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井上荒野の「そこにはいない男たちについて」を読んだ!

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井上荒野の「そこにはいない男たちについて」(ハルキ文庫:2022年7月18日第1刷発行)を読みました。(本書は、2020年7月に小社より単行本として刊行されました、とあります)

 

愛する夫を喪った女と、夫が大嫌いになった女――夫を突然亡くし、しばらく料理教室をお休みにしていた実日子(みかこ)38歳。ようやく再開した教室に、女友達に紹介されて初めて参加したまり38歳は、夫とうまくいっていないのだと皆の前でいうが――料理教室を舞台にしたふたりの「妻」の孤独と冒険の物語。各メディアで絶賛され続々重版した長篇小説、待望の文庫化。

(解説:原田ひ香)

 

能海まりは38歳。夫、光一は住居兼事務所のマンションで、不動産鑑定士の事務所を経営しており、まりは彼の秘書的な仕事をしている。つまり、夫が外回りなどで出かけない限り、夫婦は朝から晩まで一緒にいるのだ。これはなかなか気詰まりだろうな、ということが伝わってくる。この気詰まりな空気の中で、まりは夫にうんざりしている。だから、まりはマッチングアプリを使って、男を物色している。

 

料理教室の講師、園田実日子もまりと同じ38歳。路地の一角にあるキッチンスタジオで教室を開いている。実日子は一年ほど前に夫を亡くし、まりが最初に訪れた日は、それ以来の開催だった。この38歳の二人の女性と夫たち、男たちの関係で物語は進んでいく。

 

まりは手を伸ばして、星野一博の手に触れた。星野一博が指を動かし、ふたりはテーブルの上で指を絡めあった。このあとまりは、星野一博と寝るつもりだった。寝室の、自分のベットで。ある時期から光一がまったく近づかなくなったあのベットの上で。もちろん今夜、光一は帰ってくる。何時かはわからない。もう地下の駐車場にいるかもしれないし、まりと一博のセックスの最中に、ドアを開けるのかもしれない。玄関の靴を見て、光一はすぐに事情を察するだろう。長年ともに暮らした夫として、イブの夜にひとり置き去りにされた私がとりかねない行動として、理解するだろう。そして彼はどうするだろうか。黙って踵を返して出て行くか、それともただの同居人として、私たちの邪魔にならないように気を遣って、今夜はまたソファで眠ることにするだろうか。いずれにしても、今夜は決定的な夜になるだろう。

 

井上荒野:

1961年、東京都生まれ。成蹊大学文学部卒業。1989年、「わたしのヌレエフ」で第1回フェミナ賞を受賞し、デビュー。2004年、「潤一」で島清恋愛文学賞、2008年、「切羽へ」で直木賞、2011年、「そこへ行くな」で中央公論文芸賞、2016年、「赤へ」で柴田錬三郎賞、2018年、「その話は今日はやめにしておきましょう」で織田作之助賞を受賞。主な著作に「あちらにいる鬼」「あたしたち、海へ」「そこにはいない男たちについて」「百合中毒」「生皮―あるセクシャルハラスメントの光景」がある。

 

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