東京国立博物館で秋の特別公開「夏秋草図屏風」を観てきました。館蔵の優品や特色のある作品を公開する「秋の特別公開」、本館7室には、人気の高い酒井抱一の「夏秋草図屏風」が展示されていました。他に、平安時代の和様の名品「和漢朗詠集(益田本)」、中国・五代~宋時代の美しい「二菩薩立像幡」など、2週間限定で展示されていました。
東博へ行くと必ず屏風が展示してある7室に立ち寄ります。今回、7室はほかに扇面画を貼り付けた屏風が2点出ていましたが、やはり抱一の「夏秋草図屏風」には圧倒されます。以前、出光美術館で「風神雷神図屏風」を観たときに、光琳の「風神雷神図屏風」の裏面に抱一の「夏秋草図屏風」が描かれた、ということを知りました。また抱一の「夏秋草図屏風」の下絵が見つかったというので、出光にその下絵が展示されていたのを観たことがありました。
銀箔地屏風の右隻を夏草に、左隻に秋草を描く本図は、当初光琳の「風神雷神図屏風」の裏面として制作された。風神の裏に風になびく秋草、雷神の裏に夕立の雨にしなだれる夏草を配し、金地に対して銀地で描くなど、表の光琳画を強く意識した構成である。一方雨や風を示唆する描写や写実的な花の捉え方などは、宗達、光琳画風とは異なる新たな様式の確立を伝えている。文政4(1821)年秋から5年かけて、十一代将軍家斉の実父、一橋治濟の注文で描かれた。
(「酒井抱一と江戸琳派の全貌」より)
可憐な草花の愁い
右隻は青薄、昼顔、白百合、仙翁花、女郎花の夏草。左隻は花薄、葛、蔦、藤袴の秋草。中央に広がるなにも描かれていない空間は、右隻では左から降り注ぐ雨、左隻では右から吹き上げる風をそれぞれ暗示する。右上になよやかに流れているのは夕立の後のに潦水。雨に煽られる葛や中空に舞う蔦の葉は、感情を持っているかのように見る者に悲愁を訴え、薄の葉陰に隠され、顔を覗かせる右隻の白百合、仙翁花、左隻の藤袴が単なる草花絵ではないことをほのめかす。
(「もっと知りたい 酒井抱一 生涯と作品」より)
これは必見!
発行日:2011年9月25日初版
企画・監修:酒井抱一展開催実行委員会
姫路市立美術館
千葉市美術館
細見美術館
編著:松尾知子(千葉市美術館)
岡野智子(細見美術館)
発行所:株式会社求龍堂
「もっと知りたい 酒井抱一 生涯と作品」
発行日:2008年9月25日初版第1刷発行
著者:玉蟲敏子
発行所:株式会社東京美術
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