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Channel: とんとん・にっき
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日埜直彦の「日本近現代建築の歴史」を読んだ!

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カバー写真
国立代々木競技場(丹下健三設計、1964年)

 

つい先日、丹下健三の「代々木競技場」が重文指定へ、というニュースが飛び込んできました。「意匠と技術とに秀でた、戦後建築の”金字塔”として評価」とあります。文化審議会は代々木競技場の他に、前川国男設計の木村産業研究所などの指定も求めています。

代々木競技場「最年少」重文に!

 

日埜直彦の「日本近現代建築の歴史」(講談社選書メチエ:2021年3月9日第1刷発行)を読みました。著者は、本書はあくまで一般書であり、一般の読者向けに書いたと述べています。400ページほどの厚い本です。過去の建築史家の仕事に負っていることはもちろんですが、なかなかの労作です。

 

明治期から戦争を経て高度経済成長期に至る「国家のための建築」の100年。

そして、その特異な役割から解放された建築が茫漠とした状況を生み出した、この50年。

私たちの現在地を見定め、未来を展望するために――専門的になりすぎず、単なる建築物の羅列でもないコンパクトな建築の歴史。

それぞれの時代に何が求められ、何が考えられたのか、その背景には何があったのかを鮮やかに描きだす。

批評家としても知られる建築家による明快にして本格的な概説書!

 

本書は、明治維新から現在に至る日本の建築史を一筆書きで描き出す試みである。日本の建築史については、これまで幾多の著作が書かれてきたが、1970年までで終わるものがほとんどで、その後の時代を包含するものはない。バブル経済に沸き立った1980年代を経て、長い不景気の時代を迎えた日本は大きな変化を受けている。ならば、21世紀の今、本当に必要なのは、この150年の歴史を通覧することにほかならない。

本書は全二部で構成される。第一部では、従来の建築史が扱ってきた明治維新から1970年代までの時期を取り上げる。そこでは、「国家のための建築」という特殊な役割を負わされる中で、明治期に導入された西洋の建築様式との格闘を続けながら、大正期、戦時期、そして戦後の復興から高度経済成長期までの激動の歴史が描き出される。続く第二部は、その「国家のための建築」という役割から解放された建築が、いかに拡散し、現在見られるような複雑な様相を呈するに至ったのかを見る。
自宅にいても、街に出ても、常に私たちは建築に囲まれている。にもかかわらず、建築について、その歴史について、手軽に基本的な知識を得られる書籍がない、というのは不思議なことである。本書は、そんな状況に終止符を打つべく、専門的な知識を必要とせず、ただ歴史的な建築物を羅列するのではなく、それぞれの時代に何が求められ、何が考えられたのか、その背景には何があったのかを明快に描くことを主眼としている。
本書を読めば、日本の建築について知悉できるばかりか、建築とは何か、そして建築物とともに生きるとはどういうことなのか、という重要な問題について明確なイメージをもつことができるだろう。
建築家として活躍するだけでなく、建築批評でも定評ある地位を確立してきた著者が手がけた壮大なドラマ、ついに完成。

目次
第一部 国家的段階
第一章 明治維新と体系的な西洋式建築の導入

第二章 非体系的な西洋式建築導入

第三章 国家と建築家

第四章 明治期における西洋式建築受容の到達点

第五章 直訳的受容から日本固有の建築へ

第六章 近代化の進行と下からの近代化の立ち上がり

第七章 近代建築の受容と建築家の指向の分岐

第八章 総動員体制とテクノクラシー

第九章 戦災復興と近代建築の隆盛

第一〇章 建築生産の産業化と建築家のマイノリティ化

第一一章 国家的段階の終わり

第二部 ポスト国家的段階
第一章 ポスト国家的段階の初期設定

第二章 発散的な多様化と分断の露呈

第三章 新世代の建築家のリアリティと磯崎新

第四章 定着した分断とそれをまたぐもの

第五章 バブルの時代

第六章 一九九◯年代以降の展開と日本人建築家の国際的な活躍

第七章 ポスト国家的段階の中間決算

 

日埜直彦:

1971年、茨城県生まれ。建築家。大阪大学工学部建築工学科卒業。建築設計事務所勤務を経て、2002年、日埜建築設計事務所設立。

主な著書に、「白熱論議 これからの日本に都市計画は必要ですか」(共著、学芸出版社)、「磯崎新Interviews」(共著、LIXIL出版)など。


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