江戸東京博物館で開催された「大江戸と洛中~アジアのなかの都市景観~」ブロガー特別内覧会に行ってきました。江戸東京博物館は開館20周年です。20周年記念と冠をつけた展覧会は今回が最後です。
開催日時:2014年3月26日(水)18:00~20:00
場所:江戸東京博物館1階展示室
東京都墨田区横網町1-4-1
スケジュール:
18:00 受付開始
18:30~ 第1回フロアレクチャー 担当学芸員による解説
19:00~ 第2回フロアレクチャー 担当学芸員による解説
江戸東京博物館 開館20周年記念特別展
「大江戸と洛中~アジアのなかの都市景観~」
「『周礼』考工記 の都市構造」
匠人営国、方九里、旁三門、国中九経九緯、経涂九軌、左祖右社、面朝後市、市朝一夫
・都城は一辺が九里の方形であること。
・南北九条、東西九坊の街路が走り、その幅が車の轍の九倍であること。
・中央に宮室を置く。
・その左右に国家祭祀の中枢を担う場である「宗廟」と「社稷」を配置。
*宗廟(そうびょう):一族が先祖に対する祭祀を行う廟所。
*社稷(しゃしょく):社(土地神を祭る祭壇)と稷(物の神を祭る祭壇)の場。
・前面に役所、背面に市を置く。
・役所と市の長さは一夫(一○○步)。
「アジアの都市を見る視点」
①中心の宮殿
・平入り東西軸の中心建物
・前面に前庭
・周囲を回廊等で方形に区画
②宮城の周囲に広がる都市域を、方形もしくは地形に合わせて、城壁で囲い込む。
③都市内に宗廟と社稷が置かれる。
*徳川家霊廟と紅葉山東照宮をみる。
「展覧会の視点」
・京都はアジアの伝統に立脚した都市。
・江戸は影響を受けつつも列島独自の変遷を経た都市。
・この江戸の都市づくりが、同時代の列島各所に広まっていた。
展覧会の構成は、以下の通りです。
プロローグ
第1章 世界の都市
第2章 洛中への系譜~都市の中心と周縁~
1 東アジアの都市
2 御所と洛中
第3章将軍の都市~霊廟と東照宮~
1 江戸と江戸城
2 徳川秀忠
3 廟所
4 東照宮
5 武家の都市
エピローグ~都市図屏風~
プロローグ
江戸時代、列島各地に地域の中心となる都市が成立しました。多くの都市は石垣や水堀で固められた城館を中心として、城下町は街道で結ばれ、城館と街が結びついていました。数多く建設された都市のなかでも京都と江戸はとりわけ異なり、かつ大きな都市でした。プロローグでは江戸時代の列島の都市を概観します。
第1章 世界の都市
江戸時代は世界の都市をどのように意識していたのでしょうか。日本で制作された世界の様子を描いた絵画として、屏風に仕立てられた絵画などでその認識を知ることができます。また、当時に制作された日本列島を描いた地図は、日本が世界からどのように認識されていたかも示しています。絵画作品には江戸時代の日本や世界の都市の姿があらわされています。第1章では、都市について海外からもたらされた知識、また海外へ発信した情報を展示します。
第2章 洛中への系譜~都市の中心と周縁~
アジアの都市は中国の都市づくりの影響を受けています。例えば、北京やソウルです。日本では平城京や平安京が著名です。碁盤の目の京都は明らかにその系譜をひいています。その歴史的な経緯から、江戸時代においても京都は国内の他の都市と趣が異なっていました。中心には回廊で囲まれた広場と建物側面の直線部分を正面とした平入りの宮殿が建てられました。そして宮殿の周囲には条坊とよばれる縦横に道が廻らされました。宮殿と条坊の組み合わせは、アジアの各都市でも、いつの時代にも見ることができた共通事項です。展示作品を通して、京都はアジアの都市づくりが直接に影響を与えた都市であることを確認していきます。
1 東アジアの都市
2 御所と洛中
第3章将軍の都市~霊廟と東照宮~
大都市江戸を考える上で、徳川秀忠そして家光が行った拡張工事は大きな画期でした。都市の中心には堀や石垣を普請し、御殿や天守を建てました。武家による都市づくりの特徴です。しかし、都市江戸にもアジアの都市に共通する側面があります。江戸は都市を取り囲む堀を構えました。また、『周礼』考工記は祖先や神を祀ることを記載していました。江戸では東照宮や霊廟など徳川家にかかわる神社や墓域を造営しており、両者はアジアで展開した都市づくりの系譜のなかで捉えることができます。他方、江戸がアジアの都市づくりと大きく異なる点もあります。中心に伝統的な宮殿を設けず、城館を据えた点です。京都とは異なり、武家の本拠となった城館は武威を表現することによって、自らの身分を表現していました。本章では都市江戸のなかにアジアの都市と共通する点と異なった側面を紹介します。
1 江戸と江戸城
2 徳川秀忠
3 廟所
4 東照宮
5 武家の都市
エピローグ~都市図屏風~
江戸は日本の中心として巨大な都市となりました。同時に列島には京都をはじめ堺や博多などの大都市があり、大名の拠点となった都市もありました。これらの大名の構えた都市は、多くは江戸と同じように、中心に天守や御殿を構え、惣構も築いていました。当時の世界の都市の多くは町を囲んで城壁を廻らせていました。列島の各地の都市の様子を描く都市図屏風には、江戸とも異なる様相も描かれています。都市図屏風は多様な景観を表現しています。
江戸東京博物館 開館20周年記念特別展
「大江戸と洛中~アジアのなかの都市景観~」
「江戸時代の代表的な都市は」と問えば、誰もが江戸と京都をあげるでしょう。この大都市を比較すれば、どのような特徴があげられるでしょうか。そして、東アジアのなかで見た時にどのようなことが考えられるでしょうか。アジアには都城制とよばれる伝統的な都市づくりがありました。回廊で囲まれた宮殿を中心に、東西の道を敷設し、周囲に城壁をめぐらす都市です。江戸そして京都はこのアジアの都市設計と関連をもっていました。本展は江戸そして京都の都市設計を鍵にして、アジアそして世界を意識した視点でみつめ、江戸時代の都市を考える展覧会です。
図録
発行日:2014年3月17日
編集:東京都江戸東京博物館
執筆:齋藤慎一(東京都江戸東京博物館学芸員)
発行:東京都江戸東京博物館