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山種美術館で「Kawaii 日本美術―若冲・栖鳳・松園から熊谷守一まで―」を観た!

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山種美術館で「Kawaii 日本美術―若冲・栖鳳・松園から熊谷守一まで―」を観てきました。観に行ったのは1月8日、もう半月以上も前のことです。タイトルを一目見て、府中市美術館で開催された「かわいい江戸絵画」を思い浮かべました。「江戸絵画」と「日本美術」の違いはありますが、同じ「かわいい」がテーマです。山種美術館が「Kawaii 日本美術」を準備している最中に、府中の「かわいい江戸絵画」が開催されたという。違いはと言うと、「館長と学芸員が全員女性で構成されるフェミニンな感性を活かし、幅広い時代やジャンルに目配りしながら作品をセレクトしている」としています。

府中市美術館で「かわいい江戸絵画」(前期)を観た!
府中市美術館で「かわいい江戸絵画」(後期)を観た!



さて、山種美術館の「Kawaii 日本美術」ですが、目玉は後期の伊藤若冲「樹花鳥獣図屏風」(静岡県立美術館蔵)に異を唱える人はいないでしょう。僕は若冲のこの作品は、「伊藤若冲アナザーワールド」展で、静岡県立美術館と千葉市美術館で二回観ています。「若冲が来てくれました」展で観たプライスコレクションの「鳥獣花木図屏風」も同じ「桝目描」という手法ですが、やはりちょっとずつ異なります。
静岡県立美術館で「伊藤若冲アナザーワールド」展を観た!
千葉市美術館で「伊藤若冲―アナザーワールド―」展を観た!

企画に事欠いて「子供」や「動物」を持ち出すのは邪道と言われたりする世界もありますが、と府中では皮肉を書いたこともありましたが、「かわいい」というと、筆頭はどうしても「子ども」と「動物」になります。唐子や金太郎といった伝統的な子どもの主題を扱った作品もありましたが、幼い長女を描いたという小茂田青樹の「愛児座像」は娘をいとおしむ画家の愛情が伝わってきます。昭和24年にインド象の「インディラ」が、日本にやってきました。その様子を川端龍子は「百子図」として、子どもが象と戯れる平和な光景として描いています。


日本画専門の美術館を標榜する山種美術館、小出楢重の5歳になる長男を、カンバスの油彩で描いた「子供立像」(大正12年)は、やはり一種異様に見えました。じっとしていられないわが子をなだめるため、ご褒美を与えたり、物語を聞かせたりしたという。それにしてもこの絵の子供は、妙に大人びた顔つきです。「ベスト・オブ・山種コレクション」に入っている作品ですが・・・。

動物で「かわいい」のは、犬、猫、兎、猿、などが挙げられますが、竹内栖鳳の娘婿にもなった西山翠嶂、写生を重視した、円山四条派の系譜を弾く画家ですが、「狗子」はまさに癒し系です。生まれたばかりの仔牛を見て生命の誕生に強く感銘して描いたという山口華楊の「生」も素晴らしい。 若冲の「鶴亀図」は、水墨の鶴と亀をデフォルメして描いていますが、鶴の頭にもう一羽の鶴が隠れていることは、図録を観るまで分かりませんでした。蒔絵師でもあった柴田是真の「墨林筆哥」は文句なくかわいい。得意げに琵琶を弾く中央の蛙は、愛橋たっぷりで、周囲の蛙たちも熱心にそれを聞いています。


若冲の図録を観直してみると、ちゃんと描いているものもあれば、けっこう自分自身が愉しんで、観る人がクスッと笑っちゃうような「ほのぼの・ユーモラス」な作品も多いことに気がつきます。今回出されている「托鉢図」や「伏見人形図」がそれにあたります。「伏見人形図」は、アナザーワールドにもプライスコレクションにも形は変われど出ていました。おなかをはだけて、唐団扇を両手で持ち、にこにこ微笑む布袋様です。京都の伏見稲荷の土産物として親しまれたという素朴な土人形を、若冲は40年近く描き続けたという。京都では、無病息災を祈って毎年一体ずつ買い足して、それを7年間続けるという風習があるそうです。


展覧会の構成は、以下の通りです。

第1章 描かれた子ども―人物の中のKawaii

第2章 生きもの大集合―動物の中のKawaii

第3章小さい・ほのぼの・ユーモラス―Kawaiiってなに?


kawaii

第1章 描かれた子ども―人物の中のKawaii




第2章 生きもの大集合―動物の中のKawaii



第3章小さい・ほのぼの・ユーモラス―Kawaiiってなに?




「かわいい日本美術―若冲・栖鳳・松園から熊谷守一まで―」

日常でもよく耳にする「かわいい」という言葉。今や海外にまで広がり、日本から発信される「Kawaii」文化に注目が集まっています。さかのぼれば、平安時代に著された『枕草子』には「うつくしきもの(=かわいいもの)」として稚児や雀の子などが挙げられており、小さいものや幼いもの、未完成なものの愛らしさ、儚さを「かわいい」とめでる文化が、古くから続いてきたことがわかります。本展では、文学の世界だけでなく美術の世界でも、時代を超えて人々の心を捉えてきた「かわいさ」に注目します。とりわけ、無邪気な仕草や表情が微笑ましい子ども、身近な存在として馴染み深い犬や猫をはじめとする動物、鳥、虫などの生きものを対象とした作品には、「かわいい!」と思わず声を上げたくなるような表現が多く見出せます。室町時代の《藤袋草子絵巻》(サントリー美術館)では、子ども向けの絵本を思わせる素朴な描写によって猿を擬人化して描き、江戸時代の伊藤若冲は、枡目描きの技法で愛嬌たっぷりの動物尽くしの屏風《樹花鳥獣図屏風》(静岡県立美術館)を制作しました。また、近代日本画においては、温かいまなざしで小さな命を見つめた竹内栖鳳《みゝづく》、折紙で遊ぶあどけない少女の姿を描いた上村松園《折鶴》(いずれも山種美術館)など、自然、あるいは日常に見られる生きものや子どもの愛らしい瞬間を捉えようとする意識が窺えます。さらに、熊谷守一の洋画や谷内六郎の挿絵原画に表されたほのぼのとした「ゆるさ」もまた、現代人にとっての「Kawaii」という感覚に通じるものでしょう。本展では、中世から現代までの絵画ほか、乙女心をつかむ小さな化粧道具などの作品を幅広くご紹介いたします。外見のかわいさだけでなく、シンプルな線、カラフルな色彩、ユーモラスな表現に潜む「Kawaii」を、日本美術を通して紐解く展覧会です。


「山種美術館」ホームページ


kawa1 「Kawaii 日本美術」

―若冲・栖鳳・松園から熊谷守一まで―
図録

2014年1月3日発行

編集:山種美術館学芸部

発行:山種美術館








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