山岡光治の「地形図を読む技術」(サイエンス・アイ新書、ソフトバンク・クリエイティブ:2013年7月25日第1刷発行)を読みました。山岡光治の実質的なデビュー作は、2007年6月に刊行された「地図に訊け!」(ちくま新書:2007年6月10日第1刷発行)でした。それ以来6年、山岡の出された著作は、ほとんど読んでいます。なかには山岡光治のサイン入りの本も、何冊かあります。その「地図に訊け!」の参考文献を見ていたら、織田武雄の「地図の歴史」(講談社:1973年2月)という本がありました。この本は、僕も持っています。ずいぶん前の本で、一度読んだのですが、内容はほとんど覚えていません。ただ、参考文献に載っていたので、嬉しく思っただけのことです。
山岡光治:略歴
1945年、横須賀市生まれ。1963年、北海道立美唄工業高等学校を卒業し、国土地理院に技官として入所。札幌、東京、つくば、富山、名古屋などの勤務を経て、中部地方測量部長を務めたのち、2001年に退職。同年、地図会社の株式会社ゼンリンに勤務。2005年に退社し、「オフィス地図豆」を開業、店主となる。おもな著書に「地図の科学」(サイエンス・アイ新書)、「地図を楽しもう」(岩波新書)、「地図に訊け!」(ちくま新書)などがある。
出版社の内容紹介には、以下のようにあります。
地形図でこんなことまでわかるんです!
国土地理院が調査・作成している2万5千分の1地形図は、
ぱっと見、難しいのですが、地図から地上の風景を読み取る作業には欠かせません。
地形図からはなにが見えてなにがわかるのか、
一見、見やすい民間の地図ではなくゲジゲジな等高線が入った地形図をなぜ使うのか――
本書では民間の地図ではわからない、「地形図ならではの情報」を読み取る技術を伝授します。
「地形図」というだけで、こんなにも数多くの切り口があるのかと、驚きました。カバーの表紙のイラストは、妙に子どもっぽく描かれていますが、内容はなかなかどうして、単なるノウハウ本ではなく、大人でも唸らせるものが多々含まれています。素人にはなかなか分かりづらい「等高線」ですが、お茶碗を伏せた写真で大室山の地図の等高線を説明したり、買い求めたショウガを山に見立てて山と尾根の等高線を説明したりと、意表に富んだ解説をしていたりもします。
個人的には山岡さんが同行した「街歩き」、「山歩き」が、事例として載っていたのも嬉しいことでした。ひとつは「川跡探しをする~弦巻川跡を探す~」、もうひとつは「野山歩きをする~小田原の不動山に登る~」です。「不動山」は体力勝負のコースで、なんとか皆さんに遅れないように歩くのが精一杯でした。なんと「不動山」には、体力が衰えていないかどうかを自分で知るために、二度参加しています。いま思い返してみると、まったく地形図のことが頭に入ってなくて、歩いていました。
ほかにも興味深い箇所がたくさんありました。例えば先日行ったばかりの鳥取砂丘、「鳥取砂丘に遊ぶ」では、丘陵全体が茶色の点(砂の記号)で覆われていること、砂丘の周りには当然ですが樹林の記号がまったく見えない、等々。また山岡さんのブログで書かれていた真鶴半島のこと。2万5千分の1地形図と、真鶴観光協会発行の「ガイド&マップ」、それぞれに持ち味があり、2万5千分の1地形図では三ツ石と真鶴岬は繋がっていないが、「ガイド&マップ」では繋がっていること。森林内の遊歩道、2万5千分の1では、遊歩道は大雑把で不十分ですが、「ガイド&マップ」では、遊歩道は丁寧に書かれていたりします。それぞれに特徴があり、また弱点があることが分かります。
目次
はじめに
第1章 地形図からなにが読み取れるのか?
第2章 地形図から多彩な情報を読み取る技術
第3章 地形図をもち歩きながら読む技術
第4章 地形図から現地の風景に思いをはせる技術
おわりに
参考文献
索引
出版社からのコメント
第1章 地形図からなにが読み取れるのか?
この章では地形図の特徴を活かした読図のキホンを、具体例とともに解説しましょう。
地形図には、民間の地図にあまり載っていない、たくさんの情報が掲載されています。
これらの情報を見落とさず、正確に読み取れることができれば、
驚くほどたくさんのことが地形図からわかります。
第2章 地形図から多彩な情報を読み取る技術
この章では地形図をさらに細かく読図して、より多彩な情報を手に入れる方法を解説します。
地形図の2次元情報をフル活用できれば、3次元空間を頭の中で構築できるようになります。
新旧の地形図をくらべて地物や地形の変化を知る方法や、
地形図をもって歩くときのキホンも解説します。
第3章 地形図をもち歩きながら読む技術
ここまで地形図の読図方法を解説してきましたが、
この章では実際に地形図をもち歩いて読図する技術を、具体例とともに解説します。
地形図を使いながら、都市で昔の川や町並みの痕跡を探したり、
里山やちょっとした野山を快適に歩いたりするための技術を身につけましょう。
第4章 地形図から現地の風景に思いをはせる技術
4,372枚もおよぶ2万5千分の1地形図は、わが国の国土をもれなく正確に描ききっています。
この章では全国各地の地形図を眺めながら、現地の風景に思いを馳せてみましょう。
旧版地図を用いながら、その地域の地形や地物、地名の移り変わりを読み取って味わう技術も解説します。
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