SOMPO美術館「ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ」プレス内覧会へ行ってきました。
「ランス美術館コレクション
風景画のはじまり コローから印象派へ」
プレス内覧会実施要項
日時:2021年6月24日(木) 14:00~16:30
入場時間:第1回 14:00~
第2回 14:30~
第3回 15:00~
第4回 15:30~
入れ替え制ではないが、1時間程度の鑑賞。
ギャラリートークは、感染防止の観点から実施せず。
僕は、第2回14:30~に参加しました。
今回の展覧会の特徴は、以下の通りです。
その1 ランス美術館の風景画コレクションが来日
ランス美術館は、19世紀絵画のなかでもとりわけ風景画コレクションが充実しています。特にカミーユ・コローの作品は、フランス国内ではルーヴル美術館に次ぐ規模を誇ります。
その2 フランスにおける近代風景画の成立過程を余すことなく展観
フランス近代絵画の成立過程を、19世紀の主要画家の作品を通じてたどります。関連する資料や版画もあわせて展示します。
その3 19世紀フランス絵画の巨匠たちが一堂に
近代風景画の先駆者ミシャロンやベルダンにはじまり、コロー、クールベ、バルビゾン派、ブーダン、そして印象派のモネ、ルノワール、ピサロら、19世紀フランス絵画の巨匠たちが勢揃いします。
「ランス美術館コレクション
風景画のはじまり コローから印象派へ」
コローやクールベ、バルビゾン派から印象派まで、フランスの近代風景画をたどる展覧会です。フランス、シャンパーニュ地方にあるランス美術館は、フランス国内ではルーヴル美術館に次いでコロー作品を多く所蔵するなど、19世紀の風景画が充実しています。本展では、このランス美術館のコレクションから選りすぐりの名品を通じ、印象派でひとつの頂点に達するフランス近代風景画の展開をたどります。
19世紀初頭に成立した「風景画」は、フランス革命と産業革命を経て近代化をむかえたフランスにおいて、鉄道網の発達、チューブ式絵具の発明、また新興ブルジョワジーの台頭などを背景に、さらなる展開をとげました。戸外制作を積極的に行った画家たちの眼差しを通してとらえられた各地の自然は、生き生きと、実に様々に表現されていきます。本展では、油彩、版画など約80点を通じ、ミシャロン、ベルタン、コロー、クールベ、バルビゾン派、ブーダン、そしてルノワール、モネ、ピサロら19世紀の巨匠たちによる風景画の歴史を展観します。
展覧会の構成は、以下の通りです。
第1章 コローと19世紀風景画の先駆者たち
第2章 バルビゾン派
第3章 画家=版画家の誕生
第4章 ウジェーヌ・ブーダン
第5章 印象派の展開
第1章 コローと19世紀風景画の先駆者たち
フランスにおいて「風景」が絵画の主題として認められるには、18世紀末まで待たなくてはなりません。芸術の崇高化を目的とした美術アカデミーでは、高い教養を必要とするギリシャ・ローマ神話や聖書の物語、あるいは神や人間の営みを描いた「歴史画」が、絵画の分野では最も高尚なものと考えられていたからです。しかし18世紀末から19世紀初頭にかけて、歴史画の背景として描かれていた風景に注目が集まります。この動きは革命を中心とした社会の変化、新興ブルジョアジーの台頭、ロマン主義や写実主義等の芸術分野における自然への関心、産業革命と都市化による田園風景への憧れなど、その当時生まれた新しい価値観と深く関わっていると言えます。こうして1817年、美術アカデミーに「歴史風景画部門」が新設され、ジョルジュ・ミシェル、アシル=エトナ・ミシャロン、ジャン=ヴィキトール・ベルタンら風景画家が活躍します。彼らは戸外で風景を観察し習作やスケッチを制作、それらをもとにアトリエで最終的な「風景画」を完成させました。
第2章 バルビゾン派
1820年代から30年代にかけて、パリから約60キロメートル南東に位置するフォンテーヌブローの森に、多くの画家が集まりました。彼らの目的はフォンテーヌブローの森の自然を直接観察し、風景画として描くことでした。画家たちは隣接する村バルビゾンの滞在、あるいは定住してアトリエを構え風景画を制作、彼らはこの村の名にちなみ、「バルビゾン派」と呼ばれるようになりました。バルビゾン派の画家の多くは、それまでの風景画家同様、戸外での制作はスケッチや習作にとどめ、サロンに出品するような最終的な大作はアトリエで完成させていました。しかし自然を客観的に見つめ、物語性を排除した風景画を制作する姿勢は、1860年代、同じくフォンテーヌブローの森に集い戸外制作を試みた画家たち、クロード・モネ、ピエール=オーギュスト・ルノワール、アルフレッド・シスレーら、後に印象派と呼ばれる画家たちへ受け継がれていきました。
第3章 画家=版画家の誕生
写真の技術が広く普及し向上するまで、絵画の複製には版画の技法が用いられていました。18世紀以前、こうした複製版画は画家の原画を元に専門の彫り師が版を作成していましたが、19世紀にはいると画家自ら版を作成するようになり、カミーユ・コローやバルビゾン派の画家たちも版画を自ら作成しています。彼らが好んで用いたのが、線が彫りやすく自由な描線表現が可能なエッチング(腐食銅版画)と、自然光の微妙な明暗表現に適したクリシェ=ヴェール(ガラス版印刷)でした。こうして作成された画家自身による複製版画やオリジナル版画は、新聞や雑誌などの印刷物を介して広まり、風景画の普及と発展に貢献しました。
第4章 ウジェーヌ・ブーダン
ウジェーヌ・ブーダンは、フランス北西部ノルマンディー地方にあるオンフルールに生まれ、近郊の港町ル・アーヴルで幼少期を過ごし、コンスタン・トロワイヨンやジャン=フランソワ・ミレー(1814-1875)など、先代の風景画に触れるなかで画家となることを目指しました。パリで修業を終えた後は、ノルマンディー沿岸を中心に、船や海景を描くため戸外制作を積極的に行い、刻々と変化する光や空の表情をカンヴァスにとどめようとします。変化に富む空模様を捉えたその作品を評価したカミーユ・コローは、ブーダンを「空の王者」と呼びました。また「雲の繊細さに到達すること」を目指し戸外制作を重んじたブーダンの態度に感化された青年時代のクロード・モネは、やがて印象派の中心を担うようになります。ブーダンの制作態度や自然へのまなざしは、バルビゾン派と印象派の橋渡しとなりました。
第5章 印象派の展開
19世紀にも依然として存在していたアカデミーの伝統的な規範において、「風景画」は絵画ジャンルのヒエラルキーのなかで下位にありました。そうしたなか、カミーユ・コローやバルビゾン派、ウジェーヌ・ブーダンに倣って積極的に戸外制作を行ったクロード・モネ、ピエール=オーギュスト・ルノワール、カミーユ・ピサロら若い世代の画家たちは、自らの眼を通じて捉えた風景を生き生きと描き出していきます。近代化を遂げたパリの都市景観に加え、近郊のフォンテーヌブローの森やノルマンディー沿岸各地の風景が、彼らの画題となりました。彼らの絵には、筆触分割による明るい色彩と大胆にも残された筆跡を特徴とします。しばしば「未完成」だと非難され、サロン落選を繰り返した彼らですが、1874年、自由な作品発表の場を求めてグループ展を開催します。彼らの革新的な表現は、後に「印象派」と呼ばれ、近代絵画の歴史に大きな転換をもたらすことになるのです。
収蔵品コーナー
注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
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