小田雅久仁の「残月紀」を読みました。
表紙の帯には以下のようにあります。
「迫真のディストピア小説であり、スリリングな格闘技アクションであり、切なすぎる恋愛文学であり、力強い歴史小説でもある」。あの大森望の書評である。
同じく帯には、「ダ・ヴィンチプラチナ本」では」五つ星獲得、とあります。「あらすじ」には以下のようにあります。
順風満帆な日々が、満月が裏返った瞬間に一転。同姓同名の別人と入れ替わってしまう(「そして月がふりかえる」)。枕の下に入れて眠ると悪夢を見るという、叔母の形見の風景石。試してみると、石の中の世界に迷い込んでしまい……(「月景石」)。全体主義独裁国家となった日本。感染すると強制的に完全隔離を余儀なくされる「月昂」に冒された男女の、一途な愛を描いた表題作(「残月記」)。全3編を収録。
そうです、小田雅久仁の「残月紀」は2編の短篇、「そして月がふりかえる」と「月景石」、そして1編の中編小説、表題作となる「残月記」、全3編からなっています。なかでも「残月紀」は212ページもの作品です。ともに「月」を主題にした、関連付けた作品になっています。
最初の1篇、「そして月がふりかえる」は、月によって同姓同名の他人と人生をすげ替えられた男の物語。「月景石」は、 胸に月景石という石を埋め込んだ人々の世界と、現実世界の“私”がクロスする物語。 そして月昂という忌まわしき疫病が蔓延る世界に生れ落ちた男の生涯を描く「残月記」。
表題作となる「残月記」、大森望の書評に戻れば、以下のようである。
物語の始まりは、"月昂"と呼ばれる感染症が広がる改変歴史世界の2048年。一党独裁政権が支配する日本では、すべての感染者を療養所に収容する徹底した隔離政策で月昂を抑え込んでいる。月昂者は毎月、満月の頃には超人的な体力を発揮するが、新月前後の昏冥期にはその3%が死亡する。主人公・宇野冬芽は、20代で月昂を発症するも、高校時代に剣道で全国3位に入った実力を買われ、剣闘技大会の闘士にスカウトされる。上級党員たちの前で披露される命がけの闘い。生きて30戦を終えれば、安楽な余生が約束されているというのだが......。
こんな小説、今まで見たことも聞いたこともありません。2022年本屋大賞にノミネートされていますが、まったく本屋大賞の枠からはみ出ています。この小説は、本屋大賞に入るはずのない、まったく異質な未来小説でありテーマです。偶然読み始めた小説ですが、凄い小説です。今後に期待したいと思います。
小田雅久仁:
1974年、宮城県生まれ。関西大学法学部政治学科卒業。2009年『増大派に告ぐ』で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、作家デビュー。13年、受賞後第一作の『本にだって雄と雌があります』で第3回Twitter文学賞国内編第1位。『残月記』は9年ぶりとなる待望の新刊。