児玉博の「堤清二 罪と業」(文春文庫:2021年6月10日第1刷)を読みました。
下高井戸の本屋でぶらぶらしていると、平積みされたこの本が目に入りました。久しぶりに堤清二の名前を聞きました。とはいえ、僕の興味はもう一つの名前、辻井喬の方なんですが・・・。この二つの名前を行きつ戻りつ知ることが、「堤清二 罪と業」を解き明かす鍵となります。それにしても、晩年のこのインタビューでも、弟のことを「義明君」と呼ぶ、その辺にも長い間溜まりに溜まった確執があります。
書店の案内には、以下のようにあります。
第47回大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)受賞作。
月刊「文藝春秋」の連載『堤清二の「肉声」』に大幅に加筆したもので、セゾングループの総帥だった堤清二氏が死の一年前、父・康次郎氏そして弟の義明氏との関係をじっくり振り返った一族の物語です。
清二氏が、著者の児玉さんに10時間以上も語った堤家の物語は、愛憎と確執に満ちた肉親相食む世界でした。大宅賞の選評で、選考委員の後藤正治氏は「インタビューを重ね、その足跡をたどるなかで、入り組んだ内面を宿した人物像を浮き彫りにしている。読み物として読み応えがあった」とし、奥野修司氏は、「筆力、構成力ともに群を抜いている」と評価しました。
康次郎氏は西武グループの礎を築いた実業家であると同時に、強引な手法で「ピストル堤」の異名をとり、異常な好色でも知られていました。清二氏ら七人の兄弟姉妹の母親だけで四人、そのうち二人とは入籍をしませんでした。関係を持った女性はお手伝いから看護士まで相手選ばず、清二氏の母・操さんの姉妹とも関係を持ちそれを操さんも承知していたといいます。その異常な環境で、清二氏・義明氏兄弟は静かな“狂気”を身の内に育まざるをえませんでした。
フォーブス誌の世界長者番付で世界一位に輝いた義明氏と、セゾン文化で一世を風靡した清二氏は、一転して凋落し、軌を一にするように堤家も衰退の一途を辿ります。
西武王国について書かれた本は数多くありますが、清二氏が初めて明かした一族の内幕は、堤家崩壊の歴史であると同時に、悲しい愛と怨念の物語であり、どうしようもない定めに向き合わなければならなかった堤家の人々の壮大な物語です。
目次
序章
第一章 父との約束
第二章 西武王国崩壊の予兆
第三章 母操と妹邦子 その愛と死
第四章 堤康次郎の遺訓
第五章 堕落した父
第六章 独裁者の「血脈」
第七章 清二と義明 宿命の兄弟
終章
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