リチャード・エア監督・脚本「アイリス」を観ました。去年の10月25日(金)11時45分からNHK・BSプレミアムで放映されたものを録画してあったので、再び観てみました。たぶん、前に2度ほど観ていた作品です。テレビでは1時間32分と表示されていて、比較的短い作品です。イギリスの女流作家アイリスと文芸評論家ジョン・ベイリー夫婦。夫ジョンの原作「アイリスとの別れ」に基づく実話です。アルツハイマーに冒された妻と、献身的に妻を支える夫の物語ですが、若い頃、大学時代の知り合った頃の物語と、老後の二人を、映画では交互に描いています。これは典型的なラブ・ストーリー、かどうかは別にして、主演のアイリスをジュディ・デンチとケイト・ウインスレットが演じているのが、この映画の見所です。
ジュディ・デンチは、言うまでもなくイギリス映画界の大御所です。押しも押されぬ大女優です。たくさんの名作に主演しています。最近では、「あるスキャンダルの覚え書き」(2006年)を観ました。なにしろ今までにアカデミー賞は6度もノミネートされていて、この作品でも第79回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされたようです。「ラヴェンダーの咲く庭で」も観ましたね。現在、「あなたを抱きしめる日まで」が公開されています。
一方、ケイト・ウィンスレットですが、僕のなかでは「愛を読むひと」です。ベルンハルト・シュリンクの小説「朗読者」を映画化した作品です。もともとはニコール・キッドマンが主役を演じる予定でしたが、ニコールが妊娠したので、ケイトにおはちが回ってきて、めでたく第81回アカデミー賞で主演女優賞を受賞しました。 おっと、忘れちゃいけないのが、ディカプリオと競演したあの「タイタニックです。最近では「おとなのけんか」(2011年)というコメディ的な作品まで幅広く演じています。
1950年代、若き日のアイリス(ケイト・ウィンスレット)とジョン(ヒュー・ボナヴィル)はオックスフォード大学で出会います。恋愛経験豊富なアイリスは、モーリスら複数の男性と同時に関係を持っていました。ジョンは、彼女が他の男とベッドにいる姿も眼にしますが、それでも彼女を受け入れます。アイリスは、彼女に一目惚れしたジョンの純粋さに惹かれます。やがて二人は結婚します。その後のアイリスは次々と小説を発表し、売れっ子作家として文学界の寵児となります。
そして現在。老人となったアイリス(ジュディ・デンチ)とジョン(ジム・ブロードベント)の愛は、穏やかに深まっていいます。そんなある日、アイリスは同じ言葉を繰り返したり言葉につまることで、脳に異変が起きていることに気付く。精密検査の結果、現代の医療では治すことの出来ないアルツハイマー病と診断されます。どんどん物忘れがひどくなっていくアイリスに、混乱しながらも心温かく接するジョン。だが彼一人の看護は限界に達し、ジョンは彼女を施設に入れる決意をします。やがてアイリスは、静かに息を引き取るのでした。
まず始まりは、水中で戯れる若いふたりが、そのまま年老いた二人に変わる映像で、永続的な二人の愛を物語っています。ケイト・ウィンスレットの水浴は、もちろん若さがはち切れそうで見事ですが、ジュディ・デンチの水浴は、ここだけでしか観られない見ものです。二人が自転車に乗って森の中の坂道を走るシーンも美しく、「アイリス、待ってくれよ」というジョンに、「私にしっかりついてきて」とアイリスは言います。このふたつの過去のシーンを繰り返し挿入することで、二人が幸せだったことがよくわかります。
以下、とりあえず「シネマトゥデイ」より引用しておきます。
チェック:実在した作家、アイリス・マードックの華やかな若き日と、晩年アルツハイマーに冒されてからの夫の献身的な愛を豪華キャストで描く真実のラヴ・ストーリー。本作で主演のアイリスをジュディ・デンチとケイト・ウインスレットが演じ、アカデミー賞主演女優賞を始め数々の賞にノミネートされた。アイリスの夫で作家のジョン・ベイリーを演じたジム・ブロードベントは本作で見事アカデミー賞助演男優賞を獲得。監督は脚本も担当したイギリス演劇界の重鎮、リチャード・エア。若き日の美しく眩しい日々と、晩年の病気と闘う懸命な姿を交互に観せる手法は、重く悲惨な印象を感じさせず見事な演出だ。
ストーリー:アイリス・マードック(ジュディ・デンチ)は、母校のオックスフォード大学で「精神の自由こそ何よりも大切な宝物」だと講演をしていた。夫のジョン・ベイリー(ジム・ブロードベント)は誇らし気にその姿を見つめる。ある日、テレビでインタヴューを受けていたアイリスは自分の話してたことを忘れ、だまりこんでしまう……。