原田正純の「水俣病」(岩波新書:1972年11月22日第1刷発行、2021年3月10日第50刷改版発行)を読みました。本の帯には、読み継がれてきた定番が見やすい、読み易い、として、「改版絶対名著」と掲げています。いとうせいこうさん推薦!とあります。あまり派手な宣伝をしない岩波が、珍しいことです。
本の帯でいとうせいこうは、「その前には足尾銅山鉱毒事件があり、あとには数々の笄、原発での放射能事故、そしてコロナ禍での無策があり、すべてが水俣病につながっている。なにひとつおわっていない」と書いています。
朝日新聞の時代の栞に「水俣病 原田正純 1972年刊」が取り上げられていました。これにもいとうせいこうがコメントしています。
この本、すぐにアマゾンに注文しましたが入荷待ち状態で、11月6日入荷予定、とのこと。なんとか10月中にアマゾンから届き、読んだというわけです。が、いつもの如く、読むのに時間がかかり、やっと読み終えたというわけです。
この後、石牟礼道子関連の本を、少しずつ読もうかなと思っています。
ジョニー・デップ主演の映画「MINAMATA」も大ヒットしています。もちろんこれも観ました。
この本の内容:
公害病の中でも大規模で最も悲惨なものの一つ,水俣病.苦痛に絶叫しながら亡くなった人々や胎児性患者のことは世界的にも知られているが,有機水銀によるこの環境破壊の恐るべき全貌は,いまだに探りつくされてはいない.長年患者を診察してその実態の解明にとりくんできた一医学者の体験と反省は,貴重な教訓に満ちている.
原田正純は言う。
水俣病は、いまや世界的となり、わが国でその名を知らぬ者がいないほどである。水俣病は公害の原点とも言われている。水俣病をよりよく知り、今日なお私たちをとりまく未解決な多くの問題点を考えるうえにも、いま一度水俣病の歴史を振り返ってみなくてはならない。そのために、手さぐりで歩いてきた私自身と水俣病とのかかわり合いを語りたいと思う。そのことは、医学とは何か、と考えるうえでのささやかな材料を提供することにもなると思っている。(「はじめに」より)
目次
はじめに
Ⅰ 水俣病の発生
1 「奇病」の発見
2 環境汚染はすすんでいた
3 研究開始
Ⅱ 原因物質を追う
1 原因物質究明の困難さ
2 さまざまな学説
Ⅲ 水銀をつきとめる
1 水銀が浮かびあがる
2 チッソの対応
3 有機水銀の確認
Ⅳ 胎児性水俣病
1 脳性小児麻痺の多発?
2 認定までの長い道のり
Ⅴ 一酸化炭素中毒
1 三池炭塵爆発
2 労災補償とは
Ⅵ 新潟水俣病の発生
1 第二の水俣病ついに発生
2 新潟水俣病のもたらしたもの
Ⅶ 公害病認定から訴訟へ
1 公害病認定
2 ついに水俣病裁判が提起された
3 水俣病研究会に参加して
4 厚生省補償処理委員会の斡旋
Ⅷ 水俣病の全貌の解明にのり出す
1 認定水俣病は氷山の一角
2 通説の壁を破る困難さ
A 発生時期の問題
B 発生地区の広がり
C 水俣病の臨床症状について
3 新潟の経験に学ぶ
Ⅸ 隠れ水俣病
1 隠れ水俣病をさがして
2 審査会の壁
3 ついに一斉検診を実現する
4 水俣病の前に水俣病はなかった
Ⅹ 水俣病は終っていない
1 国際環境会議に参加して
2 水俣病裁判の中での医学
3 今後に残された問題
参考文献
あとがき
著者略歴:
原田正純(はらだ まさずみ)
1934‒2012年
1960年熊本大学医学部大学院修了
専攻―臨床脳波、中毒性神経精神障害に関する研究
著書―『水俣病は終っていない』(岩波新書)、『水俣が映す世界』(日本評論社、第16回大佛次郎賞)、『水俣・もう一つのカルテ』(新曜社、熊日文学賞)、『裁かれるのは誰か』(世織書房)、『炭坑の灯は消えても』(日本評論社)、『三池炭鉱――1963年炭じん爆発を追う』(NHK出版)
朝日新聞:2021年10月13日
「新装版 苦海浄土 わが水俣病」
講談社文庫
著者:石牟礼道子
発行:2004年7月15日
評伝「石牟礼道子 渚に立つひと」
新潮文庫
著者:米本浩二
発行:令和2年2月1日