宮部みゆきの「ぼんぼん彩句」(角川書店:2023年4月19日初版発行)を読みました。
以下、「あとがき」より・・・。
2012年の夏、「怖い俳句」(幻冬舎新書)という本に出合いました。作家で俳人で翻訳家の倉阪鬼一郎さんが、古今の数多の名作俳句を「怖い」をキーワードにセレクトしたアンソロジー句集です。章立てに沿って読み進めば、芭蕉から現代に至る俳句の歴史を学ぶことができる上に、個々の句に添えられた倉阪さんの丁寧でわかりやすい鑑賞・解説が素晴らしく、私は深く感動しました。
ということで、さまざまな句集やは俳句の評論集などを読み始め、そうすると自分でも一句ひねってみたくなるわけですが、なにしろド素人ですから、初めの一歩の踏み出し方がわかりません。・・・そこで、BBKのメンバーを誘ってみようと思い立ちました。何と全員が思いきり乗り気で参加してくれました。・・・という次第で、「BBK」には「ボケ防止句会」の意味もつくことになりました。
(14年ほど前に、同年代の人たちと「BBK」という会を作りました。BBKは「ボケ防止カラオケ」を略したもの)
以来、切磋琢磨しながら句会を続けてきたのですが、私はやっぱり骨がらみで小説家でして、へぼ句をひねる一方で、何とかして俳句を小説の題材にできないかと考えるようになりました。そして思いついたのが、「BBK句会で生まれた俳句をタイトルにして、原稿用紙30枚から40枚前後の短編小説を書く」というアイデアでした。
俳句×小説
17音の奥に潜む
誰も知らない物語
社会派、時代、ホラー、SF・・・
ジャンルを超えて様々なストーリーを紡いできた
宮部文学の新しい挑戦
繊細で彩り豊かに輝く12編の功績
取り上げられた俳句12編
「枯れ向日葵呼んで振り向く奴がいる」よし子
「鋏利し庭の鶏頭刎ね尽くす」薄露
「プレゼントコートマフラームートンブーツ」若好
「散ることは実るためなり桃の花」客過
「異国より訪れし婿墓洗う」衿香
「月隠るついさっきまで人だった」独言
「窓際のゴーヤカーテン実は二つ」今望
「山降りる旅駅ごとに花ひらき」灰酒
「薄闇や苔むす墓石に蜥蜴の子」石杖
「薔薇落つる丑三つの刻誰ぞいぬ」蒼心
「冬晴れの遠出の先の野辺送り」青賀
「同じ飯同じ菜を食ふ春日和」平和
枯れ向日葵呼んで振り向く奴がいる
寿退社後に、婚約者に裏切られ婚約を破棄されたアツコは、ある日、乗ったことのない路線バスで初めて終点まで乗車した。終点のバス停には、小さな丘と公園が広がっていて、さ冬ばれの党での先の延べ送り
冬晴れの遠出の先の野辺送り
自殺同然の事故で兄を亡くしたわたしは、昔ながらの徒歩での野辺送りの途中で、見知らぬ女子中学生と出会ったその中学生はなぜか兄の野辺送りに同行してくれるのだが…。日本の原風景を描きだす小さな里山の物語。