「日本美術全集」刊行企画
日本美術全集vs日曜美術館
井浦新、日本美術応援団 入団記念トークショー
対談:山下裕二(明治学院大学教授)、井浦新(俳優)
日時:3月9日(日)
開場13時30分
開演14時00分 15時30分終了予定
会場:スパイラルホール
東京都港区南青山5-6-23
対談:山下裕二vs井浦新
山下:二人でトークショーを行うのは3回目ですね。山口の県立美術館で「五百羅漢」をやったときに、山口まで来てもらいました。今日は、日本美術応援団入団記念トークショーということです。「日本美術応援団」と「京都、オトナの修学旅行」の本がスクリーンに。
井浦:「応援団」も「修学旅行」も、随分前に読んでいます。
山下:本来なら学生服で出てくるべきでした。この本のスタイリストは南伸坊さんです。赤瀬川さんは病気療養中です。「日曜美術館」はどういうスケジュールで?
井浦:やっと1年が経ちました。いくつかチームがあり、仕上がってきた順に出ていきます。スケジュールは大変だけど、僕自身が求めているので。今年も続投になりました(会場から拍手)。
山下:1冊目(応援団)は北齋、2冊目(修学旅行)は金閣寺が背景です。お茶目な発言で、文庫の表紙に金閣寺は使えませんでした。あの頃は若かったですね。井浦さんは?
井浦:今年で40歳です。
山下:今日はスライドをたくさん用意して、抗議しながら井浦さんのテストを!「日本美術全集」は、刊行が2012年12月ですが、その前に2~3年かかっている。1番目は奈良の「法隆寺」、王道です。
井浦:円空が好きです。円空も法隆寺へ行きました。
山下:法隆寺は新規に撮影しました。30年ぶりです。「応援団」の時は却下されました。美術全集は写真のクオリティが命ですから。子どもを修学旅行で奈良や京都へ連れて行ってもしょうがない。だから「オトナの修学旅行」って言っている。仏像の背面の写真も見られます。法隆寺のスタイル、日本美術と言うけど、東アジアのスタイルです。学生時代、元になる中国美術を研究しなければと言われました。でも日本美術は特別なものがあります。夢殿の「救世観音像」、フェノロサと天心が開けさせた。純粋に造形として入ってもいい。みうらじゅんの「見仏記」は、写真を一枚も使っていない。みうらじゅんのイラストです。芸大の「仏頭展」でも出ていました。
井浦:今日は「仏頭」のループタイです。あの展覧会はシンプルで、よかった。
山下:薬師寺は行かれましたか?前の管長は修学旅行生に話をするのがうまかった。2巻目は伊藤若冲、「動植綵絵」は元々若冲が相国寺へ寄進したもの、あとで皇室が購入して、現在三の丸尚蔵館にあります。若冲の絵はアップに耐える絵です。紫陽花の部分、輪郭線は塗り残しです。葉っぱの虫食いまで描いています。
井浦:相国寺で見ました。2時間、3時間待ちで、並びました。山下先生が並ぶのは想像できない。
山下:三の丸尚蔵館は、開いてたり締まっていたりで、注意していかないと。その時はベビーカーを押して行った記憶があります。2000年、狩野博幸さんの企画で「若冲展」やりました。若い人がネットで流して評判になり、若冲ブームが。鶏のトサカを拡大すると、草間彌生でしょ。若冲のお墓、行ったことある?
井浦:行ったことあります。「五百羅漢展」も見ました。
山下:目黒の椿山荘にも10個か20個あります。「郡鶏図」、鶏の視線がバラバラです。1羽だけ、正面を見ています。これは若冲だと思います。深層心理が滲み出ています。生理的曲線と呼んでいます。簫白と若冲、どっちが好き?
井浦:簫白を見て、車に正面衝突したような衝撃を受けました。若冲は一周して死ぬと命がけで描いていますね。
山下:映画をつくってよ。若冲、簫白、芦雪の出てくる・・・。
井浦:つくりたいですね。
山下:若冲の絵を見て、プライスさん、泣いてました。プライスさんは84歳、元気ですよね。展覧会の間中、ずっと会場にいました。今、小学館で「日本美術史」(2800円)を作っています。表紙に若冲の絵を使おうと思って・・・。プライスコレクションの「虎図」、実は模写だったが、実物よりよく描いてあり、こちらの方が断然いい。
「葡萄図」、プライスさんが始めて買った日本画です。フランク・ロイド・ライトと一緒に行きました。スポーツカーを買おうと思って。ライトはプライスさんのお父さんの社屋を設計したかで・・・。ミホミュージアムの「象」と「鯨」、随分安く買った。
井浦:NHKで簫白をやったときに、山下先生に予習として講義を受けた。芦雪の「虎図」、無量寺へは日曜美術館アートの旅で行きました。
山下。簫白の中の絵、自画像、ビンラディンにそっくりです。屏風の裏には、猫と魚が描いてある。
井浦:その物語性に、感動しますよね。
山下:プライスコレクションの牛と象、黒白図、屏風を開くときに仕掛けが・・・。応挙、大乗寺の・・・。芦雪の展覧会、やります、愛知県立美術館で。孔雀の絵だけは、応挙にかなわない。映画の柱だね。応挙には国宝が一つもない。不思議です。応挙は人格も円満です。おおもとには応挙がいるんですね。3巻、「風神雷神図」ですね。「栄西と建仁寺」に出ます。伝宗達の「蔦の細道図」。「燕子花図」は、実物を見ないと良さがわからない、印刷では・・・。4巻、「桂離宮」。狩野永徳の「洛中洛外図」上杉本。等伯の「松林図屏風」。井浦さん、等伯でオールバックで写真撮ってますね。
井浦:空気感、実物を見ないと分からないですね。
山下:利休が作らせた「待庵」。赤瀬川さんと3~4時間、いましたよ。狭くないです。次の巻、「東大寺、正倉院」。「梵天、帝釈天」は三月堂にある。興福寺の「阿修羅像」、真央ちゃんに見えてしかたない。フィギア、5個買ったので、1個あげますよ。「正倉院展」、毎年大混雑です。「琵琶」、いかに中国、8世紀ごろ、進んでいたか。次の巻、「激動期の美術」、幕末から明治にかけて、「鮭」ですね。狩野一信の「五百羅漢」、2011年江戸博で始まる4日前に東日本大震災があり、会期が遅れました。仕立て直して、ついこの間山口でやりました。その時、新さんとトークショーをやりました。川鍋暁斎ですね。この巻にたくさんの作品を収録しました。狩野派を卒業しました。暁斎は、芸大を出て漫画家になったようなもの。東博で、まだ暁斎、やっていません。これはパリの儀目美術館にあるもの。キリスト像だが仏像みたい。「大和美人図」、コンドルが持っていたもの。暁斎は風俗も描けるし、狩野派も描ける。「幽霊図」、福富太郎が所蔵しています。静嘉堂文庫の「地獄極楽めぐり」があります。工芸に力を入れてます。「生き人形」、山本亀八、等身大の人形です。石川雲蝶、天井が凄い。装飾彫刻です。新潟県魚沼にあります。並河康之、「七宝の壺」。4月から三井記念で「超絶技巧」村田コレクション展、大々的にやります。山口晃クンにイラストを頼んだ。運慶の「大日如来」。最新刊は「源氏物語絵巻」。岩佐又兵衛「洛中洛外図屏風」舟木本。「山中常盤」衝撃的。狩野山雪、工芸的な蒔絵的手法。次の巻、「前衛とモダン」、黒田清輝「湖畔」。次、「浮世絵」。次、室町時代。水墨画以外でもやまと絵が凄いものがあります。次、「密教美術」。次、「東アジアのなかの日本美術」。次、「戦争と美術」。伝頼朝像、作者が違っていた。次、「拡張する戦後美術」。つげ義春、そして田村一村。テーマ巻、「白隠」「円空」。根津美術館「那智の滝図」。次の巻、「日本美術の現在・未来」。これからも続々刊行されます。日曜美術館とコラボできれば…。
井本:初めて本を出版します。東博だけを徹底的に探ったもの。東京美術から出ます。
山下:通史的な本を出します。「日本美術史」小学館、2800円です。
以下、画像は順不同
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2014年4月19日(土)~7月13日(日)
三井記念美術館