斎藤幸平の「人新世の『資本論』」(集英社新書2020年9月22日第1刷発行、2021年9月27日第16刷発行)を読みました。
読みのが遅すぎたきらいもありますが、僕にはなかなか難しく、読むのに時間がかかりました。
たまたま僕は、昨年から今年の初めにかけて、斎藤幸平の出演したテレビ番組を二つ見ることができました。
去年の12月には、100分de名著カールマルクス「資本論」(アンコール放送)で、4回の放送で解説者を務めました。
また今年の初めには、「100分deパンデミック論」の放送で、4人の系説シャアに交じって、スラヴォイ・ジジェクの「パンデミック 1、2」を取り上げて、警告を発していました。
「新書大賞2021」受賞作!
人類の経済活動が地球を破壊する「人新世」=環境危機の時代。気候変動を放置すれば、この社会は野蛮状態に陥るだろう。それを阻止するには資本主義の際限なき利潤追求を止めなければならないが、資本主義を捨てた文明に繁栄などありうるのか。
いや、危機の解決策はある。ヒントは、著者が発掘した晩期マルクスの思想の中に眠っていた。世界的に注目を浴びる俊英が、豊かな未来社会への道筋を具体的に描きだす!
【各界が絶賛!】
■佐藤優氏(作家)
斎藤は、ピケティを超えた。これぞ、真の「21世紀の資本論」である。
■ヤマザキマリ氏(漫画家・文筆家)
経済力が振るう無慈悲な暴力に泣き寝入りをせず、未来を逞しく生きる知恵と力を養いたいのであれば、本書は間違いなく力強い支えとなる。
■白井聡氏(政治学者)
理論と実践の、この見事な結合に刮目せよ。
■坂本龍一氏(音楽家)
気候危機をとめ、生活を豊かにし、余暇を増やし、格差もなくなる、そんな社会が可能だとしたら?
■水野和夫氏(経済学者)
資本主義を終わらせれば、豊かな社会がやってくる。だが、資本主義を止めなければ、歴史が終わる。常識を破る、衝撃の名著だ。
人類の経済活動が地球に与えた影響があまりに大きいため、ノーベル化学賞受賞者のパウル・クルッツェンは、地質学的に見て、地球は新たな年代に突入したと言い、それを「人新世(ひとしんせい)」と名付けた。人間たちの活動の痕跡が、地球の表面を覆いつくした年代という意味である。
本書はマルクスの「資本論」を参照しながら、「人新世」における意味と自然の絡み合いを分析していく。150年ほど眠っていたマルクスの思想のまったく新しい面を「発掘」し、展開するつもりだ。この「人新世の『資本論』」は、気候危機の時代に、より良い社会を作り出すための想像力を解放してくれるだろう。
(「はじめに――SDGsは「大衆のアヘン」である」より)
目次
はじめに――SDGsは「大衆のアヘン」である!
第1章:気候変動と帝国的生活様式
気候変動が文明を危機に/フロンティアの消滅―市場と環境の二重の限界にぶつかる資本主義
第2章:気候ケインズ主義の限界
二酸化炭素排出と経済成長は切り離せない
第3章:資本主義システムでの脱成長を撃つ
なぜ資本主義では脱成長は不可能なのか
第4章:「人新世」のマルクス
地球を〈コモン〉として管理する/〈コモン〉を再建するためのコミュニズム/新解釈! 進歩史観を捨てた晩年のマルクス
第5章:加速主義という現実逃避
生産力至上主義が生んだ幻想/資本の「包摂」によって無力になる私たち
第6章:欠乏の資本主義、潤沢なコミュニズム
貧しさの原因は資本主義
第7章:脱成長コミュニズムが世界を救う
コロナ禍も「人新世」の産物/脱成長コミュニズムとは何か
第8章 気候正義という「梃子」
グローバル・サウスから世界へ
おわりに――歴史を終わらせないために
斎藤幸平(経済思想家)
斎藤幸平:
1987年生まれ。大阪市立大学大学院経済学研究科准教授。ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程修了。博士(哲学)。専門は経済思想、社会思想。
Karl Marx’s Ecosocialism:Capital,Nature,and the Unfinished Critique of Political Economyによって権威ある「ドイッチャー記念賞」を日本人初歴代最年少で受賞。編著に『未来への大分岐』など。