中村屋サロン美術館で「鴨居玲展 人間とは何か?」を観てきました。
- 会期:2022年9月14日(水)~2022年12月4日(日)
- 主催/会場:中村屋サロン美術館
- 協力:公益財団法人 日動美術財団
鴨居玲展 人間とは何か?
鴨居玲(1928-1985)は自己の内面を鋭く抉り出し、内の燃えさかる光をカンヴァスに描く画家として人気を博しています。
金沢美術工芸専門学校(現 金沢美術工芸大学)で宮本三郎に師事した後、二紀展などに出品して制作活動を続け、パリそしてスペインへ新天地を求め旅立ちます。特にスペイン、ラ・マンチャ地方のバルデペーニャスでは、村の人々との交流を通じて多くの傑作が生みだされ、それら老人たちに己を重ねて後の作品にも大きな影響を与えました。そして「教会」に神の存在を問いかけその不条理を形象化しました。混沌を極める現在、鴨居の絵は私たちに自己を見つめる大切さを問いかけています。
本展では、「自画像」を中心に「老人たち」「教会」「婦人像」など、鴨居が心を込めて描いた油彩画、デッサン約40点を展観します。人間ひとりひとりの内面にある孤独、不安、または運命といった陰の世界、また愛に対しても正面から対峙し、‘人間とは何か?’を問い続けて57歳でこの世を去った鴨居芸術の軌跡をたどります。
今まで観た鴨居玲
笠間・日動美術館「鴨居玲展」(「NHK日曜美術館」アートシーンより)
「アトリエの一隅 1985年9月」 撮影:富山栄美子 - 展示室1
- 自画像:鴨居玲、その人
鴨居玲が本格的に「自画像」に取り組むのは、1982年頃からです。この年の2月17日、鴨居は軽い心筋梗塞で病院に運ばれました。その折に描かれた自画像の、うつろな表情からは、この出来事が鴨居に‘死’というものを身近に感じさせたであろう様子がうかがえます。
その後、鴨居がこの世を去る1985年までが、最も「自画像」が多く制作されることとなります。その表情は一貫して目が閉じられ、半開きの口で描かれています。そして、自分の死を示唆したような首吊りの図へ続いていきます。 「夜(自画像)」1947年 「顔と時計」 「自画像」1982年 「1983年2月3日」1983年 「自画像」 「自画像・首吊り」1985年 「自画像(絶筆)」1985年 -
左:「宮本三郎像」1954年 右:「手」」 - 展示室2
- 鴨居玲の芸術
鴨居は、金沢美術工芸専門学校(現 金沢美術工芸大学)在学中より二紀展に参加して初入選を果たすなど、頭角を現します。しかし、日本美術界の傾向が抽象表現に傾いてくると、己の作風を模索する中で苦悶の日々を送ることになりました。そのような中、パリ滞在やボリビア、ペルーへの放浪の旅を経て、1969年に安井賞を受賞します。その後、1971年に訪れたスペイン、ラ・マンチャ地方の小村バルデペーニャスでの生活は、鴨居に平安をもたらしました。村人たちを描いた作品群からは、鴨居の愛情が溢れています。
鴨居が最も多く取り上げたモチーフは、貧しさや寂しさを抱える人々や老人たちですが、それらの人々を通して自分自身を表現した作品もあります。人々の姿を借りることで、自己の内面を素直に表すことができたのでしょう。そのような意味では、裸婦や教会といったモチーフも鴨居自身の現れとも言えるのかもしれません。 「座裸婦」1952年 「サイコロ」1969年 「風船」 「私の村の酔っぱら(A)」1973年 「私の話を聞いてくれ」1973年 「酔候え」1976年 「裸婦」 「裸婦」1980年 「婦人像」 「廃兵(A)」1983年 「夢候よ」 - 「中村屋サロン美術館」ホームページ
- 展覧会案内│中村屋サロン美術館 (nakamuraya.co.jp)
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