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静嘉堂文庫美術館で「旅立ちの美術 Departure in arts」(後期)を観た!

静嘉堂文庫美術館からのお知らせ

当館は下記の通り、「旅立ちの美術」展 後期展示を開催いたします。
【会期】6月1日(火)-6月13日(日) 会期中無休
【開館時間】 9:30-17:00(入場は16:30まで)

 

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「旅立ちの美術”Departure”in Arts」チラシ

 

前期を観に行ったのは、4月23日のことでした。しかしこの直後に全面休館に入りました。会期は少し延びましたが、やっと6月1日に再開、ホントにホント、世田谷岡本では、今回が最後の展覧会です。

静嘉堂文庫美術館で「旅立ちの美術”Departure”in Arts」(前期)を観た!

 

美術館への長いアプローチですが、最後なのでじっくり味わって登りました。

静嘉堂への入り口です。

 

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図録の裏表紙です。いよいよ美術館の旅立ちですね。

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静嘉堂文庫美術館で「旅立ちの美術”Departure”in Arts」(後期)を観てきました。

 

本展3つのポイント
1 静嘉堂所蔵の国宝7点すべてが集結!
前期(4/10~5/9)は、当館が所蔵する《曜変天目(ようへんてんもく)》、《禅機図断簡(ぜんきずだんかん) 智常禅師図(ちじょうぜんじず)》など国宝7点を一挙に公開します。これは平成10年(1998)の「静嘉堂・国宝展」以来23年ぶり、しかも展示室に一堂に会するのは初めてのことです。世田谷岡本での最初で最後の機会、お見逃しなく!
※後期は重要文化財《聖徳太子絵伝》を修理後、初公開いたします。

2 静嘉堂の名品に隠された逸話の数々!
岩﨑彌之助、岩﨑小彌太の父子によって設立された当館。集められた名品には様々な逸話が残されています。作品が伝えられた歴史、あるいは名品を手放す者、受け継ぐ者それぞれの思いなど、美術品の表面を見るだけでは分からない、ウラ側のお話を紹介します。

3 世田谷のギャラリーはこれが見納め!
来たる2022年、創設130周年・美術館開館30周年を迎える静嘉堂は、美術館展示ギャラリーを丸の内に移転します。丸の内は、静嘉堂文庫創設者・彌之助が美術館建設を夢みた場所です。本展は移転前、世田谷岡本での最後の展覧会となります。

 

展覧会の構成は、以下の通りです。

第1章 旅立ち―出会いと別れの物語

第2章 理想郷へ―神仙世界と桃源郷

第3章 名器の旅路―伝来の物語

第4章 旅する静嘉堂―静嘉堂のあゆんだ130年

 

五世大木平蔵

木彫彩色御所人形のうち「輿行列」

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第1章 旅立ち―出会いと別れの物語

 

「了庵清欲墨蹟 与無夢一清偈」

元時代・至元6年(1340)

了庵清欲(1288~1363)は中国・元時代の高僧。日本人僧・無夢一清

(1294~1368)は現に30年も滞在し、多くの師友と交流、禅の道を希求し墨蹟を求めてきた。現存9通の墨蹟のうち本作は最後の無夢宛の墨蹟。このころ既に無夢は墨蹟を頼まなくなっていたが、本作は「無夢」という名に誘発され、名だたる禅匠が与えた偈を見て、了庵清欲も思わず腕が鳴り揮毫したものだという。

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重要文化財「西行物語」

鎌倉時代(14世紀)写

西行(1118~90)は平安時代末期から鎌倉時代の僧であるが、特に歌人として有名な人物。はじめ、鳥羽院に北面の武士として仕えたが出家し、伊勢に参拝し、二見浦に草庵を結んだのち、東国に向かって諸国を行脚し歌を詠んだ。「西行物語」は歌を多数交えた西行の一代記で鎌倉時代に成立、絵巻形式も存在する。西行の人生は”旅の人生”の典型とされ、その生き方は後世の隠遁者たちの憧れの的となった。

本書は現存する「西行物語」の最古の書写本といわれる。大般若経巻百八十九の残巻の紙背を四半切して帖装とした珍しい作りである。本文は流布本に比して内容が簡略で、文字の出入異同が多数ある。青木信寅旧蔵書。

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遠坂文雍筆「文王猟渭陽図」史紀

江戸時代・嘉永3年(1850)

紀元前11、12世紀の中国・周王朝の文王が猟をしていると、偶然、渭水のほとりで釣りをする呂尚と出会った。文王は彼こそ祖父の太公が待ち望んでいた賢人・太公望であるとし、城へ連れ帰り師と仰いだという。『史紀』巻三歳十二「斉大公世家第二」のこの故事を堂々たる大幅の青緑山水画法で描く。主山が聳え、山の左側には川(渭水)が流れ、右側に山道が続く。山道を登り隊列の先頭、山の中腹の川が開けたところで、拱手し立っているのが文王、一人で釣りをしているのが太公望である。時空を超えた出会いの物語の表現として青緑山水画法が選ばれたのだろう。

遠坂文雍(1783~1852)は谷文晁派の絵師。画中に年紀はないが、本作の外題に「文王狩渭陽図 嘉永3年庚戌秋八月 文雍造」と自題があり、制作年が判明するほか、表具も当初のものと推測される。

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第2章 理想郷へ―神仙世界と桃源郷

 

川端玉章筆「桃李園・独楽園図屏風」

明治28年(1895)

円山四条派の流れを汲む画家・川端玉章(1842~1913)が明治28年(1895)、京都で開催された第四回内国勧業博覧会に出品した屏風で、岩崎彌之助が制作支援したもの。右隻「桃李園図」は、中国唐時代の詩人・李白「春夜宴桃李士序」に着想したもの。春の宵、月光の下、桃やスモモのピンクや白の花が酒と詩を楽しみ競う李白とその従兄弟たちを描く。左隻「独楽園図」は、北宋時代の宰相・司馬光(1019~86)の「独楽園記」より、都会の喧騒を離れた場所で、独り読書を楽しむ司馬光を描いたもの。竹林や、様々な草花が美しく植栽された庭園や畑、そこで仕事をする人々に囲まれた文人士大夫の姿である。共に現実世界の束縛から逃れ、精神の自由を得るべく旅立ち辿り着いたユートピアを描く。

上:右隻 下:左隻

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第3章 名器の旅路―伝来の物語

 

重要文化財「聖徳太子絵伝」

鎌倉時代(14世紀)

聖徳太子は鎌倉仏教が隆盛する中、日本のブッダとして尊崇された。とりわけ親鸞(1173~1262)が私淑し、浄土真宗では聖徳太子奉賛がなされた。本作は『聖徳太子伝略』に基づき、太子の事績を四幅に描く。箱書の墨書「三州岡崎菅尾 満性寺」より、岩崎家に入る前は浄土真宗寺院・愛知県岡崎市菅尾の田生山満性寺の寺宝であった。

第一幅には前世および誕生から二歳で合掌、南無仏を唱うなどが画面上部に描かれる。画面下部に十四歳で物部守屋等、堂塔・仏教の破壊、下部左端に十五歳で用明天皇を拝する場面が描かれる。第二幅には下部に十六歳、物部守屋合戦が、上 部に百済より仏舎利・工人の渡来、四天王寺建立の場面。第三幅上部には、左より薨去後の諸皇子の昇天、二十七歳甲斐の黒駒に乗り富士登頂、四十九歳天に赤気現る場面、下部には三十五歳勝鬘経を推古天皇の御前で講讃すると化仏や散華が舞い降りた場面。第四幅には千人出家の他、下部右に薨去、上部に葬列の場面が描かれる。

なお、本作は法隆寺嘉原本と図録に共通点がみられ、南都絵所との関係が想定される。また本作の複数の模本が確認されている。

平成27~30年度に解体修理がなされ、修理後初公開となる。

上:第二幅、第一幅  下:第四幅、第三幅

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「十二霊獣図巻」

室町時代(16世紀)

吉祥的な十二種の霊獣を一紙に一首ずつ描き、傍らに名称と解説が墨書される。いずれも中国由来の空想上のもので、白沢、三角獣、兕、酌犬、青熊、角獣、猙、挑抜、壟蛭、天馬、げん、駮の十二種が色鮮やかに描かれる。これらの図様や解説は、全て中国で出版された百科事典的書物「三才図会」(明・王圻撰のうち「鳥獣四、獣類」)に取材したとみられる。

本作には元禄16年(1703)、良忠なる人物の跋が付されている。まず、前君主が秘蔵していた本図を良忠の父が賜り、悪鬼、悪獣を払う効果があるので子供の居室の屏風に貼るが、経年で損傷、僧・鶴洲(住吉派の画家、広夏)に修理を依頼、さらに泉涌寺八十八世整峰元褌充に「霊獣図」の題を賜り巻子にしたという。おそらくこの状態のまま岩崎家に入り、平成29~30年度、解体修理がなされた。修理後初公開となる。

跋 良忠筆          題字 整峰元充筆

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国宝「倭漢朗詠抄 太田切」

平安時代(11世紀)

藤原公任(166~1041)の撰による五百八十八首の漢詩句と二百十六首の和歌からなる詩歌集「和漢朗詠集」を、当時、大陸から舶載された華麗な唐紙に、金銀泥による大和絵風の下絵を加え、漢詩と和歌を対照的な書風で書写した巻子の一部。仮名の大胆かつ軽快な書風や漢字の温和な行書体、唐紙の装飾が見所である。「大田切」二巻のうち、上軸は『和漢朗詠集』下巻の冒頭「風雲晴暁…」に始まり「酒」までを収録し、下軸は同じく下巻の「交友」から巻末の「・・・恋無常白」を収める。もとは一巻の巻子装と考えられるが、後に切り分けられた。「大田切」という通称は、上軸巻末に古筆了仲によって記された跋文を根拠に、寛政年間(1789~1801)に京都所司代をつとめた掛川藩主太田資愛(1739~

1805)が旧蔵したと考えられることに由来する。明治時代になり、上軸は田中光顕(1843~1939)が所有し、下軸は帝室技芸員でもあった図案家・岸光景(1840~1922)の秘蔵していたものを、彌之助がそれぞれ入手したといわれる。

上軸(下軸は省略)

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重要文化財、尾形光琳「住之江蒔絵硯箱」

江戸時代(18世紀)

蓋の甲が高く盛り上がる斬新な器型の硯箱。黒い岸に打ち寄せる黄金の波の意匠で全体を包んでおり、波は平蒔絵、岸辺の岩礁は鉛板で表し、銀板を切り抜いた文字を配している。この文字は『古今和歌集』の藤原敏行の恋歌「住の江の岸によるさへや夢の通い路人目よくらむ」を表したもので、岸と浪の二字はなく、絵柄を読ませる「歌絵」の手法が使われている。作者の尾形光琳(1658~1716)自ら「鷹峯大虚庵住物 光悦造以写之」と内箱蓋裏に記しており、本阿弥光悦(1558~1637)の硯箱の手法に倣いつつ、独自の表現に発展させたもので、光琳蒔絵の頂点を示す作品の一つである。

本作は、明治三十六年の平瀬家売立に出品され、五千三百十円で岩崎彌之助が購入した。外箱蓋裏には露香の手と思しき流麗な筆致で「すみのえすすりはこ     光琳作」、蓋裏には「集散不期願貽同好」「同學斉鑒」「平瀬氏家蔵記」の三つの主因が捺されている。

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国宝「曜変天目」建窯

南宋時代(12~13世紀)

「天目」は宋代の喫茶法・点茶法のために作られた喫茶専用の碗を指す日本での名称。曜変天目は、黒釉の掛かった碗の内面に浮かぶ大小の斑文の周囲に、青色や虹色に輝く光彩が現われたものをいう。完全な形のものは日本に現存する三点のみ。近年では窯変をはじめとする建窯の天目は中国で点茶法が廃れた十三世紀以降、骨董品として遣明使などにより日本にもたらされたとする説がある。本碗は光彩が鮮やかで、端正な姿や精緻な高台削りなど緊張感がみなぎっている。江戸幕府三代将軍徳川家光から乳母の春日局に下賜されたものといわれ、その後淀藩主稲葉家に伝わったため「稲葉天目」と呼ばれている。大正7年(1918)、稲葉家の売立で当時の史上最高価格十六万七千円の値をつけて姻戚で横浜の実業家・小野家に渡り、昭和9年(1934)に小彌太の所有となった。しかし小彌太は「名器は私に用うべからず」として、生前に使用することは一度もなったという。 

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第4章 旅する静嘉堂―静嘉堂のあゆんだ130年

 

岩崎家駿河台邸 静嘉堂文庫の創設

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岩崎家深川別邸 岩崎家コレクションの展示 美術館の原点

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岩崎家玉川霊廟と静嘉堂文庫(世田谷区岡本)

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静嘉堂文庫

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静嘉堂文庫美術館 小彌太の念願、美術館開館

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明治生命館 静嘉堂文庫美術館、丸の内へ

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「旅立ちの美術”Departure”in Arts」

静嘉堂は令和4年(2022)、美術館展示ギャラリーを丸の内の明治生命館(1934年竣工、重要文化財)内に移転します。本展は世田谷岡本で開催する最後の展覧会となります。静嘉堂は、明治25年(1892)岩崎彌之助の神田駿河台邸にこける文庫創設以来、同44年(1911)に高輪、そして大正13年(1924)に現在の世田谷へ 拠点を移し、昭和52年(1977)より所蔵する美術品等の一般公開を行ってまいりました。本展では「旅立ち」をテーマに、日本・東洋における旅とそれに伴う出会いと別れ、そして旅立つ人びとが目指した理想の地のイメージを探ります。また現在静嘉堂が収蔵する名品の伝来にまつわるエピソードを紹介するとともに、静嘉堂130年のあゆみと美術館の30年を振り返ります。

 

「静嘉堂文庫美術館」ホームページ

静嘉堂文庫美術館 (seikado.or.jp)

 

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朝日新聞:2021年5月25日

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