練馬区立美術館で「野口哲哉展―野口哲哉の武者分類図鑑―」を観てきました。この展覧会、BS日テレの「ブラブラ美術・博物館」で取り上げられて、野口哲哉さんご本人が番組の中で自作を解説をしていました。
#131 2014年3月14日
練馬区立美術館「野口哲哉の武者分類図鑑」
~世界が注目!不思議で愉快な侍ワールド~
2011年10月、練馬区立美術館で「松岡映丘展」を観たときに、下記のように書きました。
武具・甲冑を身にまとった映丘の写真が数枚展示されていました。自身も矢を射る姿で、写真におさまっていました。やや時代錯誤の感もありますが、異常に武具・甲冑がお好きだったようです。それが「鵯越」や「矢表」に反映されています。
本物の甲冑を身にまとった松岡映丘の誇らしい、いかにも自慢げな写真が残っていました。武具・甲冑が好きだった映丘、それが自身に作品にも反映していました。
さて今回は、1980年生まれの野口哲哉、美術館では初めての個展です。侍、甲冑をモチーフにした、現代的な作品が約90点、展示されていました。また発想の原点となった古今の美術作品など、たとえば小堀鞆音の作品など、数多く展示されていました。作品は樹脂やプラスチックなど、現代的な素材を使いながらも、古びた鎧武者を造り上げていました。古びた絵画と造り上げられた武者を、ワンセットで展示している作品が、興味を惹きました。ちなみに「武者分類」は「むしゃぶるい」と読ませます。
展覧会の構成は、以下の通りです。
・野口哲哉ノ作品(1~91)
・古美術品リスト
華麗なる有職故実の世界~The Design Human~
仮想現実の中で~Real In Unreal~
過去からの手紙~Historical Odyssey~
そして会場内の各作品の解説文は、作家自らが記したものです。
たとえば「シャネル侍」の解説は、以下のようです。
紗錬(しゃねる)家概要
開祖である紗錬常陸介隆昌、旧姓・桐野高昌が、円保5年の文燕之役での戦功を認められ、主君からシャネル・ブランドのハンドバックと共に紗錬姓と紋を許された事に始まるとされている。宣教師によって西洋文化が国内にもたらされた当時、舶来品は論功行賞の褒美として珍重されていたが、紗錬家のように舶来の高級品をそのまま家名とする事例は稀である。ちなみに、紗錬家自体は仏国にある本家シャネルからの公認を受けたものでは無く、直接的な接点も皆無である。また貿易封鎖に伴い、3代藩主・隆経の時に、佐錬(さねり)家に改名したために、紗錬の名は隆昌、隆芳の二世代間で使用されたのみである。
*以上は作者の創作した架空の解説であり、すべての事柄は実在しない。
上を観れば分かる通り、野口哲哉の作品は、それらの織りなす嘘とも現実ともつかない魅力的な世界観を構築しています。彼曰く「でっちあげ」の世界なのです。しかし、甲冑への知識に裏付けられた空想世界は実に豊かで、史実との狭間を行き来する、ユニークで独創的な世界となっています。作品は等身大から、小指の先ほどの小さな作品まで、多種多様です。しかしそれらは、大きさにかかわらず、実にリアルで、表情豊かです。
図録の帯には藤本正行が、以下のように書いています。
「こうした奇想天外な組み合わせは、とかくアイデア倒れに終わるものですが、貴兄のそれは見事に成功しております。古画の表現や甲冑に関する知識と、それを活かせる筆力が貴兄に備わっているからです。」
古画と甲冑武士
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甲冑武士の表情
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弐拾四歳の自画像
「野口哲哉展―野口哲哉の武者分類図鑑―」
1980年生まれの野口哲哉は、樹脂やプラスチックなど、現代的な素材を駆使して古びた姿の鎧武者を造形し、それらの織りなす嘘とも現実ともつかない魅力的な世界観を構築する美術家です。南蛮渡来のシャネルのマークを家紋とした甲冑を身にまとった紗錬家しゃねるけの武者像「シャネル侍着甲座像」がある一方で、兜に付いたプロペラ型の立物で空中を浮遊する武者の絵画作品「ホバリングマン 浮遊図」は当時あたかもそんな武者がいたかのように、巧妙に古びた画面を演出しています。野口の作品世界の大半は、侍をモチーフにしながらも、実際には存在しない、彼曰く“でっちあげ”の世界なのですが、サムライ、甲冑への知識に裏付けられた空想世界は実に豊かで、史実とのはざまを行き来するユニークで独創的なものとなっています。加えて、甲冑の表現の正確さや、サムライたちの立ち振る舞いは、格好良さの中にも常に滑稽さや哀しさが漂っており、その姿は日々の暮らしを送る私たち現代人とどこか通じるものがあります。作家はまだ30代半ばで活動期間は短いとはいえ、コレクターは国内外に及び、展覧会出品作、個展での評価も高く、今まさに注目される作家の一人です。一貫して鎧武者をモチーフに制作する野口の新作を含めた全作品約90点を中心に、彼の発想の原点となった古今の美術作品や写真、グラフィックデザインなどを併せて展示し、野口の武者世界を紹介する、初の個展となります。
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発行日:2014年2月20日
著者:野口哲哉
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入場チケット
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