新宿ピカデリーで、佐藤泰志原作、城定秀夫監督の「夜、鳥たちが啼く」を観てきました。
佐藤泰志、ほとんど大体読んでいます。「海炭市叙景」以来、佐藤の書くものはよく映画化されてきましたし、ほとんど観ています。
「夜、鳥たちが啼く」は、佐藤泰志の短編集「大きなハードルと小さなハードル」の中の一編です。確かに読んでいますし、ブログにも書いていますが、まったく内容のことは覚えていません。
映画は、書けども売れない作家を山田裕、佐藤泰志の自伝的、自画像、といったところでしょうか。子連れの女を松本まりか、これがよかった、素晴らしい。二人のラブシーンは圧巻で、特筆ものでした。内容はともかく、僕は好きですね、こういう映画。
「夜、鳥たちが啼く」
学生時代の友人と離婚した裕子と、その息子のアキラに母屋を貸し、僕は不眠症の鳥たちにかこまれたプレハブで暮らしている。アパートが見つかるまで、という約束だった。野球観戦から帰り、海で泳いだときにクラゲに刺された箇所がかゆみだした僕は、母屋へ薬を探しに行く。母屋に一人で寝ていたアキラに、どうして一緒に暮らさないのと聞かれた僕は、子どもを置いて男と飲み歩く裕子を思い浮かべる。酔って帰ってきた裕子をプレハブに誘い、僕と裕子は寝た。しばりたくない、と言う裕子に、「そうなってもいい」と僕は答える。朝起きるとプレハブに裕子とアキラがいる。家庭内離婚中の別居家族。詮索好きの大家も、隣の奥さんも、公園で子どもを遊ばせている母親たちも、鳥は夜に眠り啼かないのだ、と教える世間の目などどうでもいい。そう僕は思う。疑似家族が登場するが、ここでも男は理由を求め、饒舌に語りつづける。
(河出書房新社・1991、河出文庫・2011)
以下、シネマトゥデイによる。
見どころ:
『海炭市叙景』などの原作者として知られる作家・佐藤泰志の短編集「大きなハードルと小さなハードル」所収の一編を映画化。売れない小説家と、離婚して行き場を失ったシングルマザーの共同生活を描く。佐藤原作の『そこのみにて光輝く』『オーバー・フェンス』などを手掛けてきた高田亮が脚本、『アルプススタンドのはしの方』などの城定秀夫が監督を務めた。主人公を『闇金ドッグス』シリーズなどの山田裕貴、離婚を機に彼のもとに身を寄せるシングルマザーを『雨に叫べば』などの松本まりかが演じる。
あらすじ:
若くして作家となるもその後は売れず、恋人にも去られ悶々とした日々を送る慎一(山田裕貴)。そこへ、離婚して行き場のない友人の元妻・裕子(松本まりか)が幼い息子と共に越してくる。慎一は恋人と暮らしていた家を母子に与えて自身は離れのプレハブで生活し、身勝手に他者を傷つけてきた自らの姿を投影するような小説を夜ごと執筆する。一方の裕子は息子が眠ると外出し、孤独を埋めるかのように行きずりの男たちと関係を持つ。慎一と裕子は互いに干渉しないように共同生活を送るが、二人とも前に踏み出すことができずにいた。
朝日新聞:2022年12月2日
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佐藤泰志――生の輝きを求め続けた作家
2014年2月28日初版発行
監修:福間健二
発行所:河出書房新社