ポレポレ東中野で、纐纈(はなぶさ)あや監督のドキュメンタリー作品「ある精肉店のはなし」を観てきました。纐纈あやさんの作品はデビュー作「祝(ほうり)の島」を観ました。原発建設に反対する山口県の祝島漁民の日々を描いたドキュメンタリーでした。まだ2作目ですが、テーマは2作とも描きようによっては深刻なのに、出来上がったドキュメンタリー作品はなぜか「穏やかな」作品です。
映画は、牛が住宅地を引かれていく様子から始まります。屠畜場に着き、牛の眉間をハンマーで打ち、巨体の牛はその一撃でドサリと崩れ落ちます。家族4人が手早く牛を解体します。その手際の良さと職人技に驚きます。カメラはその作業を静かに追います。その後、肉は店舗に運び込まれ、きれいに切り分けられて店頭に並びます。87歳の老母を中心に、仕事を終えた一家は、いつものように家族団らんの賑やかな食卓を囲みます。
北出精肉店は、飼育、屠畜、精肉、販売を、家族で一貫して手がけてきました。しかし、100年以上使い続けた屠畜場が、老朽化のため閉鎖が決まります。江戸時代から代々続いた家業を子どもの頃から手伝ってきた現当主の兄弟が、厳しかった父親を懐かしみます。北出精肉店も小売りだけになりました。兄は言う。「屠畜は正視できないものという見方を覆したかった。一家の日常を丸ごと描けば、この仕事が特別ではないと伝えられる」と思ったという。
ドキュメンタリー映画「ある精肉店のはなし」は、牛を育てて、食肉にして売る家族の暮らしに寄り添った作品です。纐纈監督は、半年通って撮影の承諾を得て、近くに部屋を借りて連日北出家を訪れ、食卓も共にした、という。「生まれた地で生きることを考え抜いた人たちは、深い懐で私を丸ごと受け入れてくれた」と纐纈監督は言う。背景には「被差別部落」の問題もあるが、兄は日本最初の人権宣言である「水平社宣言」について語り、弟は牛の皮をなめして太鼓を作ります。息子は親たちが考える偏見をものともせず、岸和田城で結婚式を執り行います。地域のつながりを象徴する「だんじり」を曳くシーンは圧巻です。
以下、とりあえず「シネマトゥデイ」より引用しておきます。
チェック:大阪府貝塚市で長きにわたり、家族経営で精肉店をコツコツと営んできた一家の姿を捉えたドキュメンタリー。自分たちの手で育て上げた牛を家族が協力し、丁寧に処理して店頭に並べるという作業をこなす彼らの真面目な仕事ぶりを映し出す。監督を務めるのは、『祝(ほうり)の島』が反響を呼んだ纐纈あや。被差別部落出身者として理不尽な差別を受けながらも、牛の命と正面から向き合ってきた家族の姿が感動を呼ぶ。
ストーリー:大阪府貝塚市にある北出精肉店では、牛の飼育から食肉処理、そして販売まで全て家族の手で行っている。彼らは4人で呼吸を合わせながら熟練の手つきで牛を解体し、その後、肉は店舗に運び込まれ、きれいに切り分けられて店頭に並ぶ。7代目として家業を継いだ兄弟だったが、2012年3月には102年も代々使われてきた食肉処理場が閉鎖される。
纐纈あや監督の舞台挨拶
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