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永田和宏の「歌に私は泣くだろう 妻・河野裕子 闘病の十年」を読んだ!

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永田和宏の「歌に私は泣くだろう 妻・河野裕子 闘病の十年」(新潮文庫:平成27年1月1日発行)を読みました。平成27年は2015年です。

 

読売新聞紹介で大反響

梯久美子さん絶賛!

平成を代表する評伝はと

問われたら、私はまず最初に、

この一冊を上げるだろう。

 

その時、夫は妻を抱きしめるしかなかった――歌人永田和宏の妻であり、戦後を代表する女流歌人・河野裕子が、突然、乳がんの宣告を受けた。闘病生活を家族で支え合い、恢復に向いつつも、妻は過剰な服薬のため精神的に不安定になってゆく。凄絶な日々に懊悩し葛藤する夫。そして、がんの再発……。発病から最期の日まで、限りある命と向き合いながら歌を詠み続けた夫婦の愛の物語。

 

病気、再発の怖れなどがなせる業ではあったが、河野の精神的な不安定、攻撃性に家族が振りまわされることになった。しかし、河野は最後まで歌を作り続けた。(「あの胸が岬のように遠かった」はじめにより)

 

手をのべてあなたとあなたに触たきに息が足りなこの世の息が 裕子

 

河野裕子の最後の一首である。死の前日に作られた。近代以降、これほどの歌を最後の一首として残した歌人はいないのではないかと私は思う。私が自分の手で、この一首を口述筆記で書き残せたことを、涙ぐましくも誇りに思う。(永田和宏)

 

目次

私はここよ吊(つ)り橋ぢやない
ああ寒いわたしの左側に居てほしい
茶を飲ませ別れ来しことわれを救える
助手席にいるのはいつも君だった
夫ならば庇(かば)つて欲しかつた医学書閉ぢて
私は妻だつたのよ触れられもせず
あの時の壊れたわたしを抱きしめて
東京に娘が生きてゐることの
いよいよ来ましたかと
一日が過ぎれば一日減つてゆく
歌は遺(のこ)り歌に私は泣くだらう
つひにはあなたひとりを数ふ

あとがき
収載歌集等一覧
解説 重松清

 

永田和宏:

1947(昭和22)年滋賀県生まれ。歌人・細胞生物学者。京都大学理学部物理学科卒業。京都大学再生医科学研究所教授などを経て、現在、京都産業大学教授。読売文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞、迢空賞などを受賞。2009年、紫綬褒章受章。河野裕子との共著に「京都うた紀行」 「家族の歌」「たとえば君」、著書に「もうすぐ夏至だ」「現代秀歌」など多数。近著に「知の体力」「置行堀」(第十五歌集。)宮中歌会始詠進歌選者。朝日歌壇選者。「塔」短歌会主宰。

 

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「あの胸が岬のように遠かった」

河野裕子の青春

発行:2022年3月25日

著者:永田和宏

発行所:株式会社新潮社

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