「幕末の探検家松浦武四郎と一畳敷展」は、こういう人がいたのかという、まったく予想が付かない展覧会でした。松浦武四郎(1818-1888)は「北海道の名付け親」だというから驚きです。旅行家・探検家・作家・出版者・学者・・・たぐいまれなる知識欲と冒険心で、多芸多才ぶりを発揮したという。。松浦の生涯は「諸国を遊歴」、「蝦夷地の探査」、「明治政府開拓使」、そして「趣味に生きた晩年」とあります。全国から贈られた古材で組み立てられた畳一畳の書斎で、旅に生きた生涯を振り返ったという。「一畳敷の書斎」が原寸大模型が展示してありました。正確には畳一畳と、その両脇に板敷きがあります。茶室よりも小さい。しかし床の間もあり、明かり取りの窓もあります。実物は、国際基督教大学に現存しているそうです。
INAXギャラリーで2010年12月に開催された「幕末の探検家松浦武四郎と一畳敷展」を見たときに、上のような記事を書きました。今回、静嘉堂文庫美術館で「幕末の探検家 松浦武四郎」を観たのは、10月11日、まだ紅葉が始まっていませんでした。
伊勢の人松浦武四郎は、10歳の頃から諸国遍歴を志し、天保4年(1833)には江戸に出て、17歳からわずか4年間で日本全国の山岳などをくまなくまわる根っからの旅行家、探検家でした。27歳の頃からは蝦夷地を探検して作成した「東西蝦夷山川地理取調図」(全28枚)は、海岸線だけの調査であった「伊能図」を補い、内陸の河川名や地名が記入されている詳細なものでした。
明治政府が成立すると蝦夷地御用掛、開拓地判官に就くも、3年もしないうちに「高齢で現地に赴くことも適わない身であるから」と言って官を辞退しますが、吉野連山や吸収遊歴などを続け、68歳で大台ヶ原を3回踏破し、70歳からは富士登山に挑戦するなど、登山や旅に明け暮れる毎日でした。
さて、松浦武四郎の「一畳敷」ですが、INAXギャラリーにも展示してありましたが、同じものかどうかは分かりませんが、今回の会場にも展示してありました。明治政府の役職から離れた明治6年、武四郎55歳の時、神田五軒町に新居を構えました。明治19年にその家の一隅に「一畳敷書斎」を増築しました。調べてみると独立した書斎ではなく、本屋に接続して増築されたもののようです。この小さな部屋を作るのに武四郎は、寺院の古材を柱に神社の板切れを床の間へと使用したり、各地の古材を集めて作りました。今で言う建築資材のリサイクル利用でした。武四郎は自分の死後、一畳敷と一緒に遺体を燃やしてほしいと遺言を残します。
また旅好きの武四郎は、古物に興味を持ち、考古遺物のコレクターでもありました。武四郎が集めた考古遺物は静嘉堂文庫が多数所蔵し、今回初公開されました。河鍋暁斎には、自分をモデルにした「武四郎涅槃図」を描かせたりもします。チラシの武四郎の写真は、着物を着た武四郎の肖像写真には、肩から胸に勾玉や管玉、切子玉などでできた「大首飾り」が見えます。自己顕示欲が強そうな人です。
展覧会の構成は、以下の通りです。
第Ⅰ部 松浦武四郎の生涯
1.誕生から蝦夷地へ渡るまで
2.蝦夷地調査と北海道
3.晩年の活動
第Ⅱ部 趣味の世界―河鍋暁斎筆「武四郎涅槃図」と古物蒐集
1.「武四郎涅槃図」の世界
2.古物蒐集
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武四郎の古物蒐集
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「幕末の探検家 松浦武四郎」
「幕末の北方探検家」「北海道の名付け親」として有名な松浦(まつうら)武四郎(たけしろう)(1818—1888)は、伊勢国一志郡須川村(現、三重県松阪市)の郷士の家に生まれました。少年の頃から日本全国、旅をして歩きましたが、時勢の中で特に北方に強い関心を持ち、弘化2年(1845)から安政5年(1858)まで、13年間に計6回にわたり、東西・北蝦夷地(えぞち)、クナシリ、エトロフ島を探査。アイヌの人々とも深く交流し、関連する多くの著書を刊行しました。その後、開拓使判官になるも1年で辞し、以後全国遊歴と著述の日々を送りました。このような旅の巨人武四郎はまた古物に興味を持ち、考古遺物の大コレクターとしても知られています。今回、静嘉堂が所蔵する武四郎旧蔵考古遺物コレクションの中より主要な物を選び、初公開致します。今まで全く世に知られていなかったこの幻のコレクションには、古墳時代の美しいヒスイの勾玉や大きな古鈴、また歴史時代の考古遺物など、学問上重要な資料となるものも含まれています。本展では、それらの考古遺物を中心に、幕末・明治に生きた特異な探検家、松浦武四郎の生涯と人物像を紹介してまいります。
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「幕末の探検家 松浦武四郎と一畳敷展」
案内はがき
INAXギャラリー
2010年12月2日(木)~2011年2月19日(土)
過去の関連記事:松浦武四郎関連
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