ウディ・アレン監督の「マッチポイント」を、恵比寿ガーデンシネマで観ました。前回、恵比寿へ行ったときには、時間が合わなくて泣く泣く帰ったので、再度チャレンジして、やっと観られたということです。主演女優は、あの「真珠の耳飾りの少女」のスカーレット・ヨハンソンです。2004年12月に「真珠の耳飾りの少女」を観て、スカーレット・ヨナンソンについて、以下のように書きました。「少女の心の軌跡を繊細に演じるのは、スカーレット・ヨハンソン 。この映画でゴールデングローブ賞ドラマ部門主演女優賞ノミネートされ、アカデミー賞も目前の若き実力派女優だそうです。最初見たときは新人かと思ったほど初々しく、後で調べてみたら、どうしてどうして、なかなかな女優のようです」。そして「彼女の半開きの唇と瞳はなかなか官能的でした」とも書きました。
「マッチポイント」は、ニューヨークという街にこだわり続けてきたウディ・アレン監督が、初めてイギリスを舞台に撮ったということでも話題になりました。が、しかし、それがよかったかどうかは、疑問ですが。ストーリーは、上流階級の女性と結ばれ、豊かな生活と社会的地位を手に入れた元テニス・プレーヤーのクリス(ジョアサン・リース・メイヤーズ)が、義兄の婚約者で奔放なアメリカ人女性ノラ(スカーレット・ヨハンソン)と関係を持ったことで、思わぬ展開に巻き込まれていくという、ラブ・サスペンス、ということなんですが。「世の中は偶然で成り立っている。人生は決してコントロールできない。人生のマッチポイントは誰に出もやってくる。」まあ、よくある不倫話で、単純化すれば、既婚の男が女に結婚を迫られて、男は自分の生活を守るために殺人を犯してしまう、という話です。
女は怖いなと思ったのは、ジュリエット・ビノシュの「ダメージ」という映画以来です。それにしても、喰うに困らないイギリスの上流階級の生活というのは、凄いものがあります。貧しい家庭に育ち、成功を夢見て男はついに富豪の娘と結婚し、本人の努力もありますが、いとも簡単に地位と名誉を獲得してしまいます。そうすると、前からつき合っていた女が、足手まといになり邪魔になってしまう。言い訳をし、話を繕いながら、いよいよ窮地に陥り、ついには、女の隣人が強盗に襲われて、それに巻き込まれて殺されたように見せかけて、殺してしまいます。
この映画を観て、まず思い出したのは、1951年に公開されたアメリカ映画、ジョージ・スティーブンス監督の「陽のあたる場所」です。出演はモンゴメリー・クリフトとエリザベス・テイラーという絶世の美男美女、有名なラブシーンがありました。ストーリーは、貧しい家庭に育ち、成功を夢見る青年ジョージは、伯父の工場で必死に働いて昇進を果たし、美しい富豪の令嬢アンジェラと結婚を約束します。彼の人生は順調に見えたが、仕事先で知り合ったアリスの妊娠が発覚。彼女に結婚を迫られたジョージはアリスの殺害を計画し、彼女を湖に連れ出し、ボートから突き落とします。原作は、アメリカの自然主義作家セオドア・ドライサーの「アメリカの悲劇」。1916年に実際に起きた事件の取材をもとにして書き上げた小説で、1931年に続き、2度目の映画化されたものです。
ほとんど「陽のあたる場所」を下敷きに、状況をイギリスの富豪と成り上がりのテニスプレーヤーに置き換えただけのようにも思われます。それだけ、ありふれたストーリーといえばそれまでですが。テニスのサーブがネットに当たり、ボールが向こうに落ちるのか、こちら側に落ちるのか?「ボールがネットの上で当たって弾んで、ツイている時には向こう側へ落ちて、勝つ。ツイてない時にはこちら側に落ちて、負ける。」投げた指輪がたまたま手前に落ちて、その指輪を拾って持っていた人が殺人犯にされてしまう。捜査員の一人は判っているような顔をしていましたが、それ以降はなにも映画では示されていません。
「愛に負けるか。欲に勝つか。それでも人生は運が決める。」
それにしても、スカーレット・ヨハンソンは、官能的な唇で素晴らしい。米男性誌FHMが選ぶ毎年恒例「世界でもっともセクシーな女性100人」で1位になったのも、当然、うなずけます。それだけでなく、雨の中の野原でのラブシーンは迫真の演技、もちろん、ベッドシーンは言わずもがな、「嘘つき」と男を責めるシーンは見事なものでした。
「マッチポイント」公式ホームページ
過去の関連記事:
またまた、真珠の耳飾りの少女