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伊藤比呂美の「たどたどしく声に出して読む歎異抄」を読んだ!

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伊藤比呂美の「たどたどしく声に出して読む歎異抄」(ぷねうま舎:2012年4月10日第1刷発行)を読みました。

 

10年ほど前に、高森顕徹の「歎異抄をひらく」という本を、訳も分からずに買って、パラパラと読んで断念しました。そのときは、「歎異抄」の一節「善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや」という言葉に惹かれました。伊藤比呂美は、「ひとへに親鸞一人がためなりけり」という言葉から、そう言い切る親鸞の真意を知りたいと思って「歎異抄」を読み始めたという。

 

江戸前・不良少女の舌とリズムが、親鸞の高揚と吐息と体温とを伝える 

伊藤比呂美 

たどたどしく声に出して読む歎異抄  

2012年4月6日 四六判・160頁 

 

歎異抄・正信念仏偈・和讃・書簡の現代日本語訳。
現代を生きる詩人が、自らの語感と文体のすべてをかけて翻訳に挑戦しました。
口語体の念仏や唱名が、風にまじる口笛のように、心に沁みとおります。

江戸前・不良少女の舌とリズムが、親鸞の高揚と吐息と体温とを伝える

 

目次

  ゼロから始める歎異抄
  1 たどたどしく声に出して読む歎異抄
歎異抄 前
  2 旅
歎異抄 後
  3 旅
和讃  ひかりのうた
  4 旅
親鸞書簡 前
  5 旅
親鸞書簡 後十一 旅のつづき
  6 旅
和讃 かなしみのうた
  7 旅
恵信尼書簡
  8 旅
和讃 母や子のうた
  9 旅
正信念仏偈 〈むげんのひかり〉さま
  10 旅
和讃 うみのうた

 

伊藤比呂美:

1955年, 東京都生まれ. 詩人. 84年より熊本市在住. 97年からはカリフォルニア州を拠点としつつ, 熊本市とカリフォルニアとを往復する, 文字通り旅の生活. 作品に, 『草木の空』(78年, 第16回現代詩手帖賞受賞), 『青梅』『テリトリー論』『ラニーニャ』(99年, 第21回野間文芸新人賞), 『日本ノ霊異ナ話』『河原荒草』(2006年, 第36回高見順賞),『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』(07年, 第15回萩原朔太郎賞, 07年, 第18回紫式部文学賞), 『読み解き「般若心経」』などがある. エッセイ集に, 『おなかほっぺおしり』『良いおっぱい悪いおっぱい』『女の絶望』など。

 

以下、朝日新聞に掲載された書評です。

評者: いとうせいこう / 朝⽇新聞掲載:2012年06月17日

歎異抄、正信念仏偈、和讃、書簡を、詩人・伊藤比呂美が、その感性と文体のすべてを挙げて生きた現代の口語体に訳す。東京・下町風の語感とリズムが、親鸞の吐息や体温までも伝える。…

    ◇

鎌倉時代に唯円が書いたとされる親鸞の思想の粋、『歎異抄』等を詩人・伊藤比呂美が読み、読みあぐね、読み解いていく記録が本著である。
伊藤は「弥陀(みだ)の五劫思惟(ごこうしゆい)の願(がん)をよくよく案ずれば、ひとへに親鸞一人がためなりけり」という壮絶な、“ぎらぎらしてる”一文から旅を始める。
実際に生きていた個人としての親鸞、その具体的な身体をより切実に感じるためだろうか、著者はそこに「おれ」というルビを振る。「ひとえに親鸞(おれ)一人がためなりけり」
すると、身体という限界ある物質、厄介な重さ、他人と共有出来ない固有性は、逆に親鸞一人を離れ、著者のものとも重なってくる。
事実、著者は夫と子供が住む米国と、老いた父のいる日本を、くたくたの身体を引きずって往復し続け、その果てしない疲労や苦悩の様子を随筆として『歎異抄』や和讃(わさん)の訳の間に挟み込む。
具体的な凡夫の身体が、やはり実在した親鸞の思想にじりじりと、あるいはよろよろと近づいていくのだ。
肉感的な随筆と、温度の異なる訳文が互い違いに現れるこの形式は伊藤が過去に『読み解き「般若心経」』で提示した方法で、そこでは漢文までが入り交じっていた。
つまり、ひとつの書物に多様な文字の“共有出来ない固有性”が共存するのだが、そもそも日本の仏教説話自体がそのような傾向を持つ。
その意味では伊藤比呂美の仕事はかつて日本霊異記を訳して以来、筋が通っている。生死とは何か、日本語とはいかなるものかの核心に、“じりじりと、あるいはよろよろと近づいて”いるのである。
さて、今回の著書の大詰めは「正信偈(しょうしんげ)」の訳であり、そこで著者は阿弥陀仏をある言葉で置き換える。まさに身体性の真反対にある言葉によって、仏の果てしない救いが輝くのだが、そこに至る思考の過程を私は次の著作で是非くわしく読みたいと思う。
    ◇
ぷねうま舎・1680円/いとう・ひろみ 55年生まれ。著書に『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』など。

いとうせいこう作家・クリエーター

1961年生まれ。小説に『ノーライフキング』『想像ラジオ』(野間文芸新人賞)、エッセーに『ボタニカル・ライフ』(講談社エッセイ賞)など。近著に『「国境なき医師団」を見に行く』『今夜、笑いの数を数えましょう』『ラブという薬』。音楽活動では日本語ラップの先駆者の一人。2019年4月より書評委員再任。

 

「歎異抄をひらく」

平成20年(2008)3月3に利第1刷発行

平成23年(2011)11月21に利第31刷発行

著者:高森顕徹

発行所:1万年堂出版

 

朝日新聞:「歎異抄をひらく」新聞広告

 

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