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東京都美術館で「福田美蘭展」を観た!

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皇后さま、福田美蘭展を鑑賞 震災テーマの新作に見入る
皇后さまは18日午後、東京・上野の東京都美術館で「福田美蘭(みらん)展」に訪れた。国内外の名画を引用して描く独創的な作品で知られる画家、福田美蘭さん(50)の首都圏初の大規模な個展で、東日本大震災をテーマにした新作など約70点が展示されている。皇后さまは、震災で傷ついた福島県沖のアサリを描いた絵を見つけて足を止め、福田さんに図柄などについて質問。2005年に天皇陛下とともにサイパン島を訪問した際、「バンザイクリフ」で黙礼した姿が描かれた作品にも見入っていた。福田さんは取材に対し、「皇后さまは、このような形で心に留めて絵にしたことを印象深く思われているようでした」と話した。鑑賞後は、震災で被災した文化財保護のためのチャリティー版画を5点以上買い求めたという。(朝日新聞デジタル:2013年9月19日)


2011年10月に「福田繁雄大回顧展」を観ました。いうまでもなく、福田繁雄は福田美蘭の父親です。1967年の「日本万国博覧会(公式一号)」のポスターを作っています。個人的には、1974年のこと、竹橋の近代美術館へ観に行った「第9回東京国際版画ビエンナーレ展」のポスターや図録も、福田繁雄がデザインしています。福田はグラフィックデザイナーでありながら、立体作品も作っています。自宅の玄関扉にトリックを使っていたのもありました。一見正攻法であるような、しかし斜に構え、そこには諧謔があり、ユーモアやウィットに富んだ、一つとして一筋縄ではいかない作品づくりは、本人は厭がるでしょうが、娘の美蘭にもしっかりと受け継がれているように思います。

川崎市民ミュージアムで「福田繁雄大回顧展」を観た!


展覧会の構成は、以下の通りです。


1.日本への眼差し
2.現実への眼差し
3.西洋への眼差し
4.今日を生きる眼差し


展覧会場への入口に胡蝶蘭がありました。こんな背の高い立派な胡蝶蘭、あるのでしょうか?ああ、やっぱり、布でできた「造花」でした。最初からやってくれますよ、美蘭ちゃん。


国内外の名画を引用しながら、しっかりと自分のものにしています。安井曾太郎の「孫」や、黒田清輝の「湖畔」をモチーフにして、ユーモアたっぷりに描いています。世界文化遺産になったばかりの富士山も、浮かれてばかりいないでと、「噴火後の富士山」を描いています。同時多発テロの現場、若かりし頃に登った「世界貿易センターの展望台」も、皮肉を込めて描いています。


一方では東日本大震災をテーマにした作品もありました。「翌日の朝刊一面」には驚かされましたが、「震災後のアサリ」の前で美智子さまが足を止めるのも納得です。「モナリザ」も観られ続けて疲れ切ったのか、ソファーでリラックスしています。絵の上を歩ける絵は、さすがに皆さん、恐る恐る歩いていましたね。都美術を設計した前川さんも、バルコニーから心配そうにこの展覧会を覗いていました。


福田美蘭は、今回の展覧会を「現代を映す鏡でありたい」と語ったという。


以下、ギャラリーAに展示してある作品を、作家のコメントと共に載せておきます。


「受胎告知」:言葉に置き換えずに資格だけで理解できる絵画とは、感覚的で抽象的なものだ。想像力と知性で表現されたために本人しか意図が分からない絵画は肯定できないので、既知の具体的な場面を主題にする必要があった。動きの軌跡を描くことで、激しい心の動きを感覚的、抽象的に表現できると思った。



「磔刑図」:磔刑はキリストの生涯中最も劇的な場面で、動きのある構図や有機的な形によって感情や精神的なものを表現するのにふさわしいモチーフだと思い、画面下にはいろいろな象徴的要素と多くの群衆で構成されていることを前提にそのイメージを具体的な対象物としないで描こうとした。



「山水図」:大学生の頃、海外の美術館を巡り、西洋美術の世界を広げてくれる現実的な存在としてボーイング747の旅客機をよく描いた。そして今、トラブルが相次ぐボーイング787を、理想郷として現実から隔離した図様の奇怪さと不気味さの魅力を持って描かれる北宋系山水画に飛行させることで、身近に存在する不安と狂気を描いている。


「秋―悲母観音」:2012年、久し振りに《悲母観音》を見た。人々の救済へ送り出される前に振り返る嬰児の姿は、震災のいたましい状況から救済されたいという想いが連想され、母性への畏敬や子供への慈しみからは強い母子像が浮かぶ。芳崖の独創性は仏画としての観音と童子を母と子に発想した点で、それをさらにストレートに表現するため、胸に抱き寄せる姿にした。背景は被災地の家、船、瓦礫が沖に流れていく光景。



「紅白芙蓉図」:大学に通う6年間、上野公園を横切ると、噴水の向こうに東京国立博物館が見え、季節ごとの風景の中で周囲の木々は少しずつ成長していった。時間の移ろいと共に刻々変化する趣を、「紅白芙蓉図」で酔芙蓉が一日のうちに白から紅へと変化するさまに重ね合わせた。そこに蕾から深紅の花まで二幅の前後の「時」を加え、くり返す時間の中でこの公園に来る新しい人達が「紅白芙蓉図」に出会うだろうという想いで、回想した噴水広場に種を落とした。


「風神雷神図」:宗達の《風神雷神図屏風》は、緊張感のある構図と動きを生み出すポーズ、おおらかな描線とユーモラスで親しみのある楽しさが生命感と躍動感を生んでいる。光琳作品に受け継がれなかった空間表現や感情といった絵画的要素を抽象的、感情的にとらえようと思った。具体的なイメージを抽象で表現しようとする連作に1点。



「涅槃図」:2010年祖父、林義雄が亡くなった。童画家で、100歳まで仕事を続け、最後まで人との交際を楽しみ、体調を崩してからも物事を受け入れるおおらかさがあった。「死というものは宗教的なものかと思っていたが、意外と神秘的なものだ」と語っていた。この作品は、祖父の描いた生きものを涅槃図にしたもので、明るく楽しい動物達のユーモアには戦後の日本の子供達に向けた祖父の願いが込められているように思う。


「夏―震災後のアサリ」:東日本大震災後、家を失い、家族を津波にさらわれた人々を思うと、被災地を訪れることもできずにいたが、「震災アサリもストレス」という記事で知った、震災の影響を受け体に溝を刻みながら生き続けたアサリの存在は、私の生活に悲惨な現実を深く浸透させ、制作へと向かわせた。背景に配したのは被災地の海底に沈む瓦礫である。



「冬―供花」:震災後の6月に「ワシントン・ナショナル・ギャラリー」展でゴッホの《薔薇》を見た。その花は見たことがないほどに強烈で美しく、茫然とするしかなかった。その中で思い出されたのが、2年前の冬に父が突然亡くなった際に届けられた白い花々のことだ。白い花々の色彩と強烈な香り。水をやり、世話をする時間に救われて、私はその時を乗り切ったように思う。ゴッホの作品に感じた強さが、あの白い花にもあったと思い、描くことにした。また、これをきっかけに、作品を通して震災で命を落とした人と向き合う一歩を踏み出すこともできた。この作品は園は中後の写真を元に描いている。


「アカンサス」:ウィリアム・モリスのテキスタイルに東京藝術大学の徽章であるアカンサスの葉のプリント生地を見つけた。連なって伸びる渦巻き文様に、美術家が長い時間をかけ、自分に何ができるか見つけるために作品から次の作品へと試行錯誤を繰り返す中で気付いていく、ものを創り出す喜びを感じたので、奥に父が撮影した私の写真、手前に私が大学を去るとき記念に持ち帰った、構内のアカンサスの一株と教室の椅子を描いた。




福田美蘭展

東京都美術館は、1926(大正15)年の開館当時から公募団体の作品発表の舞台として、日本の近・現代美術の発展にとって重要な役割を担ってまいりました。同時代のつくり手と歩んできたこの歴史と伝統を踏まえ、このたび現代作家の個展を開催いたします。福田美蘭(1963~)は、東京藝術大学に学び、同校の卒業制作展および修了制作展を経て、現代日本美術展や日本国際美術展への出品など、上野そして当館を主な舞台にそのキャリアを積んできました。史上最年少での安井賞受賞(1989年)に象徴されるように、彼女は若くして独自のスタイルを切り開いた作家であり、現在も旺盛な創作活動を行っています。本展では90年代以降の代表的な作品に加え、この規格のために制作された新作など、あわせて約70点を展示し、福田美蘭が生み出す多彩な表現の世界を紹介いたします。当館ギャラリーの広い空間を活かした作品や、当館の設計者である建築家・前川國男への敬意をこめた作品など、美術館の建物と一体化した独自の空間構成により、まさに“美蘭ワールド”を楽しんでいただける展覧会となることでしょう。


「福田美蘭展」公式facebook


「東京都美術館」ホームページ


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