ルシア・ベルリンの「すべての月、すべての年」(講談社:2022年4月20日第1刷発行)を読みました。
以下は、ルシア・ベルリンの「掃除婦のための手引き書」を読んだときに破れかぶれで書いたものです。まったく支離滅裂!
もう、これは「シャッポを脱ぐ」しかありません。なにしろこの歳になっても、絵を描くのも、文章を書くのも、まったく人並みにできないという情けなさ。よくまあ、ブログを何年も書いていられると普通なら思うんですが、そこはお得意の鈍感力、意に介しませんが・・・。
「シャッポを脱ぐ」、脱いだのは、この本、ルシア・ベルリンの「掃除婦のための手引き書」の「訳者あとがき」です。これがよく書けています。この本の書評なり、解説を書くのは、僕の能力ではもちろん手に余ります。翻訳本には通例、読者の理解のためにか、「訳者あとがき」が付いています。ということで、今回、「訳者あとがき」を読んで、いっぺんに理解した、というわけです。
そもそもこの本「掃除婦のための手引き書」、24の短篇からなっています。43篇の作品集から、岸本が24篇を選んで翻訳したものです。長い作品もあれば、わずか1ページに満たないものも混じっています。まあ、短篇集と言っていいでしょう。しかし、よく読むと、これが全体としてひとつの大きな自伝的長編小説、大河小説になっている、というわけです。ここら辺りが、すごい。
ルシア・ベルリンの小説は、ほぼすべてが彼女の実人生に材をとっている。そしてその人生がじつに紆余曲折の多いカラフルなものだったために、切り取る場所によってまったくちがう形の断面になる多面体のように、見える景色は作品ごとに大きく変わる。
鉱山町で過ごした幼少期。テキサスの祖父母の家で過ごした暗黒の少女時代。豪奢で奔放なチリのお嬢時代。4人の子供を抱えたブルーカラーのシングルマザー。アルコール依存症との戦い。ガンで死にゆく妹と過ごすメキシコの日々。
一人の人間から取ってきたとは思えないほど起伏に富んでいて、それ自体が小説のようだ。だが彼女の作品の本当の魅力は、それら人生のさまざまな場面を切り取ってくる、彼女にしか持ちえないような目と耳との鋭さにこそある。(「訳者あとがき」より)
と、まあ、ここまでが「掃除婦のための手引き書」を読んで、しどろもどろになってブログに書いたものです。なぜここまで引用するのか?今回の「すべての月、すべての年」は19の短篇。「掃除婦のための手引書」と合わせて全部で43編のすべてが読めた、というわけです。もとをただせば、底本となるA Manual for Cleaning Womenをボリュームの関係で2冊に分けで出したというわけです。
情景を最短距離で刻み付ける筆致、ときに大胆に跳躍する比喩、歌いうねるリズム、ぴしゃりと断ち切るような結句。ルシア・ベルリンという作家の魅力は今回もすみずみまであふれている。何度も読んでいるにもかかわらず、一篇読むたびに本を置いて小さくうなり、深呼吸せずにいられない。このように書く作家はほかにいないと、何度でも言う。(「訳者あとがき」より)
今回も訳者あとがきに頼ってしまったよ。僕の手に負えないから仕方がない。
読んでからブログに書かなくちゃと思いながらずるずると日が経っていたところに、朝日新聞に金原ひとみの書評が出ました。これがよく書けてる。見事です。
そうそう、本屋をぶらり回っていたら、「掃除婦のための手引き書」が早くも文庫本になって平積みされていましたよ。
著:ルシア・ベルリン(ルシア・ベルリン) Lucia Berlin
1936年アラスカ生まれ。鉱山技師だった父の仕事の関係で幼少期より北米の鉱山町を転々とし、成長期の大半をチリで過ごす。3回の結婚と離婚を経て4人の息子をシングルマザーとして育てながら、高校教師、掃除婦、電話交換手、看護師などをして働く。いっぽうでアルコール依存症に苦しむ。20代から自身の体験に根ざした小説を書きはじめ、77年に最初の作品集が発表されると、その斬新な「声」により、多くの同時代人作家に衝撃を与える。90年代に入ってサンフランシスコ郡刑務所などで創作を教えるようになり、のちにコロラド大学准教授になる。2004年逝去。レイモンド・カーヴァー、リディア・デイヴィスをはじめ多くの作家に影響を与えながらも、生前は一部にその名を知られるのみであったが、2015年、本書の底本となるA Manual for Cleaning Womenが出版されると同書はたちまちベストセラーとなり、多くの読者に驚きとともに「再発見」された。
訳:岸本 佐知子(キシモト サチコ)
翻訳家。訳書にリディア・デイヴィス『話の終わり』『ほとんど記憶のない女』、ミランダ・ジュライ『最初の悪い男』、スティーブン・ミルハウザー『エドウィン・マルハウス』、ジャネット・ウィンターソン『灯台守の話』、ジョージ・ソーンダーズ『短くて恐ろしいフィルの時代』など多数。編訳書に『変愛小説集』『楽しい夜』『居心地の悪い部屋』ほか、著書に『なんらかの事情』ほか。2007年、『ねにもつタイプ』で講談社エッセイ賞を受賞。
朝日新聞:2022年6月11日
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「掃除婦のための手引書」
ルシア・ベルリン作品集
2029年7月8日第1刷発行
著者:ルシア・ベルリン
訳者:岸本佐知子
発行所:株式会社講談社