これは、府中市美術館で「映えるNIPPON 江戸~昭和 名所を描く」の展覧会概要篇です。あまりにも盛りだくさんなため、詳細は後日、少しずつ追加します。
美しく映える日本の景観を、
選び、描き、伝える。
雪をいただく富士、歴史に彩られた寺社仏閣・・・
親しみやすさや懐かしさを感じさせるそれらの景色は、画家や写真家たちによって捉えられ、ポスターなどの複製メディアを通じて広められてきました。ときに既視感を抱かせる「名所風景」は、こうして私たちの意識に定着していったのかもしれません。
この展覧会では、日本各地の「名所風景」を捉えた幕末から昭和にかけての絵画や版画、印刷物を紹介します。時代の変化の中で新たに登場した景物、時を超えて受け継がれた表現、だれもが心に浮かべる日本の景色。
映える日本を巡る旅を、どうぞお楽しみください。
江戸、明治、大正、昭和 四人の広重
江戸をはじめ各地の名所を描いた絵師・歌川広重。その名は名所を描く画家の代名詞として語り継がれていきます。
開化が進み変わりゆく東京の姿を、光と闇の対比の中に描きだした「明治の広重」小林清親。空からの視点でパノラミックに各地の名所を描き一世を風靡した「大正広重」こと吉田初三郎。そして抒情的な日本の名所を世界にも届けた「昭和の広重」川瀬巴水。
今回はこの四人の広重の作品が並びます。それぞれの表現をお楽しみください。
新しい技法 受け継がれる構図
例えば日光・東照宮、あるいは隅田川の桜・・・こうした有名な景観は、古くから数多く描かれ、その場所らしさを伝えるための構図も共有されてきました。写真や油彩といった新しい技法がもたらされ、明治以降も、そういった構図は受け継がれていきます。
高橋由一の<墨水桜花輝耀の景>で画面手前を大きく横切る桜の枝は、遠景と近景の極端な対比を取り入れた歌川広重の浮世絵版画に通じる構図となっています。
時代をうつす 開化の景色
明治初頭、東京から長崎に電信船がが架設されます。五姓田義松の描いた東海道の姿には、のんびりとした旧街道のすたがと、それとは対照的な電信柱の姿が描かれています。このような新しい時代を象徴するような景観も、名所を構成する要素の一つとして描かれるようになるのです。
新しい「名所」を伝える 国立公園を描く
昭和初期、日本各地の雄大な自然景観が国立公園として選ばれました。この新たな「名所」を広く伝えたのが、名だたる画家たちによる油彩画でした。この時に画家が描いた無名の地点が、今では展望スポットとして定着したものもあるように、画家たちはその場所の魅力を伝えるスポットを選び抜いて描いたのです。
展覧会の構成は、以下の通りです。
0章 歌川広重の<名所江戸百景>
1章 新たな視線、受け継がれる表現
1-1 開化絵
1-2 西洋画法と写真
1-3 小林清親の光線画
2章 名所を描く、名所を伝える
2-1 川瀬巴水の新版画
2-2 国立公園の絵画
2-3 観光グラフィック
3章 風景へのまなざし、画家たちのまなざし
3-1 富士と和田英作
3-2 民家と向井潤吉
「府中市美術館」ホームページ
東京都府中市ホームページ (city.fuchu.tokyo.jp)
「映えるNIPPON 江戸~明治 名所を描く」
展覧会図録
発行日:令和3(2021)年5月
発行:府中市美術館
朝日新聞:2021年6月22日
江戸の街の人気スポットを描いた歌川広重の浮世絵に、近代化した街を描いた明治期の開化絵。高橋由一に代表される写実性の高い西洋画法や、小林清親や川瀬巴水の風景版画。テレビもスマートフォンもない時代、名所の姿を広めたのはこうした絵画や版画、新たに登場した写真だった。幕末~昭和の風景画を集めた今展には、同じ場所を描いた複数の作品も登場するが、構図や昼夜の違いなどからは作家の個性が感じ取れる。
(町田市立国際版画館については省略)
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