去年の夏だったか、シアター・イメージフォーラムで、フィリップ・ガレルの愛の名作集ということで、「愛の残像」と「灼熱の肌」が上映されていました。それは見逃し、なんとなく題名を覚えていた「愛の残像」を、TUTAYAで借りて一度は見ましたがよく分からず、再度借りてまた見直しました。「愛の残像」は2008年にカンヌで公開されました。モノクロームの画像が、生と死、夢と現実を超越する激しい愛を、悲しくも儚く描き出します。
「パリ。若い写真家フランソワと人妻で女優のキャロルは激しい恋に落ちるが、すぐに関係は終わりを迎える。その後、キャロルは狂気にとらわれ、自ら命を絶ってしまう。1年後、フランソワは新しい恋人と幸せな日々を過ごしていたが、 突然キャロルの姿が見えるようになり……」とまあ、映画はこんな流れです。
ローラ・スメットが演じるキャロルは、「たまたま結婚してしまった、失敗だった」と、後悔している映画プロデューサーの夫がいます。夫はハリウッドやロンドンにいて、パリへはたまに帰ってくるだけ。キャロルの心はすでに夫にはなく、一瞬に惹かれ合ったカメラマンのルイ・ガレル演じるフランソワにありますが、キャロルはバリアを築いてフランソワを拒絶したりもします。こちらが押したら相手は引く。この辺の“揺らぎ”は微妙です。
奔放で情熱的ながら、儚げな表情のキャロル。「老いても狂っても自分を愛してくれるのか」とキャロルは問います。若いフランソワは答えられません。キャロルは、一度は愛する男性を手に入れますが、フランソワは離れてゆき、ジンやウォッカをがぶ飲みするようになります。女優という職業の陰で次第に精神を病み病院で暮らすようになり、果ては自殺してしまいます。一方のキャロルから逃げ出したフランソワは、新しい恋人との新しい人生が始まります。
しかしある時、自宅の鏡の中からキャロルがフランソワを見ているのに気付きます。その後もキャロルは鏡の中から話しかけたりもします。消え去らない愛の恐ろしさに、フランソワもまた“揺らぎ”ます。キャロルの残像が「あなたが本当に愛したのは私なのよ」と、死に神のようにまとわりつきます。怖いですね。後半は幻想的で超現実的な、オカルトチックな映画となっています。
以下、とりあえず「シネマトゥデイ」より引用しておきます。
チェック:『恋人たちの失われた革命』などのフランスの名匠フィリップ・ガレル監督による切ない愛の物語。自ら命を絶ってしまったかつての恋人と、今も生きて人生を謳歌(おうか)する男性との間の生と死を超えた燃えるような愛をモノクロームの映像で紡ぎ出す。主人公をガレル監督作品に出演経験のある、『灼熱の肌』などのガレル監督の息子ルイ・ガレルが演じ、その相手を『ゼロ時間の謎』のローラ・スメットが熱演する。あまりにも切ない恋人たちの悲恋に涙があふれる。
ストーリー:写真家のフランソワ(ルイ・ガレル)と、既婚者であり女優でもあったキャロル(ローラ・スメット)は、パリで出会い互いに惹(ひ)かれ合う。彼らの関係は長くは続かずやがて破局を迎えるが、二人が別れた後にキャロルは自殺してしまう。1年後、フランソワは別の恋人と満ち足りた毎日を送っていたが、なぜかキャロルのことが見えるようになる。