芝健介の「ヒトラー――虚像の独裁者」(岩波新書:2021年9月17日第1刷発行)を読みました。
なななかの力作、労作です。読みごたえがあるというか、読むのに時間がかかりました。第5章までは、ナチズム運動そしてナチズム体制におけるヒトラーの言動、思想と行動、生と死の軌跡を時系列的に辿っています。
最終章、第6章ヒトラー像の変遷をめぐって、がいい。第二次世界大戦が終わって現在にいたるまで、東西二つの分離国家の成立、40年をこえる冷戦期を経てベルリンの壁崩壊、東西両国家の統合からも30年が経過しました。ヒトラー像はどのように変遷したか。悪魔説から精神病説、ヒトラー側近のそれぞれの役割とその言説、その後出版されたものなど、詳細に比較検討しています。
本のカバーが凄い。
悪魔か、凡人か――
ナチス・ドイツ研究の第一人者による決定的評伝。
浮いた力ホロコースト、死後再生産されるヒトラー現象までを視野に、最新の資料を用いて、「ヒトラー神話」を解体する。
この本の内容:
ヒトラー(一八八九─一九四五)とは何者だったのか。ナチ・ドイツを多角的に研究してきた第一人者が、最新の史資料を踏まえて「ヒトラー神話」を解き明かす。生い立ちからホロコーストへと至る時代背景から、死後の歴史修正主義や再生産される「ヒトラー現象」までを視野に入れ、現代史を総合的に捉え直す決定版評伝。
目次
はじめに
第1章 兵士ヒトラー――勲章と沈黙と
一 少年アードルフ/二 ウィーンへ/三 第一次世界大戦
第2章 弁士から党総統へ――カリスマの源泉とテロル
一 停戦と革命/二 カリスマ弁士の誕生/三 総フューラー・パルタイ統の党/四 ミュンヒェン一揆
第3章 国民的政治家への道――『わが闘争』と党の躍進
一 『わが闘争』/二 ナチ党の躍進/三 首相へ
第4章 総統兼首相として――一党独裁のなかの多頭制
一 一党独裁の完成と対ユダヤ人政策/二 政敵の粛清──「長いナイフviiiの夜」/三 再軍備と戦争への布石
第5章 「天才的将帥」から地下要塞へ――第二次世界大戦とホロコースト
一 史上最高の将帥(グレーファツ)/二 絶滅収容所の開設/三 独ソ戦の帰結/四 敗戦の足音
第6章 ヒトラー像の変遷をめぐって――生き続ける「ヒトラー」
一 戦後の混乱とニュルンベルク国際軍事裁判/二 脱魔術化の過程/三 ヒトラー研究・ホロコースト研究の本格化/四 二〇〇〇年代──新たなるまなざし
おわりに
あとがき
参考文献/図版・地図出典一覧
芝 健介(しば けんすけ):
1947年、愛媛県生まれ。東京大学法学部政治学科卒業後、同大学大学院社会学研究科博士課程(国際関係論)修了。國學院大學助教授、東京女子大学教授を歴任。
現在――東京女子大学名誉教授。専攻ドイツ現代史・ヨーロッパ近現代史。
著書――『武装 SS』(講談社)、『ヒトラーのニュルンベルク』(吉川弘文館)、『ホロコースト』(中公新書)、『ニュルンベルク裁判』(岩波書店)ほか。
訳書――N.フライ『総統国家』、M.フルブルック『二つのドイツ1945─1990』、G.アリー『ヒトラーの国民国家』(以上、岩波書店)、L.ブレンナー『ファシズム時代のシオニズム』(法政大学出版局)ほか。
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