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朽木ゆり子の「ゴッホのひまわり 全点謎解きの旅」を読んだ!

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kutiki


朽木ゆり子の「ゴッホのひまわり 全点謎解きの旅」(集英社新書:2014年3月19日第1刷発行)を読みました。僕が朽木ゆり子を知ったのは「フェルメール全点踏破の旅」でした。同じ頃、有吉玉青の「恋するフェルメール 36作品への旅」もあり、この2冊が“フェルメールブーム”を巻き起こしたと言っても過言ではありません。もちろん美術研究者のフェルメール本もありましたが、やはり一般人への波及効果は、この2冊と言っていいでしょう。その後朽木は「盗まれたフェルメール」を出し、そして「東洋の至宝を世界に売った美術商― ハウス・オブ・ヤマナカ」を出すに至りました。


朽木は美術研究者でもなく、美術評論家でもなく、自身は“ジャーナリスト”だと言ってはばかりません。


そもそもなぜゴッホの「ひまわり」に興味をもったのだろう。最初のきっかけはフェルメールだった。そう説明すると、みんなに戸惑ったような顔をされる。フェルメールとゴッホの間には約200年の開きがあり、美術史という観点から見ればふたりの絵はスタイルもまったく違っていて、比較することさえおかしいからだ。しかし、美術史の専門家でない私には、200年の開きやスタイルの違いはあまり意味がない。フェルメールとゴッホは、私にとっては現在オランダと呼ばれている国でうまれ、アムステルダムで重要な作品を見ることができるという共通点をもった画家で、その共通点が興味をもつきっかけとなった。


ファン・ゴッホ美術館はずっと開館していたので、私の足は自然にそちらへ向かうようになった。


最初は美術館に入ったとたんに、ゴッホのあの強烈な色と誇張された形に圧倒され、違和感を覚えた。フェルメールからゴッホへ、それはいわば、須弥山から娑婆へ降りてきたような感じ、と言ってもいいだろうか。守護神が住まう、清みきって完璧な聖地から、不安定で悩み多き世界へやってきた感じ、である。純度が高いフェルメールの色彩から、独特のすこし濁って、かつ強烈なゴッホの色へ。グニャグニャとした輪郭をもって立ち上がる樹木、ぐるぐる巻の雲に取り囲まれた星や月、オレンジの輪郭線をもつ植物、そして灰色の顔の人々・・・。


しかし、何度かファン・ゴッホ美術館を訪れ、・・・多くの作品を見るうちに、彼の作品が放つ独特の“説得力”に惹かれるようになった。そのあたりから、何か気になることがあると、その周囲をいろいろ調べなければ満足できないという私の性格が頭をもたげてきたように思う。


11枚の「ひまわり」の便宜的な名称

テーブルの上に置かれたひまわりを描いた4枚



花瓶に入ったひまわりを描いた7枚




花は、咲き、種子を作り、枯れる。そのプロセスを一枚の絵に描いた「ひまわり」がこれほど魅力的なのはなぜだろうか。それはおそらく、この絵が前の時代の絵画と一線を画すオリジナルな絵だからだ。ゴッホは、ひまわりの花を描写することから出発したが、具象と抽象を隔てる線を越えて、抽象の世界へと半歩足を踏みいれた。その革新性が、人の心をとらえて離さないのだろう。11枚の「ひまわり」の描かれた背景と、うみだされてから現在にいたるまでのそれらの変転をリサーチして描きだした今、「ひまわり」にはフィンセント・ファン・ゴッホの才能が凝縮されている、と私は改めて確信している。


炎の11枚の物語
なぜ我々の心をつかんで離さないのか?

世界の名画の中で最も多くの人に愛され、親しまれているゴッホの「ひまわり」。しかし〈ひまわり〉11作品にはそれぞれ多くの謎が存在する! 東京の〈ひまわり〉贋作騒動の真相は? 日本にもう一枚あったという幻の〈ひまわり〉とは? 半世紀以上、公開されていない〈ひまわり〉の行方は? なぜゴッホは同じ構図の〈ひまわり〉を自ら複製したのか? そしてゴッホに〈ひまわり〉を描かせたゴーギャンとの愛憎関係とは? 『フェルメール全点踏破の旅』の著者が、最新の科学的・歴史的知見に基づきながら、ひまわり全点の謎を解く。世界の美術界のゴッホ新ブームをさらに過熱させるであろう貴重な一冊!


朽木ゆり子(くちき・ゆりこ):略歴
東京都生まれ。ジャーナリスト。国際基督教大学教養学部社会科学科卒業。同大学院行政学修士課程修了。コロンビア大学大学院政治学科博士課程に学ぶ。元「日本版エスクァイア」誌副編集長。 主な著書に『フェルメール全点踏破の旅』(集英社新書)、『盗まれたフェルメール』(新潮選書)、『東洋の至宝を世界に売った美術商― ハウス・オブ・ヤマナカ』(新潮文庫)など。


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「謎解きフェルメール」を読む!
「フェルメール全点踏破の旅」を読む!

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