに歩んだ歴史であるといっても過言ではない。森のめぐみを享受した先史時代、都城や寺院などの大量造営が展開した古代から、森との共生を目ざす現代まで――建築のみならず流通にも着目し、また考古・民俗・技術などの知見も駆使して、人びとが育んだ「木の文化」を描く。
法隆寺金堂や五重塔をはじめ、日本の歴史的建造物の多くは木造である。しかしながら、日本建築を語るうえで「木」そのものが主役になることは少なかろう。もちろん心柱のような巨木は目を引くが、年輪の詰まった長押の糸征や四方柾の柱のような木取りの稀少性を知る人は少なくなってきているし、ましてや前近代の輸出入木材の聞くことはまずなかろう。・・・木は工業製品とは異なり、木そのものに対する人びとの信仰、、山から現場までの長い道のり、加工道具、山林の保全など、単なる材料としての枠に収まらない社会的・文化的背景が詰まっているのである。(本書「あとがき」より)
目次
序章 日本の森林と木の文化
第一章 木と人のいとなみ
一 森林と人のかかわり
二 生活のなかの木材と森林の変化
三 木の特性を知る
四 木を加工する
第二章 豊かな森のめぐみ――古代
一 豊富な資源が可能にした大量造営の時代
二 産地から現場まで――どのように運ばれたか
三 適材適所の利用――各地の事例から
四 木の特性を熟知していた古代人
第三章 奪われる森と技術のあゆみ――中世
一 巨材の減少――大仏殿造営からわかる資源枯渇
二 進む利権化
三 樹種を使い分ける
四 革新的な道具の登場
五 海をわたる木材
第四章 荒廃と保全のせめぎあい――近世
一 消極的保全から積極的保全へ――資源保護の模索
二 大火がもたらした流通の変化
三 広がる樹種の選択
四 信仰を受け継ぐために――御杣山と神宮備林
五 巨材の探求と技術革新
終章 未来へのたすき――近代から現代
一 今もつづく運搬の苦労
二 木材不足から紡ぐ森林へ
三 おわりにかえて
あとがき
主要参考文献
図版出典一覧
海野 聡(うんの さとし):
1983年,千葉県生まれ.2009年,東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程中退.博士(工学).奈良文化財研究所を経て,
現在――東京大学大学院工学系研究科建築学専攻准教授
専門――日本建築史・文化財保存
著書――『奈良で学ぶ 寺院建築入門』(集英社新書)
『日本建築史講義――木造建築がひもとく技術と社会』(学芸出版社)
『古建築を復元する――過去と現在の架け橋』(吉川弘文館)
『建物が語る日本の歴史』(吉川弘文館)
『奈良時代建築の造営体制と維持管理』(吉川弘文館)
「日本建築史講義
木造建築がひもとく技術と社会」
2022年5月1日第1版第1刷発行
著者:海野聡
発行所:株式会社学芸出版社